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楮(こうぞ)餅作り体験「すまいる工房あやべ」(綾部市)
あやべグンゼスクエア(綾部市)
楮(こうぞ)餅作り体験「すまいる工房あやべ」(綾部市)
綾部市は農家民宿が京都府で一番多いところです。
お客さんは農家民宿に泊まって何をするのでしょうか。その中のひとつが「●●作り体験」です。
今回、紙の原料である楮(こうぞ)を使ったお餅作り体験をしました。
綾部はブランド手漉き和紙「黒谷和紙」(京都府指定無形文化財)の産地でもあります。
和紙の原料は楮や、みつまたですが、綾部でも多くの楮を栽培しています。しかし和紙に使うのは楮の茎(樹皮)の部分であり、葉っぱは捨てられていました。
なんとか葉っぱも有効活用できないかと考え、生み出されたのが楮餅です。
綾部市の中上林(なかかんばやし)地区にある村おこし研修館に於いて「すまいる工房あやべ」の力をお借りして体験しました。


「村おこし体験館」ではすまいる工房あやべのお母さんたちが準備して待ってくださっていました。

緑色に見えるのが楮の葉っぱです。

ツアー参加者が順番にぺったんぺったんとお餅をついていきます。

つきあがったお餅をちぎって丸めていきます。子どもの頃砂場で泥だんごを丸めたようにくるくると形作っていきます。ぷにょぷにょと柔らかく、赤ちゃんの肌みたいで気持ちよかったです。

出来たお餅をそのまま醤油をつけて食べたり、ぜんざいにしていただきます。小豆は丹波大納言、大粒でほくほくじゅわ~の小豆です。つきたてのお餅はとっても美味しかったです。
楮はどんな味かというと、よもぎ餅のような草の香りがほんのりしましたが、味にクセはなく美味しくいただきました。
楮の葉っぱはカロチン、ビタミンA、ビタミンB1、カルシウムや鉄分、亜鉛などが豊富で昔から薬としても使われていたようです。体にも良く一石二鳥ですね。

中上林は田園風景が広がる田舎で、観光地らしいものは何も見当たりません。
しかし「何もない」が売り(土地の魅力)になる、と綾部に移住を決めたのが、工忠(くちゅう)照幸さんです。

工忠さんは、大阪府吹田市の出身。バックパッカーとして7年間で世界を2周した猛者。帰国後、ホテルマンや海外添乗員を経験し、37歳の時、綾部の上林地区へ移住。現在、旅行会社MATA TABIとしてツアー運営、各種体験プログラム企画運営、ゲストハウス「クチュール」経営、通訳案内士の資格も保有。
クチュールはフランス語で「仕立て」という意味。工忠さんがクチュールを経営する、というのも洒落ていますね。
すまいる工房あやべでの楮餅つき体験も工忠さんのコーディネイトでアレンジしていただきました。
工忠さんが移住先として綾部を選んだ理由は、これからの時代は「何もしない」が売り(魅力)になると思ったからです。
それを裏付けるエピソードをひとつ。
工忠さんは農家民宿を経営していて世界の旅人の嗜好に地域差があることがわかったそうです。
日本人、東南アジア、ヨーロッパにざっくり分けてみると、
- 日本人は農業体験とか、モノづくり体験とか、田舎でできる体験を求めてくる人が多い
- 東南アジアの人たちは、ハイキングとか川遊びとか自分たちで何かを見つけて遊ぶ人が多い
- それに比べてヨーロッパの人たちは「何もしない」人が多いというのです
(上記は大まかな話で、もちろん志向は人それぞれです。すべての人がそう行動するということではありません)
例えば、中上林にやって来たフィンランド人は滞在中、木に吊るしたハンモックに揺られていたというのです。あとは宿の付近をぶらぶら歩いたりするだけ。
私たち日本人は旅行したら、何かしないともったいない、と思ってしまいます。することがないと退屈してしまう。
しかし、ヨーロッパの人たちからすると日本の田園風景がなによりの価値だと感じるんですね。その空間に身を置くことが旅の醍醐味であり価値であると。
日本は国土の約60%が森林です。これはアマゾンを擁するブラジルに肩を並べるほどです。日本は先進国の中では稀有な森林大国なのです。その価値を外国人は分かるのかもしれません。
この視点は、日本にいる私たち生き方に何らかの示唆を与えてくれそうです。
工忠さんが綾部に住んでみて感じたことは「綾部の人は外からの人にオープンな人が多いな」ということだったそうです。
田舎というと、閉鎖的で外からの人をなかなか受け入れないというイメージがありますが、綾部に移住者が増えているのには、そういう理由もあるのかもしれません。

里山のイメージそのままの風景が広がります。

子供の頃に見た「懐かしい田舎の風景」を思い出します。夏の夜にはホタルが舞うそうです。
あやべグンゼスクエア(綾部市)
綾部市は、あのグンゼ発祥の地だったってこと、ご存知でしたか?
グンゼ(旧群是製紙)といえば、肌着やストッキングのメーカーというイメージが大きいですよね。
しかしグンゼは「一本の生糸づくり」から始まりました。
綾部の蚕糸業発展に捧げた創業者 波多野鶴吉氏の精神を継承しながら技術革新に挑み、現在では医療機器製造にも領域を広げ、人々に「ここちよさ」を提供し続けています。
綾部市には、グンゼスクエアという場所があり、グンゼの歴史を継承する「グンゼ博物苑」、地元の人々によって大事に育てられている綾部バラ園、綾部の特産品を買うことができる「あやべ特産館」の3つを楽しむことができます。(入場無料)
グンゼ博物苑
明治29年に創業したグンゼ株式会社の博物館。3つの蔵(創業館、現代蔵、未来蔵)から成り、創業時からの歩みを時系列に紹介しています。

グンゼ創業者である波多野 鶴吉は「事業の根本は人にあり」の信念の下、人材教育に熱心で「グンゼは表は工場、裏は学校」と言われていたそうです。
工場で働く人は養蚕農家の娘が多かったようですが「嫁にもらうならグンゼの娘をもらえ」と言われていたとか。
創業の精神は「人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる」その哲学と思いは地域に深く愛されていたようです。

綾部バラ園
綾部バラ園は2010年にオープン。約180名のボランティアが150種1,200本のバラを管理しています。モットーは「できる人ができることをできる範囲でやる」。シンボルは園内中央に咲く「アンネのバラ」。平和への願いを込めて植えられています。

アンネのバラとは
第二次大戦時、ナチスに捕えられ、強制収容所で15歳の命を失ったアンネ・フランク。
アンネのバラは、ベルギーのバラ育種家デル・フォルグ氏がアンネの死を悼み「アンネの形見のバラ」と命名した品種で、アンネの父オットー・フランク氏に贈られました。
1971年、綾部市出身の大槻武二氏が創設した「聖イエス会」合唱団が海外演奏旅行に出かけた際、教会で演奏を聴いていたオットー氏から声をかけられ、それ以来交流が深まってアンネのバラの苗木が日本に贈られました。その苗木の内の1本が綾部で増殖され、今も「愛と平和の使徒」として愛されています。

バラの楽しみ方として「自分がお気に入りのバラを見つけると良い」と教えてもらいました。
そこで私が気に入ったバラがこちらです。

存在感ある真っ赤な姿の良いバラ。「私のお気に入りのバラはこれだ!」と決めると不思議と愛着が生まれます。
訪れた時はバラの最盛期ではありませんでしたので、一面に咲き誇るという感じではありませんでしたが、ボランティアの方々が大切に育てられている様子が感じられて、グンゼという企業が地元綾部で愛されていることが伝わりました。
あやべ特産館
綾部の特産品が豊富に揃っているショップです。野菜、お菓子、お酒、工芸品など綾部のお土産を買うならここがおすすめです。

館内にはカフェも併設しており、ひといき入れるにもおすすめの場所です。
