■「引き継ぎ」が出来なければ無意味
現在は「教える側」に軸足を置いている筆者にとって、常々意識していることがあります。それは「持続可能なSNS運用を行っていく」ということ。
かつての「実績」のおかげで、私はSNSに関する仕事をいただいていますが、一方でそれは本当に「実績」かと思うことがあります。
確かに当時の私は、マーケティング担当という主業務を生かした独自性の強い運用を行い、売上にも繋がる「成果」を出しました。
ただそれは「一過性」に過ぎないものでした。なぜそうなってしまったかというと、十分な「引き継ぎ」を行えなかったからです。
かつて私が担当したアカウントは、3年超の時を経た現在は、当時の盛り上がりが嘘だったのではないかと感じてしまうほど静寂なものになりました。まるで兵どもが夢の跡です。末端のいち担当者に過ぎなかったので全く余裕もなく、「退職=休止」という最悪の展開を回避することで精いっぱいだったとはいえ、あの時もう少し上手く出来なかったものかという後悔は年々増すところです。
私は決して「成功者」ではないのです。仕事において、絶対不可欠な「引き継ぎ」を満足にできなかったのだから当然ですね。現在のようなプロとしての立場なら、最低の仕事の畳み方でしょう。
だから、現在運用担当として担っているおたくま経済新聞に、アドバイザーとして携わっている企業いずれについても、私が離れた後でも出来うる限り継続した運用ができる仕組み作りに腐心しています。人は失敗から学べる生き物です。
ちなみに私は、アドバイザーとして担当に自分の理論をひとしきり教えた後、それを早く「否定」することを勧めていたりします。
なぜそんなことをするかというと、仕事において特定業務に永続的に従事することはあり得ない話で、早かれ遅かれ「異動」というものは確実にやってきます。そしてその際は、後任に「引き継ぎ」が行われます。
その時、前任は後任に様々な「方法」を伝えますが、後任はそれを全て踏襲するわけではありません。得てして自分なりのアレンジを加えて、「アップデート」を図っていきます。そのための「土台」を構築しているのが今の私ですが、担当者に教えていることもまた一種の「引き継ぎ」です。
これは相談を受ける際に「なぜやるのか?」を必ず問う行為にも当てはまる話ですが、当事者に「考える」作業をしてもらわないと真の解決に導けません。私は所詮外部の人間に過ぎないので、伝えることは「ヒント」に留め置きます。
こういった考え方は、かつての中の人時代ではまず至らないものでした。支援会社の立場で、SNS運用の提案をしているだけでも難しいでしょう。私のような両方経験している人間でしか生みえない「経験則」です。
ですが、そういったことが出来る人材は驚くほど少ないのが現状です。別に斡旋するわけではないですが、「指導者」というのも意外と悪くないセカンドキャリアです。自分が伝えたことを若い担当者が咀嚼し、アレンジしていく流れを眺めるのも中々面白いものです。間接的にではありますが、「SNS運用」が仕事として認められるということでもありますしね。
それにこういった循環を作っていかないと、特に「中の人運用」はこの先衰退の一途を辿るでしょう。意外と忘れがちですが、もう15年ほどの歴史を持つのがこの“業態”。
個人的には衰退するのもまた運命かと思っています。「露出」という、承認欲求が強い担当者にはたまらない果実に取り込まれ、「私物化」が後を絶たない現状ですので、そうなっても致し方ありません。私も一時期取り込まれかけたので、「アレ」の非常に強い「中毒性」は重々理解しております。
しかし企業SNSアカウントは会社の持ち物。この事実は絶対に覆ることはありません。どんなにあがいても、いつかは返還しなければなりません。どうしても嫌なら社長になるしかないでしょう。
だからこそ、企業としてのSNSの在り方は今一度見直さなければなりません。今回私が「当事者」として紹介した事例は、まだまだ「レアケース」。未だに評価体制が確立できていない状況が多数を占めています。「フォロワー○○人!」「○○な投稿が○○万いいね!」といった、安易な見出しをつけて囃し立てる我々メディアにも責任の一端は間違いなくあります。
SNSには非常に膨大な「顧客データ」があり、様々なビジネス展開がなされています。筆者のような個人レベルも含め、企業に売り込まれていますが、一方でそれを使おうが使わまいが、公式アカウントを有効活動できる人材は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が叫ばれるようになった現代で優先的に報われるようにしなければなりません。特に地方の中小企業はそうです。
情報の消費速度は、年を追うことに凄まじいことになっています。流行の最先端がSNSである時代もいつまで続くか分かりません。近い将来、何かに取って代わられる可能性も十二分にあり得ます。そのことを決して忘れてはいけません。
<参考>
Z世代が選ぶ!!「トレンド寸前!次世代SNS TOP10」
【向山純平・著者プロフィール】
かつて大手食品メーカー「エスフーズ株式会社」に属し、「こてっちゃん公式Twitter」の担当を担う。
わずか1年半の担当期間で予算ゼロでフォロワー数を5万人以上増加(800人→55000人)。同時に幅広い業界との奇想天外な異業種コラボを企画し実現させる。
マーケターとしての戦略的なブランディング運用は、各種メディアで紹介され、ラジオ番組の出演やマーケティング系メディアのビジネスイベントにも登壇。
現在はおたくま経済新聞記者兼公式Twitter運用担当者。併行して某企業のSNS戦略アドバイザーやスポットコンサル業を少々。
提供元・おたくま経済新聞
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