目次
貸家建付地の評価額の減額
・自用地との評価額の違い
・使用貸借に該当する場合は自用地扱い
地積規模の大きな宅地の評価額の減額
・地積規模の大きな宅地とは
・地積規模の大きな宅地の評価方法
貸家建付地の評価額の減額
所有する土地に賃貸用の建物を建てたうえで、建物を第三者に貸し付けている場合、「貸家建付地」として宅地の評価を行います。貸家建付地と自用地の評価額の違いや、減額のポイントを確認しましょう。
自用地との評価額の違い
「自用地」とは、他人が使用する権利のない土地です。宅地の評価は自用地が基本であり、自用地としての価額から、借地権割合・借家権割合・賃貸割合を乗じた割合を控除したものが貸家建付地の評価額となります。
- 貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
「借地権割合」とは、その土地の権利に占める借地の割合です。「借家権割合」は建物を借りる権利のことで、全国一律で30%と定められています。
相続税の評価では、自用地よりも貸宅地の方が評価額が下がります。土地を持っている人は相続税の税金対策として、アパート経営などで土地を有効活用するのが望ましいでしょう。
参考:No.4614 貸家建付地の評価|国税庁
空室に注意
貸家建付地の価額は「賃貸割合」によって左右されます。賃貸割合とは「全部屋のうち何部屋を賃貸しているか」を割合で表したものです。
計算式では、賃貸割合が増えると相続税評価額は減額され、賃貸割合が減ると相続税評価額は増額されます。つまり、入居率を上げることが、相続税の負担を抑えることにつながるのです。
相続発生日において入居率がゼロの場合は、自用地評価の扱いになります。空室が続けば賃料収入も途絶えるため、リフォームや家賃の見直しといった空室対策を講じましょう。
使用貸借に該当する場合は自用地扱い
貸宅地であっても、「使用貸借」に該当する場合は自用地として扱われます。使用貸借とは、貸主から目的物を無償で借りて使用し、後に返還することです。
例えば、父親が子に土地を使用貸借し、その土地に子の名義でアパートを建てたとします。本来であれば土地は貸宅地の扱いですが、使用貸借で地代が発生していないため、相続財産評価においては「自用地」として扱われるのです。
自用地の相続税評価額は土地の評価額そのものであり、土地の利用形態の中では最も評価額が高くなります。
地積規模の大きな宅地の評価額の減額
広大な土地を所有していても、必ずしも土地が有効活用できるとは限りません。「買い手が付かない」「土地の利用が困難」という広大な宅地を相続した場合、評価額が減額されます。
評価額の基準については、国税庁のHPにある「地積規模の大きな宅地の評価」に定められています。こちらについて詳しく解説します。
地積規模の大きな宅地とは
地積規模の大きな宅地とは、標準的な宅地に比べて地積が著しく広い宅地のことです。具体的には、開発行為を行う際に公共公益的施設用地の負担が必要となる宅地を指します。
もともとは「広大地の評価」とよばれる制度でしたが、2017年9月の「財産評価基本通達」の一部改正に伴って現在の制度となりました。
以下4つの要件のいずれかに該当する場合、地積規模の大きな宅地からは除外されます。
- 市街化調整区域(人が住むための住宅や商業施設などを建築することは原則認められていないエリア)に所在する宅地
- 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
- 指定容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の地域に所在する宅地
- 大規模工場用地(広さが5万m2以上の工業用地)
参考:No.4609 地積規模の大きな宅地の評価|国税庁
地積規模の大きな宅地の評価方法
かつて広大地の価額は「広大地の面する路線の路線価×広大地補正率×地積」によって評価されていましたが、土地の形状が評価対象に含まれておらず、広大地の適用範囲も曖昧な状態でした。
2017年の財産評価基本通達の改正によって従来の評価方法は廃止され、2018年1月1日からは、以下のように「地積規模の大きな宅地の評価」によって評価を行います。
- 地積規模の大きな宅地の評価額=路線価額×奥行価格補正率×各種画地補正率×規模格差補正率×地積
「地積規模の大きな宅地」に該当するのは、三大都市圏では500m2以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域では1,000m2以上の地積の宅地です。条件の詳細は国税庁のウェブサイトで確認しましょう。
参考:No.4609 地積規模の大きな宅地の評価|国税庁