目次
上場株式は生前贈与のメリットが大きい
・配当金による財産の増加を抑えられる
・金額の設定と贈与タイミングの選択が可能
現金相続の基礎知識
・費用の前払いで現金を減らせる
・生前購入した墓、仏具は相続財産に入らない
・葬式費用は遺産総額から控除できる
・債務も遺産総額から差し引く
・名義預金は相続税の課税対象
上場株式は生前贈与のメリットが大きい
財産の中に「上場株式」がある場合、相続で引き継ぐよりも生前贈与をした方がメリットが大きいとされます。その理由について見ていきましょう。
配当金による財産の増加を抑えられる
価値の上昇が見込まれる上場株式は、価格が低いうちに贈与するのが望ましいでしょう。相続後に株価が大きく値上がりすると、相続税額が高額になる可能性があります。
注意したいのが、株主に分配される「配当金」として取得した財産も相続税の課税対象となる点です。配当所得の蓄積で相続財産が増えれば、それだけ相続税も高くなります。
株式を生前贈与すれば、株の所有者は受贈者になり、配当金は受贈者に帰属します。配当金による財産の増加を抑えるという点においては、生前贈与の方が有利です。
金額の設定と贈与タイミングの選択が可能
株式の生前贈与では「贈与する額」と「タイミング」が選択できます。
不動産と異なり、株式は1株単位で小分けにできるのがメリットです。暦年課税では、株式の評価額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。株の値上がり前に贈与すれば、税負担を抑えられるでしょう。
上場株式は、金融商品取引所が公表する課税時期の最終価格で評価するのが基本ですが、以下のうちで最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額で評価します。
- 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
参考:No.4632 上場株式の評価|国税庁
現金相続の基礎知識
相続財産には、故人が残した現金や預貯金が含まれます。相続税の計算時は、総遺産額から葬式費用や債務が控除できるため、課税対象額が基礎控除額を下回る可能性もあるでしょう。「控除できるもの」と「できないもの」をしっかり区別しましょう。
費用の前払いで現金を減らせる
葬式費用は、相続財産から差し引くことが可能です。一方で、相続税申告に関連する専門家への報酬や遺言書の作成費用などは、相続財産から控除できません。
相続財産を減らし、税金の負担を抑えるためにも「相続財産から控除できない費用」は生前に支払っておくのが望ましいでしょう。相続人同士での金銭トラブルやもめ事の回避にもつながります。
ただし、費用の前払いができるか否かは依頼先によって異なるため、事前の確認が必要です。
生前購入した墓、仏具は相続財産に入らない
遺産のすべてが相続の対象になるわけではありません。遺産分割協議をスムーズに進めるためには「相続財産に入らないもの」を把握しておくことが重要です。
相続税が課されない財産には、仏壇・神棚・墓地・墓石といった「日常礼拝をしているもの」が含まれます。ただし、骨董的な価値があるものや、商品として所有しているものは相続税の課税対象です。
仏壇・神棚・墓地・墓石の購入費用は、数百万円にも上るケースがあります。生前に購入しておいた方が、相続財産を増やさずに済むでしょう。
葬式費用は遺産総額から控除できる
宗派や規模にもよりますが、葬式費用は200万円前後が相場です。相続税を計算する際は、以下のような葬式費用を遺産相続から控除できます。
- 火葬・埋葬・納骨の費用
- 遺体・遺骨の回送費用
- お通夜にかかった費用
- お寺へのお礼・読経料
- 死体の捜索や死体・遺骨の運搬にかかった費用
葬式費用といっても、「香典返し」「初七日・法事の費用」「墓石・墓碑の購入費用」「墓地の買入れにかかった費用」は葬式費用には該当しません。
相続税の申告時は、「債務及び葬式費用の明細書」に費用の詳細を記入し、領収書を添付したうえで提出します。
参考:No.4129 相続財産から控除できる葬式費用|国税庁
債務も遺産総額から差し引く
被相続人の財産は、プラスの財産だけとは限りません。借金や債務などのマイナスの財産があった場合は、遺産総額から差し引くことが可能です。借金や債務を差し引いた結果、相続税の基礎控除額を下回るケースもあるでしょう。
被相続人の所得税や医療費の未払い金、死亡時点における租税公課の未納分なども、債務として控除ができます。ただし、お墓や仏壇の未払い金など「非課税財産に関する債務」は対象外です。
名義預金は相続税の課税対象
名義預金とは、銀行口座の名義人と所有人が異なる預金のことです。自分の死後を考えて、配偶者や子、孫などの名義で預金する人は少なくありません。
親が亡くなり、子に相続が発生した場合、親が子の名義で貯めた預金は相続税の課税対象となります。申告・納税を忘れてしまうと、税務調査で申告漏れを指摘され、追徴課税となる可能性があるでしょう。
また、名義預金でなくても名義預金と誤解されるケースがあるため、贈与ごとに贈与契約書を交わし、生前贈与の証拠をきちんと残しておくことが重要です。