■子どもの頃になりたかった職業と今なりたい職業、9割が違う職業を選択
子どもの頃になりたかった職業(図2-1)と、大人になった今なりたい職業(図5)の各個人での変化を調べ、全体(1,500人)の中での割合を見てみました。すると、両者が変わらない人は8.1%と少なく、全体の91.9%は、子どもの頃になりたかった職業ではなく、新たな職業を選んでいます[図8]。
子どもの頃は「好き」「かっこいい」が職業選択の動機でしたが、大人になると「やりがい」が大きくなり、なりたい職業も大きく変わっていくようです。

〈この30年間で生まれた新しい職業 なりたいランキング〉
■この30年間で生まれた新しい職業でなりたい職業TOP3「公認心理師」「SE」「FP」 なりたい理由は「やりがい」
平成から令和にかけての30年間で、YouTuberやパーソナルトレーナーなどさまざまな新しい職業が誕生しています。これらの新しい職業の中から、事前の調査で認知度の高かった代表的な30種の職業を提示し、なりたい職業を選んでもらいました。その結果、「公認心理師(心理カウンセラー)」(12.7%)、「システムエンジニア(SE)」「ファイナンシャルプランナー(FP)」(同率10.9%)がなりたい職業の上位に選ばれました[図9]。なりたい理由を自由回答で聞くと、公認心理師は「困っている人を助けたい」、システムエンジニアは「今後の可能性」、ファイナンシャルプランナーは「人の役に立ちたい」といった意見が多く寄せられました。選択肢の中から選んでもらうと、やはり「やりがい」(35.5%)が一番の理由となっています[図10]。


■新職業なりたいランキング 男性は「SE」「デイトレーダー」、女性は「公認心理師」「野菜ソムリエ」
前述図9の新職業なりたいランキングを男女別で見ると、男性は「システムエンジニア」(15.2%)、「デイトレーダー」(14.4%)、「YouTuber」(10.5%)、女性は「公認心理師」(18.7%)、「野菜ソムリエ」(14.2%)、「動物看護師」(13.7%)がTOP3となりました。年代別で見ると、30代・40代は「YouTuber」「デイトレーダー」が上位3位内にランクインしているのに対し、50代以降は「公認心理師」や「野菜ソムリエ」の人気が高くなっています[図11]。

■今いる業界と新しい職業 関連性のある職業が選ばれやすい?!
現在働いている業界別に、新職業なりたいランキングを見てみました。すると、建設業で働く人は「環境コンサルタント」(20.5%)、金融・保険業界で働く人は「ファイナンシャルプランナー」(19.5%)、ソフトウエアや情報サービスで働く人は「システムエンジニア」(27.5%)がなりたい新職業の1位となっています[図12]。
今の仕事と新職業との関連性がうかがえる結果となっており、現職の経験やスキルが生かせることも新職業への関心へとつながっているようです。

〈働く大人の職業選択は「やりがい」が決め手に〉
■生まれ変わって同じ職業になりたい人もなりたくない人も、理由は「やりがい」の充実にアリ!
新しい職業が誕生し、多様な働き方が選択できる現在。もし生まれ変わるとしたら、現在と同じ職業になりたいと思うかと聞くと、3割は「なりたい」(31.3%)、7割は「なりたくない」(68.7%)と答えました[図13]。同じ職業になりたいと答えた人にその理由を聞くと、「やりがいがあるから」「うまくいくとうれしい」など、今の職業にやりがいを感じているので、同じ職業になりたい、という意見が多く挙げられました。一方、今と同じ職業にはなりたくないと答えた人は、その理由として、「もっと勉強しておけばよかった」といった後悔が大きく、次のチャンスがあれば「興味のある仕事」や「好きなこと」をしたいなど、やはりやりがいを求めて他の職業を目指すという人が多くなっています。前述図6・図10の結果の通り、大人の職業選択において「やりがい」は外せない条件となっているようです。


■働く上で大切なこと、精神的な「やりがい」 生きるための「バランス」社会との「つながり」
最後に、働く上で大切にしていることを聞きました。「やりがいと給料のバランス」(30代男性)、「オンとオフの切り替え」(40代女性)、「やりがいやワクワク」(50代男性)など、さまざまな意見が寄せられました。意見を分類すると、自分のための「やりがい」、生活のための「バランス」、社会との「つながり」が大事にされているようです。

〈早稲田大学・原教授が考察「“働くこと”とやりがい 変わる価値観の中で問い直すべきもの」〉
■7割が新しい職業にチャレンジしたい その背景には積極的動機と消極的動機の両側面がある
今回の調査で、働く人の7割が別の新しい職業にチャレンジしたいと考えていることがわかりました。なぜチャレンジしたいのか? 今の社会背景から、大きく二つの動機が考えられます。一つは、「新しい職業に関心がある」「自分の力を試してみたい」という積極的な動機です。働き方の多様化や女性の社会進出によって、「働くこと」の可能性や選択肢が広がったことに起因するものですね。もう一つ、「今の労働環境を変えたい」という消極的な動機も考えられます。経済の低迷から、かつての日本では一般的だった終身雇用制が揺らぎ、転職が肯定的に語られてきています。人生100年時代、リタイアしたくてもできないというケースもあるでしょう。社会の変化と働き方の多様化により、転職や職業選びに対する意識も多様化しているようです。
■人に寄り添う職業への注目 一過性の人気で終わらせず課題解決に向けた「考える契機」に
また、大人が今チャレンジしてみたい職業では「医師」をはじめとした医療職が、この30年間で生まれた新しい職業では「公認心理師」が人気を集める結果となりました。コロナ禍を経て、医師や看護師、介護士、清掃員、教師などの「人に寄り添う仕事」「人のためになる仕事」への注目が高まっています。こうした「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる職業は、コロナ禍によって注目度が高まりこそしたものの、その価値や社会的意義の大きさは昔も今も変わりません。医療職やエッセンシャルワークの人気を一過性のものとするのではなく、これらの職業にまつわる社会的課題や労働環境の問題をどう改善できるかというところまで、皆で考えるきっかけへと昇華させたいですね。
■仕事に「やりがい」を重視するのは不変の傾向 だが重要なのはその中身である
大人が職業を選ぶ一番の理由が「やりがい」でした。仕事におけるやりがいとは、仕事に対するモチベーションの「入れ物」のようなものです。やりがいを持って仕事に取り組むというスキームは、おそらく100年前の人も持っていた不変のものでしょう。
しかし、その「中身」となるコンテンツは時代や社会で変化し、人それぞれで異なります。
やりがいがある仕事というと耳あたりがよく、それだけで十分と思いがちですが、入れ物ではなく、その中身が何なのかが肝心です。自分にとっての「やりがい」の本質を見極めないと、「やりがいがあるからこの仕事は正しい」という「やりがい神話」に陥り、やりがいの搾取や悪用などにつながってしまう危険もあります。特に合理性が求められる今の世の中においては、いかに成果を出すか、効率的に利益を生むかということを「やりがい」と勘違いしがちです。もちろんその視点も必要ですが、「自分の仕事が社会にとってどのような意味を持つのか」と問い続けることも重要です。ノーベル賞を受賞された研究者の方々は、よく「目先の成果だけを目指していたら基礎研究はできない」とおっしゃいますが、同じことが仕事にも言えるでしょう。自分の仕事が、人々や社会とどのように関わるのかを俯瞰(ふかん)し、少しずつでも前進していくことが、本質的な「やりがい」ではないかと考えています。
■あなたにとって「働くこと」とは? 「自分の物語」を作る仕事の価値を問い直してみよう
この30年間を見ても、新しい職業が誕生し、在宅ワークなどの新しい働き方が広がると共に、ワークライフバランスも重要視されており、人生における「仕事の価値」が多様化してきているのではないでしょうか。前述のように仕事に社会的意義を探すことも、自分の生活を維持していくために仕事をすることも、「仕事の価値」として捉えることができます。自分の人生の一部である仕事が、「自分の物語」にとってどのような役割を果たすのか、見つめ直すことが必要な時代になってきたのかもしれません。
まずは、缶コーヒーでも飲みながら、自分にとっての仕事とは何か、また、自分にとっての仕事のやりがいとは何なのか、考えてみてはいかがでしょうか。
原 克(はら・かつみ) 早稲田大学教授
1954年生まれ。専門は表象文化論、都市論、ドイツ文学。19~20世紀の科学技術に関する表象分析を通じて、近代人の精神史、未来を志向する大衆の文化誌を考察・展開している。表象分析の手法で歴史的事象としての職業婦人を読み解いた「OL誕生物語 タイピストたちの憂愁」(講談社)、サラリーマンについて分析した「サラリーマン誕生物語 二〇世紀モダンライフの表象文化論」(講談社)など、多数の著書がある。

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以上
提供元・PR TIMES
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