日本の対外純資産は莫大 まず、日本の対外純資産、つまり諸外国への投融資から諸外国から日本への投融資を差し引いた額がいかに大きいかから見ていきましょう。
対外総資産が約1250兆円、対外総債務が約840兆円、差し引き対外純資産が約410兆円というのは、突出した数字です。
次の表でもおわかりいただけるように、2~4位集団を形成しているドイツ・香港・中国の1.3倍から1.8倍に達します。
国民みんなが満ち足りた生活をしたうえで、それでも余裕資金があるから海外に進出する日本企業や進出先の国民経済の発展にも貢献してあげましょうというなら、なんの文句もありません。
しかし、勤労国民の実質所得は約20年間横ばいで、物価がじりじり上がりはじめただけで生活水準が低下してしまうという苦しい中で、諸外国の発展のためにこれだけの投融資をしつづけているのは、本末転倒でしょう。
もちろん、金融機関や海外事業を手広く展開している企業にとっては、日本で資金を滞留させているよりそのほうが好収益を望めるからという当然の選択でしょう。
ですが、日本の労賃がこれだけ低迷している最大とは言わないまでも大きな理由が、日本の勤労者は輸出企業が現地通貨ベースで値上げして獲得した利益をまったく配分してもらえずに、低迷の続く円ベース賃金に縛られていることなのです。
というわけで、原則論は明快なのですが、現実にどうこの巨額の対外純資産を取り崩して国民をより豊かにするために使えるかということになると、さまざまな問題が噴出します。
たとえば、世界中でほぼ日本だけが、外貨準備はほとんど全額米国債で持たされています。この点は、日本と似た経済成長をやや小さなスケールで実現してきた韓国と比べても、非常に大きく違っています。
最新の数字では1兆2000億ドルを割りこみましたが、だいたいにおいて1兆2000億ドル前後で推移している日本の外貨準備はほとんど全部米国債で持っています。
一方外貨準備が日本の約3分の1の4000億ドル前後の韓国は、そのうち約3分の1しか米国債で持っていません。つまり、韓国の米国債保有高は日本の10分の1強で済んでいるのです。
これはやはり、アメリカ政府にとって日本は外貨準備を金やユーロやその他通貨などで持って、自由に切り盛りされたら危険な国だという警戒心を怠らずに対処すべき存在だと言うことでしょう。
一方、韓国に対しては「まあ外貨準備ぐらい、自由に持ちたい通貨でお持ちなさい」と鷹揚に構えているわけです。
なぜ、日本だけがそこまで警戒されるのでしょうか。それもやはり、日本の対外純資産が突出して大きいからなのです。
現在の日本の対外純資産、約410兆円は米ドルに換算するとほぼ3兆ドルとなります。そのうち、ほぼ半額に当たる1兆5000億ドルを日本はアメリカへの投融資として持っているのです。
この1兆5000億ドルは、アメリカの現在のGDPの約7.5%に当たります。もしこの金額が、たとえば日本国内で期待できる金利配当収入が改善したという理由で日本に引き揚げられたりしたら、アメリカ経済はお手上げです。