1. フランスの純金融資産・資金過不足

    次にフランスの状況を眺めてみましょう。

    図5 純金融資産・資金過不足 フランスOECD統計データ より

    図5がフランスのデータです。

    純金融資産のグラフを見ると、家計の純金融資産が順調に増えていて、企業の純金融負債がやや停滞気味ながら増えています。

    政府の純金融負債が大きく増えていて、企業の4割程度の規模です。

    フランスは再分配や公共的産業の労働者が特に多い国ですね。そういった特徴が垣間見える気がします。

    資金過不足を見ると主な赤字主体は政府で、家計も黒字主体として存在感が大きいようです。

    企業は基本的に赤字主体ですが、存在感は薄いようです。

    フランスの企業は、株式が資産側でも負債側でも大きく増えている特徴があります。

    国内企業同士の株式投資が活発な国という特徴が表れているのかもしれません。

  2. カナダの純金融資産・資金過不足

    続いてがカナダの状況です。

    カナダは家計の株式投資が多い国ですね。

    図6 純金融資産・資金過不足 カナダOECD統計データ より

    図6がカナダのデータです。

    純金融資産のグラフを見ると、家計の純金融資産と企業の純金融負債の増え方が対称に近く、アメリカに近い推移になっています。

    アメリカと異なるのは、近年では海外が純金融資産マイナスで、カナダから海外への投資が超過しているという点です。

    資金過不足を見ると、きわめて特徴的な傾向が見て取れます。なんといっても家計が赤字主体となっている点です。

    この状況をどのように解釈すればよいでしょうか?

    まず、カナダの場合は家計が積極的に投資を行っているという事が言えそうです。

    資金循環で家計が赤字主体なのに、純金融資産が増え続けていますので、負債を増やす以上に株価等が上がって金融資産が増えている様子を見て取れます。

    等価可処分所得を見ても、カナダは株式の配当金等の財産所得の大きな国ですね。(参考記事: 「給与以外の収入」も少ない日本)

    企業の純金融負債が増えているのも、負債側の株式の寄与が大きいようです。

    また、カナダは住宅への投資(総固定資本形成 住宅)の水準の大きい国でもあります。(参考記事: 日本の特殊な「住宅事情」)

    家計の資金過不足を見ると、金融資産の増加以上に負債が増加していて、赤字主体になっているようです。

    家計が住宅投資して負債を増やしながら、株式投資も積極的に増やしリターンを増やしていると推測できそうです。

    また、海外が近年黒字主体ですが、純金融負債が増えているのも特徴的です。

    金融取引としては海外からカナダへの投資の方が超過している一方で、カナダから海外へ投資している分の株価がそれ以上に上昇しているのかもしれませんね。

    とても不思議な状況に見受けられます。