こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。
京都府の北部に「森の京都」と言われるエリアがあります。
その中に綾部市と福地山市という街があります。
どんな所か、ご存知ですか?
「名前は聞いたことがあるけどよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。私もそのひとりでした。
さて話は変わりますが、あなたには、好きな歌手(アーティスト)はいますか?
その歌手のお気に入りのアルバムを思い浮かべてみてください。アルバムの中に、シングルカットはされていないのだけれど、どこか心惹かれる、お気に入りの曲ってありませんか?決して派手ではなくシングルになるほどのインパクトもない、でもなんとなく気になる曲。
綾部や福知山はそんな、アルバムの中にある小曲に似ていると思います。
今回はその綾部、福知山を「食」をテーマに探求します。
目次
森の京都とは?
室町時代にタイムスリップ「御味噌庵 織りや」の朴葉味噌膳(綾部市)
森の京都とは?
山の恵みを受け、豊かな森とともに発展してきた、もうひとつの京都「森の京都」。山から湧き出す清らかな水と肥えた大地は、古くから京の都の繁栄を支え、長い年月をかけながら、人々の暮らしと地域文化を育んできました。農村ののどかな生活を彷彿とさせる里山の風景や、茅葺き屋根が美しい日本の原風景、受け継がれた知恵を活かし森の恵みを享受して生きる人々の姿。「森の京都」は、そういった自然とともにある日々の小さな感動を、もう一度大切にしたくなる場所かもしれません。(森の京都サイトより引用)
森の京都は福知山市、綾部市、京丹波町、南丹市、亀岡市、京北から成っています。(綾部市と福知山市は「海の京都」にも属しています。)
綾部市
綾部は京都府の北部に位置する田園都市です。
美しい自然環境や豊かな里山、平和と歴史、文化に彩られた市街地、ものづくり産業の集積、京阪神と日本海を結ぶ交通の要衝であることなど、地方小都市ながらさまざまな機能や特性が備わった街です。室町幕府初代将軍 足利尊氏生誕の地とも言われています。
近年移住者が増えており、農家民宿の数が京都府内で一番多い街です。
福知山市
福知山も京都府の北部に位置する都市です。
戦国時代、明智光秀が福知山城を築き、城下町を形成したと伝わります。古くは縄文時代から人が住んでいたと考えられており、交通の要衝として栄えてきた街です。福知山をひとことで言い表すとしたら「ほどよく街でほどよく田舎」で、近年移住者が増えています。「スイーツのまち」「肉のまち」「鉄道のまち」とも言われています。
それでは、綾部市、福知山市の「食」を探って参りましょう!
室町時代にタイムスリップ「御味噌庵 織りや」の朴葉味噌膳(綾部市)
「織りや」は、築約150年の古民家を利用した食事処です。

どっしりと趣のある家屋です。綾部市には古民家がたくさんあるそうです。

時代劇映画のワンシーンのような世界が広がります。
コンセプトはずばり「室町時代」
「ん? 室町時代だって?」
なぜ、室町時代なのか、織りやの女将さんで、空間プロデューサーでもある春山眞由美さんに伺いました。

春山さん「日本昔ばなしってあるでしょう?あの舞台は江戸時代じゃなく室町時代の物語が多いんですよ」
え~知りませんでした。桃太郎や浦島太郎、カチカチ山などは室町時代の物語が多いんですって。
また、春山さんのご実家は京都西陣織の織物屋さん。西陣という地名の由来は室町時代の「応仁の乱」の時、西の地に陣を張ったことからきているそう。店名の「織りや」はご実家の稼業を引き継いで命名されました。
上記ふたつの理由から、コンセプトを室町時代に定め、まるで彼の時代にタイムスリップしたような世界をここ綾部の地で表現したいと思ったそうです。
美術系大学を卒業し、有名広告代理店のデザイナーとして手腕を振るっていた春山さん。設えのあちこちにセンスが光ります。

色あいがいいですね。灯りの照度も素晴らしい。室町時代ってこんな感じだったかも、と思わせます。

まるで、歴史博物館の展示品を見ているかのよう。。。

織りやを「単に食べる場所ではなく、居る時間を楽しむ場所にしたい、思わず写真を撮りたいと思うような空間にしたい。」それが春山さんの願いです。
食事をいただく母屋の裏(奥)には、室町時代の商店をイメージした場所があります。

「へえ~っ室町時代のお店ってこんな感じだったんだ~。」思わず見入り、シャッターを切ります。

京都市内でなく、綾部という田園地帯の中にあるからこそ、この風景が馴染むのかもしれません。
流行を追わない
春山さんが広告代理店でデザイナーとして華々しい活躍をしていた頃、仕事のやり方について、自身のめざす方向性とのずれに苦しんでいました。
世の中に、インパクトある話題を投げかけ、流行を創り出す。多くの人に知ってもらうことは嬉しいけれど、本当にそれが良いことなのだろうか。。。?
そして気づきました。
「流行ると、必ず廃れる」世の中が一時振り向いて有名になったとしても、その後続かなければ意味がない。使い捨てにされてしまう。
目の前の話題性や過激さに振り回されるのではなく、一歩ずつ確かに、価値を認めてくれるコアな人たちと文化を共に育てていきたい。
実際、織りやにはそういう春山さんの姿勢に共感する人たちが集まってくるそうです。
織りやの食事は基本的に予約制です。ひとつづつ無駄なく仕入れ、作り、供されます。お客さんのお店での滞在時間は長め。織りやに居る時間そのものが価値あるものになるのですね。


御膳を持ってきてくれるのはなんと黒子。まるでお芝居を観ているかのよう。世界観が徹底しています。

味噌が朴葉の上で温められています。亀岡牛、えのき、人参、かぼちゃ、万願寺などにその味噌を付けていただきます。
味噌の焦げる匂いが香ばしく、食欲をそそります。
お米もおいしい。しっとりムチムチしています。お椀は粕汁です。酒粕の優しい甘みとコクが体に染みとおります。
味噌を温めている朴葉をちらっと上げてみると・・・

コンロの中にはなんと炭が入っていました。こういうお膳では普通、蝋で作られた固形燃料が使われますが、いやさすがですね。
すべてにおいて「織りやの世界観」にこだわっています。
食べ物だけでなく「織りやで過ごす時間」が価値を創り出していました。