目次
食べたいように食べて後は寝るだけ「ku-nel」(福知山市)
チョコレート・チーズケーキ「洋菓子マウンテン」(福知山市)
食べたいように食べて後は寝るだけ「ku-nel」(福知山市)
福知山は「肉のまち」としても有名です。しかし福知山牛というブランド牛が育てられているわけでもありません。
なぜ肉のまちと言われているかというと、昔「三大畜産市場」があったため多くの肉が福知山に集まってきていた、という点が理由のひとつに挙げられます。
福知山市内には焼き肉屋さんがとても多いです。
県別で見ると、人口10万人当たりの焼き肉屋店数が一番多いのは石川県で28.1軒、二位は福井県、大分県と続き、京都府は15.4軒で20位です。
しかし県ではなく市単位で見ると、福知山市は最近のデータでは10万人当たり32.5軒となり、石川県を凌ぐほど圧倒的に焼き肉屋が多いのです。
ku-nelのオーナーシェフである足立 龍さんは福知山市出身。


足立さん「福知山は焼き肉屋は多いんですが、ステーキ屋は少ないんです。私は「肉を"塊"で食べたい」が信条なので、ku-nelを2020年にオープンしました。


店名ku-nelの名の由来は「食べたい時に食べて後は寝るだけ」。
ku-nelでは、ステーキを提供していますが、足立さんは元々パティシェ出身。「福知山が「肉のまち」だから肉料理を始めたわけじゃありません。おいしい料理、おいしいお菓子、美味しいお酒をシンプルにわかりやすく自由に楽しんでほしい、それがku-nelを始めた理由です」
こだわりのお店をやっている人は、地元の食材を使うことにこだわる人が多いですよね。
しかし足立さんは言います。「丹波牛や但馬牛はとても美味しいですが、値段も高い。私は手軽にステーキを食べてもらいたいので、輸入肉も使います。」

今回いただいたのはこちら。コース料理というよりは、皆でワイワイいいながら取り分けて食べる大皿料理です。
ku-nelのメニュー
- サーロインのすき焼き風
- 鶏のから揚げ
- ニョッキ
- ステーキ2種(ハネシタ・イチボ)
- サラダ
中でもサーロインのすき焼きが驚きの旨さでした。それを足立さんに伝えると「あの料理のメインは実は肉ではなく卵なんです。」という意外な答えが返ってきました。

サラダが巨大なグラスに入って出てきます。これだけでも楽しくなっちゃいます。ku-nelの自由自在さが伝わってきます。

出た~!「肉は塊で食べたい」という人にぴったりのお肉。脂身が少ない赤身なので、食感が肉々しく、ワイルドです。「肉を食らっている~」と感じます。
肉は丹波牛、但馬牛に拘らず、と仰っていた足立さんですが、福知山の食材はとても豊かだと感じていて、地元産の食材だけで何かを作りたいと完成させたのがカヌレです(原材料:牛乳、卵、小麦粉)。

最近若い人たちの間でカヌレブームが再燃しているそうですが、足立さんはブームに乗っかろうとか、流行を狙うという気持ちはないそうです。「人気が出るのは嬉しいですが、逆に流行ってほしくないという気持ちもあるんですよね(笑)」
この感性は、綾部「織りや」の春山さんに通じますね。
足立さんがパティシエになろうと思ったきっかけは?
足立さんは、男3人兄弟の末っ子。
お母さんが毎日のように作ってくれたシフォンケーキ。足立さんは母を手伝うのがとても嬉しかったそうです。工業高校に通いましたが「3男でもあるし、わがまま言わせてもらおう」と好きなお菓子作りの道へ進むことを決意しました。
福知山には洋菓子マウンテン(後述)という名店があります。足立さんはマウンテンのオーナー水野さんの傍らでスイーツ作りを勉強したいと思ったそうです。

ワインを塩に含ませて作るワイン塩。サラダやお肉にかけて食べると絶品です。

チョコレート・チーズケーキ「洋菓子マウンテン」(福知山市)
福知山のスイーツの名店といえば、洋菓子マウンテン。福知山市の郊外 三段池公園のそばに建っています。



水野さんは2007年「ワールドチョコレートマスターズ」フランス・パリ大会で世界第一位の称号を得ました。
日本人パティシエとして快挙である賞を得たにも関わらず、水野さんは故郷福知山に帰ることを決心します。
「東京にいればもっと有名になるし、いろいろなことができるのになぜ?」と多くの人が反対したそうですが、水野さんの決意は変わりませんでした。
「自分が生まれた土地で子供を育てたい。私が今日まで生きてこれたのは、父が作ったケーキを買ってくれたお客さんがいたから」だと。
洋菓子マウンテンは1978年、福知山市内の商店街で水野さんのお父さん水野亘さんが開店しました。
マウンテンはスフレタイプのチーズケーキが名物で、福知山の人たちにとってマウンテンのチーズケーキは誕生日ケーキ。チーズケーキを買う時「ろうそくを付けて!」というリクエストも多いことから、いかに地元の人たちに愛されてきたかがわかります。

スフレタイプなのでとても軽い。ふわっふわです。さっぱりして甘すぎない味。奇をてらわない。インパクトを狙っていません。
ひとことで言えば、飽きない味です。でもそういうお菓子を作るのは簡単ではありません。福知山の人が誕生日に楽しみにしているケーキというのがよくわかります。
チーズケーキはピースで340円。ホールで2,550円というお手頃価格。
地元の人たちの大切な味。水野さんが福知山に帰ってきたのは正しかったのですね。
マウンテンの店名の由来
店名の由来は2つあるそうです。
- 福知山の"山"
- 水野さんのお父さんは福知山市大江町(山)の出身。その"山"
お父さんの小学校の恩師が名づけてくれたそうです。ふるさとを愛し、地元の人たちに愛されるお菓子作りをしていた、初代シェフ水野亘さんの想いがしっかりと2代目直巳さんに継承されています。
水野直巳さんが「趣味」と言いきるチョコレート作り。父からのお菓子作りを伝承しつつ自分の世界も作っています。
「チョコはバレンタインだけじゃない 常日頃から楽しんでもらいたい」「誰が食べても安心するようなほっこりしたチョコ造りを目指しています。」
「ワールドチョコレートマスターズ2007」第一位受賞作品「杏と塩」
こちらが世界一の称号を得たチョコレートです。

「味覚の流れを楽しんで欲しい。最初に杏の酸味が広がり、最後に塩が残る。塩もミネラルたっぷりの塩だと邪魔をするので、結晶のつぶの食感が際立つ塩を使います。」
食べた感想は「これはもはやチョコではない・・・」です。言葉でうまく表現できません。これそのものがスイーツでひとつの料理、いえ作品です。
水野さんは「チョコレート造りの技術を持った人間を輩出したい」のが一番の願いで、今も多くの若者が水野さんの元に修行に来ます。
すごい賞を獲った人だからさぞお弟子さんにも厳しく、気難しい人かと思っていましたが、水野さんは気さくでサービス精神旺盛、ざっくばらんに思いを語っていただきました。
ku-nelの足立さん含め、第二第三の水野さんが巣立っていかれているようです。日本のスイーツ業界、楽しみです。