給与の大幅アップを決めた3社を紹介

では、日本企業で大きな賃上げを決定したとして話題になった3社を紹介しよう。

DMG森精機:博士課程の初任給は約30%もアップ

工作機械大手のDMG森精機は2022年8月、2023年4月から新卒の初任給を引き上げることを発表した。

初任給の大幅改定は4年ぶりで、例えば高卒の新入社員は初任給が23万9,610円から28万円に上がる。4万390円アップ(約16%アップ)だ。大卒の場合は25万5,190円から29万円に上がる。こちらは3万4,090円アップ(約13%アップ)だ。

最も給与が上がるのが博士課程卒の新入社員で、初任給が36万3,490円から47万5,000円に上がる。金額にすると11万1,510円、パーセンテージにすると約30%アップだ。

DMG森精機は賃上げの狙いについて、「高度な人材を確保することで、激動する外部環境に適切に対応できる企業として成長を続けてまいります」と言及している。

ファーストリテイリング:グレード報酬を最大約40%アップ

カジュアル衣料品大手の「ユニクロ」の運営会社であるファーストリテイリングは、2023年1月に報酬改定による賃上げを発表した。3月の報酬から改定を実施するという。

賃上げの具体的な内容は、各従業員に対して付与している「グレード」に応じた報酬水準を数%~約40%増やすといったもの。新入社員の場合は年収ベースで約18%アップ、新人店長(入社から1〜2年で就任するケース)の場合は年収が約36%アップするという。

ちなみに、ファーストリテイリングは日本国内の店舗で働くアルバイトやパート従業員の時給も2022年9月に改定しており、10〜30%も上げている。

従業員の待遇をここまで手厚くすれば、「このままユニクロで働いていたい」「ユニクロに転職したい」という人を増やせるはずだ。それにしても給与のアップ幅は国内企業ではずば抜けており、柳井正会長の本気度がうかがえる。

日揮ホールディングス(HD):月額ベースで約10%の給与増

DMG森精機やファーストリテイリングのように、2桁台の給与アップを発表している企業は決して多くないが、日揮ホールディングス(HD)もそのうちの1社だ。

報道などによると、4月から基本給をアップし、月額ベースでは約10%増になるという。こうした給与のベースアップ(通称ベア)を行ったのは8年ぶりで、今回の基本給の増加率は過去最高だという。

また、日揮ホールディングスはインフレ対策の一環で、従業員に物価対策一時金として10万円を今年1月に支払った。

日揮ホールディングスは今、優秀な人材の確保に躍起になっている。同社が手がける脱炭素技については世界的に開発競争が激化しており、「多少コストがかさんでも人材確保のためには背に腹は代えられない」といった状況のようだ。

消費者物価4%超の中、従業員から賃上げプレッシャー

2月、1月の消費者物価指数が総務省から発表された。前年同月比4.2%増で、右肩上がりの状況が続いている。

物価が上がっているのに給与が変わらなければ、実質賃金は目減りする。そのため、今後は企業に対する従業員側からの賃上げプレッシャーがさらに強まることが予想される。給与の爆上げ企業は、今後も増えていくのだろうか。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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