国も、企業も、家計も全部借金経営なので、突然日本からの投融資がとだえたら、国内経済の資金が回らなく待ってしまうし、日本に代わってその穴を埋めてくれる国は、見当たらないからです。

その深刻さは、次の2枚のグラフがみごとに表しています。

日銀がYCCの上限枠を0.25%から0.5%に引き上げただけで、ドルへの信認がつるべ落としに低下しました。

また、機関投資家の資金配分の中枢を担うアセットアロケーターたちのあいだで、米株にオーバーウェイトという人の比率からアンダーウェイトという人の比率を差し引いた数値が、国際金融危機の頃以来の大きなマイナスになりました。

つまり、アメリカは日本からの投融資が細ることをそれほど深刻に警戒しているのです。

この警戒を突破するには胆力が必要

というわけで、過去にも何度か日本がアメリカ国債を大量売りするのではないかという「疑惑」は政治問題化しています。

中でも大きな話題となったのが、橋本龍太郎元首相が首相在任期間中の1997年に、アメリカの大学で講演をした際に「あまり円高でいじめられると、米国債を売りたいという衝動に駆られることもある」と発言したことでしょう。

アメリカ株式市場は、当時としてはブラックマンデー以来の大幅安となり、大人気で首相に就任した橋本氏の周辺に、その後さまざまなスキャンダルがつきまとうようになります。

結局、選挙戦での惨敗を理由に1998年の総辞職に追いこまれて首相を退くのですが、学生時代から続けていた剣道の稽古を欠かさず、体調的にはまだまだ再起の可能性を感じさせる雰囲気がありました。

ところがその後10年も経たないうちに、敗血症性の多臓器不全という難病にかかり、最後には大腸小腸の大部分を摘出する手術を受けながら、回復することなく世を去ります。

「問題発言」とは時間的にかなり隔たっていることから、謀殺の可能性は低いと見るのが常識でしょう。

ですが、アメリカ経済の根幹を揺るがすような発言をする政治家は、ほとんど影響力のない元首相になってからでも、ほかの政治家に対する見せしめとしてなるべく悲惨な死に方をさせるということだってあり得ます。

日本が豊富な対外純資産のごく一部でも引き上げて日本国民のために遣おうとするには、まず自分の命程度で済むのであれば喜んで差し上げる程度の胆力を持った政治家から養成する必要がありそうです。

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編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2022年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。