スタシンスキー氏:何回も、何回も「暗殺だった」と繰り返す。信じるまで。

ビエリンスキ―副編集長:スタシンスキーは将来に悲観的だが、私は希望を捨てていない。人生の中で後で正常に戻るために、一度はかかるはしかのようなものだと思う。後何十年もこのままだとスタシンスキーは言う。この点では意見は一致しているのだが。

スタシンスキー氏:私が悲観的になるのは、合理的に考えるとそうならざるを得ないからだ。現政府と与党はこの国のすべての民主主義的組織を自分たちの管理下に置いた。今や政党国家だ。この政党が政権を取るや否や、経済全体を支配に置き、国営企業も支配下に置いた。例えば国営の石油大手PKNオーレンだ。

国を自分の手でわしづかみにしたんだ。国を奪った。国営企業の力を使い、その収入は表には見えないけれども、政治目的に使われているのだと思う。

メディアはプロパガンダの機械だ。TVP(ポーランド・テレビ)やPR(ポーランド・ラジオ)などは、政権に忠誠心を誓っているか、支援している。与党は政権を失うことを恐れている。もしそうなれば、投獄されるからだ。

ビエリンスキ―副編集長:多くの犯罪疑惑で追及されているのは確かだ。

スタシンスキー氏:だから私は選挙をしてもしょうがないと思っている。選挙がまともに機能しないように戒厳令などを敷くだろう。

ー次の総選挙は?

スタシンスキー氏:2023年秋だ。最高裁に新しく設置された部署を使って、選挙は嘘だったなどというだろう。

そうするのは簡単だ。数千人規模の人々に抗議運動を起こさせ、選挙後に、「あれは八百長だった」と言わせればいいのだから。

ビエリンスキ―副編集長:そのようにして選挙が無効になった事態が、2016年、オーストリアで発生した。大統領選で極右候補が次点で終わり、苦情が押し寄せた。数か月後、再度、選挙が行われることになった。

オーストリアの大統領選(2016年)とは:2016年5月の大統領選決選投票で、「緑の党」前党首で親欧州連合(EU)派のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏が極右政党「自由党」のノルベルト・ホーファー氏に僅差で勝利。開票方法に問題があったとして当選は無効とされ、やり直しが決まった。12月4日に実施されたやり直し決選選挙では、親EUの立場を掲げたファン・デア・ベレン候補が勝利し、2017年1月26日に大統領に就任した。

ビエリンスキ―副編集長:もしそんなことがここで起きたら、そして不正選挙になれば、大きな社会問題になるだろう。

2019年にグダニスク市長のパベウ・アダモヴィッチが刺殺されたことを思い出してほしい。

グダニスク市長暗殺事件とは:2019年1月13日、ポーランド北部グダニスク、チャリティーイベントに参加していたパベウ・アダモビッチ市長が男に刃物で心臓を刺され、重傷を負った。翌14日、死去。リベラル派で、元市民プラットフォーム(PO)のメンバーだった。1989年のポーランド民主化を主導した自主管理労組「連帯」の流れをくむ政党で、親EUの開放的な政策を掲げる。アダモビッチ氏は右派与党PiSへの対立姿勢で知られ、1998年から市長を務めた。犯行当時27歳の「Stephan F」は「無実なのに刑務所に入れられた。市民プラットホームに拷問された。だからアダモビッチは殺された」と叫んだという。

なぜ暗殺されたのか?それは公共テレビが過去6か月、彼に対する憎悪をかき立てるような報道を続けたからだ。「汚職をしている」「無能だ」「悪人だ」など。暗殺の前に地方選挙があって、アダモビッチが勝利した。選挙から3か月後、イベントでスピーチを終えたアダモビッチが男に攻撃を受けた。男は刑務所から出たばかりだった。

男は攻撃後にマイクを手に取り、「野党が嫌いだ。野党が憎いからこうしたんだ」と叫んでいる。明らかに政治的な暗殺だ。与党は捜査をできうる限り遅らせた。事件から3年経っても、まだ裁判が続いている。

(「独立メディアへの攻撃」へつづく)

編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2022年12月31日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。