日銀YCC政策も同様に金融機関の言いなり
現政権がどちらを向いて政策決定をしているかがわかるのが、日銀が異常な低金利を維持するために延々と展開してきたイールドカーブ・コントロール(YCC)政策でしょう。
これは、日本国債の中でも指標銘柄である10年債の金利を、一定の上下限の中に維持するために、その上限を超えた金利に上昇(国債価格は下落)しないように、日銀が一手に買いを引き受けて値崩れを防ぐという政策です。
去年の9月までは0%を中心に上下0.25%づつの枠内に収める方針でしたが、10月から上下限を2倍にして、プラスマイナス0.5%の枠内に収めるという方向に若干緩和しました。
日銀としては、枠を拡大することによって「超低金利で割高なうちに売り抜けておきたい」という国債を保有する金融機関の売り圧力が少しは弱まると期待したのかもしれません。
でも、上限がわずか0.25%から0.5%に広がった程度では、日本国債が異常な低金利で割高だという事実は変わりません。おそらく日銀の意図に反して売りものは殺到し、日銀が買い取る日本国債の量は、次のグラフのとおりに激増しました。
1日当りで4兆円というのも、1月前半だけで17兆円というのも、もちろん新記録です。そして、日銀がどこからこれだけ莫大な金額の国債を買い入れているかというと、ほぼ全部内外の機関投資家からなのです。
日銀が購入している国債の保有者は国内の銀行、生損保、公的年金、年金基金、そして海外投資家がほとんどで、家計はわずか1.2%だけです。つまり、資金運用のプロばかりということです。
彼らが超低金利=超高額で買ってしまった国債を損失を出さずに売り抜けることができるように、0.5%の金利で無制限に買い取ってやっているのが、日銀イールドカーブ・コントロール政策の本質なのです。
「景気浮揚のためには、積極的な投資がしやすいように低金利を維持する必要がある」というのは、まったく空疎な形式論です。
企業は円安で水増しされた利益の大半を内部留保にとどめたまま積極的な投資に回さず、銀行は預金総額に対する融資総額の比率(預貸率)が低迷しっぱなしです。金利を低水準に維持していても投資は回復しません。