1. イタリアの純金融資産・資金過不足

    最後にイタリアについても見てみましょう。

    イタリアは経済の変調が著しいので、いろいろと変化がみられるかもしれません。

    図7 純金融資産・資金過不足 イタリアOECD統計データ より

    図7がイタリアのデータです。

    純金融資産のグラフを見ると、リーマンショック前の2007年から家計の純金融資産が目減りし始めている事がわかります。

    企業の純金融負債もそのあたりから目減りし始めていますね。特徴的なのは政府の純金融負債の割合が1990年代から大きく、純金融負債の半分以上を占める点です。

    海外、金融機関は純金融資産プラスで推移しています。

    資金過不足を見ると、企業は2013年まで赤字主体ですが、その後黒字主体化しています。

    ほぼ同時に金融機関が黒字主体化し存在感が大きく、海外が赤字主体化しています。

    2013年から海外が赤字主体となり、ほぼ同じだけ金融機関が黒字主体になっているところが興味深いですね。

    海外と金融機関の関係が気になります。

  2. 主要国の純金融資産・資金過不足の特徴

    今回は、主要国(G7)の純金融資産、資金過不足のデータを眺めてみました。

    多くの国で共通しているのは、政府が赤字主体で、家計が黒字主体という事です。ただし、カナダでは家計が赤字主体など、国によっても特徴が分かれますね。

    また、資金過不足では日本以外の企業の存在感が薄いというのが、意外な結果でした。

    つまり、企業は各年ごとの金融取引ではプラスマイナスゼロに近いという事になります。余剰になりそうな範囲で投資をしている企業が多いという事かもしれません。

    日本は逆に、資金過不足では企業が大きく黒字主体です。その分家計の黒字が圧迫され、政府の赤字が増大しているようにも見えます。企業の家計化という印象を受けますね。

    今回はG7各国ですが、今後数回にわたり他の先進国のデータも同様に眺めていきたいと思います。

    資源大国ノルウェー、強い経済のスイスやルクセンブルク、投資の集まる東欧諸国、変調する国の多い南欧諸国など、どのような傾向にあるのか非常に興味深いところです。

    純金融資産と資金過不足を見比べる事で、各国経済主体の様々な挙動が推測できるのではないでしょうか。

    皆さんはどのように考えますか?

編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2023年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。