住宅ローンは借りて終わりではない。住宅ローンの負担を抑えたり返済が苦しい時期を乗り切ったりするために、状況に応じた見直しが必要だ。住宅ローンを見直すにはどのような方法があるのか、その特徴や効果についてみていこう。
目次
1.住宅ローンを見直す場合の3つの方法
2.住宅ローンの見直しによる効果をシミュレーション
3.借り換えに合わせ団信の保証内容を見直すのも手
4.住宅ローンの返済が苦しくなったときの3つの見直し方法
5.住宅ローンは目的や状況にあった見直し方法を選択
1.住宅ローン見直しの3つの方法
住宅ローンを見直すには、大きく「借り換え」「繰り上げ返済」「金利タイプの変更」の3つの方法がある。
住宅ローン見直しの方法1……借り換え
住宅ローンの借り換えは、現在の住宅ローンよりも金利が低いほかの金融機関の住宅ローンに借り換えたり、変動金利から固定金利に借り換えて金利を固定したりする方法だ。
住宅ローンの借り換えは条件によって大きな効果が期待できるが、借り換えに伴う諸費用や一括返済、新たに契約し直す手間などもかかる。住宅ローンの返済負担の軽減が目的であれば、借り換えによる負担軽減分と諸費用をあわせて効果を見極めることが大切だ。
住宅ローン見直しの方法2……繰り上げ返済
返済負担の軽減に有効な見直し方法は、住宅ローンの借り入れ後に繰り上げ返済を行うことだ。ただし、住宅ローンの繰り上げ返済によって手元資金は減少するため、日々の生活やそのほかの資金計画に影響がない金額やタイミングで行う必要がある。
住宅ローン控除の利用中に繰り上げ返済を行うと、控除を受けられなくなったり、控除額が減ってしまったりする可能性あるので注意しよう。
住宅ローン見直しの方法3……金利タイプの変更
住宅ローンの金利タイプの違いによって金利水準やリスクの大きさは変わる。変動金利から固定金利、またはその逆に見直したときにどのようなリスクがあるか考えてみよう。
住宅ローンを変動金利から固定金利へ借り換えをすると、将来金利が上昇しても返済額が上がらない安心感が得られる。ただし一般的には変動金利より固定金利のほうが金利は高くなる。返済期間中に金利がそれほど上昇しなければ、固定金利に借り換えると負担が増えることもある。
住宅ローンの固定金利から変動金利への借り換えは、金利が下がり返済額を抑えられるメリットが期待できるが、借り換え後は金利変動リスクを伴う。また固定期間選択型の住宅ローンで、その固定金利期間終了後にしか変動金利への変更を認めていない金融機関も多い。
住宅ローンの将来の金利がどうなるかなど、誰も予測できない。最も重視するポイントはなにか、どの程度のリスク許容度や経済的な余裕があるのかなどを加味し、状況にあった金利タイプを選択することが大切だ。
2.住宅ローンの見直しによる効果をシミュレーション
住宅ローンの見直しで、金銭的なメリットが大きくなるのは「借り換え」と「繰り上げ返済」だ。実際に住宅ローンの返済額をシミュレーションした結果、金銭的なメリットが期待できるのなら、住宅ローンを見直すと良いだろう。
住宅ローンの借り換えによる金銭的なメリットが期待できる条件は、「金利マイナス1%以上」「借入残高1,000万円以上」「返済期間残り10年以上」が目安とされている。これはあくまで一般的な目安であり、正確には諸費用も含めた返済総額をシミュレーションしてみよう。
⑴住宅ローンの借り換えで毎月の返済額を減らす
借入金額2,500万円、残り返済期間25年、金利2.2%の住宅ローンを、金利1.2%の住宅ローンに借り換えた場合の負担軽減効果は以下のようになる。
毎月の返済額を下げる場合
借り換え前 | 借り換え後 | 差 | |
借入残高 | 2,500万円 | 2,500万円 | - |
借入期間 | 25年 | 25年 | - |
借入金利 | (固定)年2.2% | (固定)年1.2% | ▲年1.0% |
毎月返済額 | 10万8,414円 | 9万6,498円 | ▲1万1,916円 |
総返済額 | 3,252万4,230円 | 2,895万9,357円 | ▲356万4,873円 |
借換諸費用 | - | 77万2,000円 | +77万2,000円 |
諸費用を含めた増減額 | ▲279万2,873円 |
※元利均等返済・ボーナス返済なし、借り換えに伴う諸費用は一般的な金額(抵当権設定・抹消費用、事務取扱手数料、その他登記関連費用、印紙税)。金融機関によって現在の住宅ローンを完済(一括繰上返済)するための手数料が別途必要
住宅ローンの借り換えにより毎月の返済額は1万1,916円減り、総返済額は約356万円減少する。諸費用を差し引いても約280万円の負担軽減効果がある。
⑵住宅ローンの借り換えで返済額を短縮する
金利の低い住宅ローンに借り換えれば、住宅ローンの返済額を変えず返済期間を短縮することもできる。先程と同じ条件で毎月の返済額を減らさず借り換えをした場合のシミュレーション結果を紹介しよう。
返済期間を短縮する場合
借り換え前 | 借り換え後 | 差 | |
借入残高 | 2,500万円 | 2,500万円 | - |
借入期間 | 25年 | 22年 | ▲2年 |
借入金利 | (固定)年2.2% | (固定)年1.2% | ▲年1.0% |
毎月返済額 | 10万8,414円 | 10万7,793円 | ▲621円 |
総返済額 | 3,252万4,230円 | 2,846万7,197円 | ▲405万7,033円 |
借換諸費用 | - | 77万2,000円 | +77万2,000円 |
諸費用を含めた増減額 | ▲328万5,033円 |
※元利均等返済・ボーナス返済なし、借り換えに伴う諸費用は一般的な金額(抵当権設定・抹消費用、事務取扱手数料、その他登記関連費用、印紙税)。金融機関によって現在の住宅ローンを完済(一括繰上返済)するための手数料が別途必要
65歳で完済予定の住宅ローンであれば、63歳で完済できる。この年齢での2年は大きいだろう。住宅ローンの総返済額も約405万円減少し、諸費用を差し引いた負担軽減額は約330万円だ。住宅ローンの返済期間を短縮するほうが毎月の返済額を下げるよりも利息軽減効果は高いという結果になった。
⑷住宅ローンの繰り上げ返済で毎月の返済額を下げる、借り入れ期間を短縮する
住宅ローンの繰り上げ返済には借り入れ期間は変えず毎月の返済額を下げる「返済額軽減型」と、毎月の返済額を変えず借り入れ期間を短縮する「期間短縮型」がある。
繰り上げ返済額が同じでも、2つのタイプによって軽減される利息額や負担軽減効果が現れる時期に違いがある。たとえば以下の条件で11年目(借入から11年0ヵ月後)に100万円の繰り上げ返済を行う場合、繰り上げ返済のタイプによる違いをみてみよう。
当初借り入れ条件:借り入れ金額4,000万円、借り入れ期間35年、金利年1.0%(固定10年)、元利均等返済・ボーナス返済なし/借り入れ後11年0ヵ月時点のローン残高:2,890万625円(11年目以降の金利:年1.6%)
繰り上げ返済なし | 返済額軽減型 | 期間短縮型 | |
毎月の返済額 (繰り上げ返済前: 10年目まで) |
11万2,914円 | 11万2,914円 | 11万2,914円 |
毎月の返済額 (繰り上げ返済後: 11年目以降) |
12万912円 | 11万6,716円 | 12万912円 |
返済総額 | 4,974万486円 | 4,953万6,337円 | 4,928万5,434円 |
借入期間 | 35年0ヵ月 | 35年0ヵ月 | 34年0ヵ月 |
繰り上げ返済による 利息軽減額 |
- | 20万4,149円 | 45万5,052円 |
繰り上げ返済により 短縮される借入期間 |
- | - | 1年0ヵ月 |
※11年目以降は金利変動がないものと仮定
このケースでは固定金利期間が終わる11年目以降は金利優遇幅が縮小し、住宅ローンの毎月の返済額は約8,000円上がる。このタイミングで100万円の返済額軽減型の繰り上げ返済を行うと、住宅ローンの毎月の返済額の上昇幅は4,000円弱に抑えられる。
一方、期間短縮型で繰り上げ返済を行う場合、毎月の住宅ローンの返済額は変わらないが借入期間が1年短縮され、返済額軽減型の倍以上である約45万円の利息軽減効果が期待できる。
すぐに負担を軽減したいのなら「返済額軽減型」、最終的な負担を軽減したいのなら「期間短縮型」を選択したほうがいいだろう。いずれも住宅ローンの元金が減少するため、金利上昇リスクの軽減効果がある。
住宅ローンの繰り上げ返済のデメリットは、手元資金が減少する点だ。年1%を切る比較的低い金利で借り入れができているなら、住宅ローンの繰り上げ返済をせず手元に資金を残して教育資金や老後資金などの準備を優先したほうがよい場合もある。
3.住宅ローンの借り換えに合わせ団信の保証内容を見直すのも手
住宅ローンの借り換えとあわせ、団体信用生命保険(以下、団信)の保障内容を変更したり、内容を充実させたりするのもよい。団信は住宅ローンの返済期間中に利用者が死亡もしくは高度障害状態となった場合に保険金が支払われ、住宅ローン債務が免除される保険商品である。
最近ではがんと診断された場合や生活習慣病で一定の状態、要介護状態となった場合などにもローンが免除される商品が増えている。
団信に加入するには健康状態に関する審査があり、団信に加入できなければ住宅ローンのそもそも借り換え自体ができないこともある。団信の保障内容によって金利が上乗せされる場合もあるので、その保障が本当に必要なのかよく考えて判断しよう。民間の生命保険に加入している場合も保障の重複がないか確認が必要だ。
4.住宅ローンの返済が苦しくなったときの3つの見直し方法
住宅ローンの返済期間中に収入の減少や支出の増加によって返済が苦しくなってしまうこともある。そのような状況になった場合にどうすべきか考えてみよう。
返済が苦しくなったときの見直し方法1……返済期間を延長する
収入の減少や支出の増加がしばらく続くのであれば、住宅ローンの返済期間を延長して毎月の返済額を下げるという方法が考えられる。
ただし住宅ローンの返済期間が長くなれば利息負担は膨らみ、返済総額は増えてしまう。完済時期が遅くなるため、退職後も住宅ローンの返済が続くといった懸念も生じる。
返済が苦しくなったときの見直し方法2……一定期間の返済額減額(元金の据え置き)する
収入の減少や支出の増加が一時的なものであれば、一時的に住宅ローンの元金の返済を据え置き、利息のみを返済する方法もある。据え置き期間中は住宅ローンの毎月の返済額を抑えられる。
ただし住宅ローンの元金が減らないため、据え置き期間終了後は毎月の返済総額は増えたり、返済期間が長くなったりするなどの影響がある。
返済が苦しくなったときの見直し方法3……ボーナス返済の変更をする
ボーナスが減りボーナス月の返済が苦しくなった場合は、住宅ローンのボーナス返済をやめたり、ボーナス返済の割合を下げたりすることもできる。ただし、この場合、ボーナス返済分が毎月の住宅ローンの返済額に上乗せされてしまうので、毎月の返済額は増えることに注意しよう。
5.住宅ローンは目的や状況にあった見直し方法を選択する
住宅ローンの返済が苦しくなった場合、まずは返済を続けるための対策をとることが優先だ。収入が回復したり子供が独立したりして家計に余裕ができたら、なるべく早い段階で繰り上げ返済などを行い、住宅ローンの負担を減らすための見直しを行おう。
せっかく住宅ローンを見直しても、その方法が目的や状況にあっていなければ十分な効果が得られないこともある。事前に住宅ローンの見直しによる効果をシミュレーションし、その後の返済への影響なども含めた効果を見極めてから実行に移したほうがよい。
執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP® HP : https://www.rapportco.com
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