日本におけるディーセントワークの7つの評価軸

各企業においてどの程度ディーセントワークに関する取り組みが実行されているのかは、厚生労働省が整理した7つの評価軸と照らし合わせると判断がしやすくなります。


日本におけるディーセントワークの7つの評価軸



  • 1.WLB軸

  • 2.公正平等軸

  • 3.自己鍛錬軸

  • 4.収入軸

  • 5.労働者の権利軸

  • 6.安全衛生軸

  • 7.セーフティネット軸



7つの評価軸が何を示す項目なのか、その内容と企業が注意するべきポイントを解説します。




1.WLB軸

日本におけるディーセントワークの1つ目の評価軸は「WLB軸」です。

WLBは「ワーク・ライフ・バランスの頭文字をとった略語。「WLB軸」は、ワーク(仕事)とライフ(生活)をバランスさせながら、年齢を重ねても働き続けられる職場かどうかを評価する項目です。

日本では長時間労働による働きすぎがたびたび問題となっています。今後、労働人口が減少していくなかで一人ひとりの労働負担を減らすには、働き方を見直すことが非常に大切です。

残業時間の上限の規制が守られているかや、1人1年あたり5日の年次有給休暇がきちんと実行されているかどうかなど、企業はその点を意識する必要があります。

参考:ディーセントワークと企業経営に 関する調査研究事業 報告書(P2)

参考:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて」(P3)




2.公正平等軸

日本におけるディーセントワークの2つ目の評価軸は「公正平等軸」です。性別や雇用形態に関係なく、すべての労働者が公正かつ平等に活躍できる職場かどうかを評価する項目です。

日本では2020年4月に「同一労働同一賃金」が施行されました。これは正社員と非正規雇用労働者で、基本給・賞与・各種手当・福利厚生・教育訓練など不合理な格差の解消を目指すためのものです。

「公平平等軸」を満たすためには、こうした不合理な待遇の解消と共に、非正規雇用労働者の能力を評価する人事評価軸の見直しも、企業各社が個別に行う必要があります。

参考:ディーセントワークと企業経営に 関する調査研究事業 報告書(P2)

参考:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」

3.自己鍛錬軸

日本におけるディーセントワークの3つ目の評価軸は「自己鍛錬軸」です。これは労働者の能力開発機会が確保されており、自己鍛錬が可能な場所かどうかを評価する項目です。

新入社員が入社してきた場合の研修だけでなく、中途社員やスキルアップを目指すすべての従業員に対して、企業は必要な教育訓練制度を用意しておく必要があります。

内部での実施が難しい場合は外部研修やe-larningなどを用意しておくこと、書籍や資格の取得についての費用を支給することなども検討してみてください。

参考:ディーセントワークと企業経営に 関する調査研究事業 報告書(P2)




4.収入軸

日本におけるディーセントワークの4つ目の評価軸は「収入軸」です。人間としての生活を営めるだけの収入を継続的に得られる職場かどうかを評価する項目です。

正規・非正規と雇用形態にかかわらず、誰もが人間らしく生活するには安定した収入が必要です。日本では最低賃金の引き上げが段階的に行われていますが、最低でも必要といわれている1500円にはまだどの地域も実現にいたっていません。

国としての取り組みとは別に、企業ごとに収入の見直しを行うことも必要です。1日8時間の労働で普通に暮らしていける賃金になっているか、改めて確認しましょう。

関連記事:同一労働同一賃金とは?労使それぞれのメリット・デメリット、対応の手順を解説

参考:ディーセントワークと企業経営に 関する調査研究事業 報告書(P2)

参考:日本自治体労働組合総連合「全国一律最賃制度 時給1500円 待ったなし」

5.労働者の権利軸

日本におけるディーセントワークの5つ目の評価軸は「労働者の権利軸」です。労働者の労働三権が確保されており、かつ労働者の発言が受け入れられやすい職場かどうかを評価する項目です。

労働三権は「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の3つ。これらは労働者の権利として日本国憲法で認められており、必要に応じて行使することができます。

労働条件の交渉や改善を求めることは、法律で認められた労働者の権利です。企業の経営者は、自社の従業員が意見を言いやすい職場環境を作れているかどうか、定期的に見直すことが大切です。

参考:ディーセントワークと企業経営に 関する調査研究事業 報告書(P2)

参考:日本労働組合総連合会「働く人の権利とは?」

6.安全衛生軸

日本におけるディーセントワークの6つ目の評価軸は「安全衛生軸」です。働くうえで安全な環境が整備されている職場かどうかを評価する項目です。企業は身体的安全だけでなく、精神的な安全も確保する必要があります。

令和3年時点の日本において、労働災害の死亡者数や死傷者数は前年に比べて増加傾向にあります。労働環境における安全確保が不十分だった昭和に比べると半数以下の数字に減少していますが、平成29年度以降は増加に転じています。

労働災害が起きる産業は、建設業・林業・製造業などに集中。企業側はより安全な労働環境の整備に取り組む必要があります。

また、企業にはメンタルヘルス対策を行うことも求められます。令和2年11月1日から1年の間にメンタルヘルスの不調で休業、もしくは退職した労働者数は10.1%となっており、前年の9.2%を超える数字が出ています。

テレワークが一般化したことにより、従業員はコミュニケーションストレスを感じやすくなり、メンタルヘルスに不調が出やすくなっているのです。現代の多様な働き方を考慮した、適切なメンタルヘルス対策を行うことも、ディーセントワークの実現に繋がります。

参考:ディーセントワークと企業経営に 関する調査研究事業 報告書(P2)

参考:厚生労働省「令和3年 労働災害発生状況」

参考:厚生労働省「令和 3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」P3

7.セーフティネット軸

日本におけるディーセントワークの7つ目の評価軸は「セーフネット軸」です。最低限以上の公的な雇用保険や医療・年金制度に加入している職場かどうかを評価する項目です。

日本では徐々に多様な働き方が可能になりつつあります。例えば、副業・兼業が解禁され、複数の企業にて活躍する方も増えてきました。労災保険・雇用保険・厚生年金保険・健康保険などは、副業・兼業としての働き方を受け入れている企業は加入手続きを行う必要があります。

労働者が安心して働き、個々の能力を発揮するためには、厚生労働省が提示している「雇用のルール」のうち、労働保険や社会保険を満たすことは必須です。

参考:ディーセントワークと企業経営に 関する調査研究事業 報告書(P2)

参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」P19

参考:厚生労働省「雇用のルール」