住宅ローン金利が過去最低を更新するなか、住宅ローンの借り換えを検討している人もいるだろう。借り換えの難点は、コストによっては、単に金利が下がったからといって、メリットがあるとは限らない点だ。どのような条件を満たせば借り換えによるメリットを得られるだろうか。

目次
1.借り換えの5つのメリット
2.借り換えの2つのデメリット
3.借り換えるべきかの2つの判断基準
4.銀行と交渉して金利が下がるケースも

1.住宅ローンを借り換える5つのメリット

住宅ローンの借り換えによるメリットとして次の5つがあげられる。

メリット1……住宅ローンの返済額を減らせる

住宅ローンの借り換えの最も大きなメリットは返済額を減らせることだ。今借りている金利よりも低い金利の住宅ローンに借り換えれば、利息負担を抑えて毎月の返済額を減らすことができる。

たとえば借入残高2,500万円、残り返済期間25年、金利年2.2%の住宅ローン(元利均等返済・ボーナス返済なし)を、金利1.2%の住宅ローンに借り換えた場合の負担軽減効果は以下の表のようになる。なお、借り換えに伴う諸費用は、抵当権設定・抹消費用、事務取扱手数料、その他登記関連費用、印紙税を併せた一般的な金額で試算した。金融機関によっては現在の住宅ローンを完済(一括繰上返済)するための手数料が別途必要になる。

毎月の返済額を下げる場合

借り換え前 借り換え後
借入残高 2,500万円 2,500万円 -
借入期間 25年 25年 -
借入金利 (固定)年2.2% (固定)年1.2% ▲年1.0%
毎月返済額 10万8,414円 9万6,498円 ▲1万1,916円
総返済額 3,252万4,230円 2,895万9,357円 ▲356万4,873円
借り換え諸費用 - 77万2,000円 +77万2,000円
諸費用を含めた増減額 ▲279万2,873円
※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

住宅ローンの借り換えにより毎月の返済額は1万1,916円減り、総返済額は約356万円減少する。諸費用を差し引いても約280万円の負担軽減効果がある。

メリット2……住宅ローンの返済期間を短縮できる

月々の住宅ローンの返済額を変えずに、返済期間を短縮することもできる。

先ほどと同じ条件で毎月の返済額を減らさず借り換えを行えば、住宅ローンの返済期間を3年短縮できる。65歳で完済予定のローンであれば、62歳で完済できる。この年齢での3年は大きい。

返済期間を短縮する場合

借り換え前 借り換え後
借入残高 2,500万円 2,500万円 -
借入期間 25年 22年 ▲3年
借入金利 (固定)年2.2% (固定)年1.2% ▲年1.0%
毎月返済額 10万8,414円 10万7,793円 ▲621円
総返済額 3,252万4,230円 2,846万7,197円 ▲405万7,033円
借り換え諸費用 - 77万2,000円 +77万2,000円
諸費用を含めた増減額 ▲328万5,033円
※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

住宅ローンの総返済額は約405万円減少し、諸費用を差し引いた負担軽減額は約330万円。返済期間を短縮するほうが毎月の返済額を下げるよりも利息軽減効果は高い。

メリット3……変動金利から長期固定金利へ切り替えれば住宅ローンの返済額を確定できる

現在、変動金利の住宅ローンを利用している人は、長期固定金利の住宅ローンへ借り換えることで返済額を確定できる。将来金利が上昇して返済額が増えてしまうのが不安な人にとっては、変動金利と固定金利の金利差が縮まっている今のタイミングは借り換えのチャンスといえる。

住宅ローンの金利タイプの選択は、金利上昇による返済額の増加にどの程度対処できるか(リスク許容度)や、残りの返済期間などを考慮して慎重に判断しなければならない。

住宅ローンの固定金利は金利上昇リスクを回避できる、いわば「保険付」の金利だ。一方で、金利の変動が小さければ、固定金利は変動金利に比べ高くついてしまう。

住宅ローン金利は今が底だといわれ続けながら、実際には長引く低金利政策の影響で過去最低を更新し続けてきた。30年前に住宅ローンを組んだとすると、変動金利が当時の固定金利を上回ることはない。結果論ではあるが変動金利を選んだほうが有利だったといえる。

もちろん今後、住宅ローンの金利が上昇する可能性は十分ある。しかしそれがいつなのかはわからない。なるべく低い変動金利で住宅ローンを借りて、余った資金は貯蓄や運用に回し、金利が上昇に転じたタイミングでその資金を繰上返済に充て、負担を抑えるという方法もある。

メリット4……団体信用生命保険(団信)の保障内容をより充実したものに変更できる

住宅ローンの借り換えと併せ、団体信用生命保険(団信)の保障内容を充実させることもできる。原則として、団信の保障内容は一度加入すると住宅ローン返済中に変更できないため、借り換えによるメリットのひとつといえるだろう。

団信は住宅ローンの返済期間中に利用者が死亡もしくは高度障害状態となった場合に保険金が支払われ、住宅ローン債務が免除される保険商品だ。最近ではがんと診断された場合や生活習慣病で就業障害などが継続した場合、要介護状態となった場合などにローンが免除される商品も増えている。

団信に加入するには審査があり、健康状態によっては加入できない場合もある。保障内容によって金利が上乗せされる場合もあり、その保障が本当に必要なのかよく考えて判断しなければならない。民間の生命保険に加入している場合には保障内容の重複がないか確認も必要だ。

たとえばフラット35の場合をみてみよう。提示されている金利には、利用者が死亡もしくは身体障害状態になった場合にローンが免除される「新機構団信」の保険料が含まれている。これまでの高度障害保障から身体障害保障になることで、より該当要件が緩くなり、高度障害を要件とする一般的な団信より充実した保障になった。

0.24%の金利上乗せにより、さらに保障の充実した「新3大疾病付機構団信」に加入することもできる。新3大疾病付機構団信では、新機構団信の条件に加え、がん・急性心筋梗塞・脳卒中が原因で一定の状態に該当した場合や要介護2以上となった場合にもローンが免除される。

保障内容による上乗せ金利の例 *フラット35(買取型)の場合

加入する団信の種類 保障内容 金利
新機構団信 死亡・身体障害 上乗せなし
デュエット
〈夫婦連生団信〉
連帯債務者である夫婦2人いずれかの死亡・身体障害 借入金利
+年0.18%
新3大疾病付機構団信 死亡・身体障害・3大疾病・介護 借入金利
+年0.24%
健康上の理由その他事情により機構団信に加入しない場合 借入金利
▲年0.2%
※住宅金融支援機構ホームページを基に筆者作成

メリット5……リフォーム資金を併せて借り入れられる

リフォームを検討しているのなら、もとの住宅ローン残高にリフォーム資金を上乗せした金額で借り換え先の住宅ローンを組むことができる。

リフォームローン単独の金利は一般的に住宅ローンよりも高く、扱う金融機関や借入期間、借入金額などの条件も限られる。借り換えをすることで、住宅ローンと同じ条件で借り入れできるメリットは大きい。

リフォームローンと住宅ローンの金利を三菱UFJ銀行の場合で比較すると以下になる。

  • リフォームローン(変動金利・保証料込)……年1.99%~年2.875%
  • 住宅ローン(変動金利・保証料込)……年0.725%

2.住宅ローン借り換えの2つのデメリット

住宅ローンの借り換えはデメリットも考えた上で判断しなければならない。借り換えのデメリットとしては次のようなものがある。

デメリット1……住宅ローン借り換えの諸費用がかかる

借り換えでは現在の住宅ローンの完済と新たな住宅ローンの契約手続きに、以下のような費用がかかる。

<現在の住宅ローンを完済するために必要な費用>

  • 一括繰上返済手数料……現在の住宅ローンを完済するために銀行に支払う手数料。0~5万円程度
  • 登録免許税……土地・建物1個あたり1,000円
  • 司法書士報酬……設定済み抵当権1件につき2万円程度

<新たに住宅ローンを契約するために必要な費用>

  • 保証料・事務手数料……事務取扱手数料の相場は借入金額の2%程度、保証料は借入期間30年で約2%が相場(一括前払い型の場合)
  • 登録免許税……抵当権設定額(借入額)の0.4%
  • 司法書士報酬……6~10万円程度
  • 印紙税……数万円程度。借入金額1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円。電子契約利用の場合は無料。

    借り換えにかかる諸費用は銀行や借入金額などによって異なるが、数十万円程度かかるケースが多い。借り換えによるメリットがあるかどうかは、軽減される利息額からこれら諸費用を差し引いて判断しなければならない。

    例として、借入金額2,500万円(土地・建物)、みずほ銀行から住信SBIネット銀行へ借り換える場合をみてみよう。
     
    借り換えにかかる諸費用の例(概算・税込)

一括繰上返済手数料 3万3,000円
抵当権抹消費用 登録免許税 土地・建物(各1,000円×2) 2,000円
司法書士報酬(依頼する司法書士によって差がある) 2万円
保証料・事務取扱手数料 事務取扱手数料(借入金額の2.2%) 55万円
抵当権設定費用 登録免許税 抵当権設定額(借入額)の0.4% 10万円
司法書士報酬 6万円
印紙税 2万円
合計 78万5,000円
※みずほ銀行・住信SBIネット銀行ホームページを基に筆者作成

借り換えに伴う諸費用をすぐに用意できない場合には、新たに契約する住宅ローンの借入金額に含めて契約する方法や、諸費用ローンを利用する方法などがある。

諸費用ローン単体の金利は、たとえば三菱UFJ銀行の場合で、年4.475%(2020年4月19時点)と住宅ローンに比べ高い。基本的には住宅ローンに上乗せして借りるほうが有利だといえる。住宅ローンの借入期間が長くなれば利息が膨らむため注意も必要だ。

デメリット2……住宅ローンの借り換え手続きに手間がかかる

住宅ローンの借り換えには、現在の住宅ローンの完済と新規借り入れの手続き、抵当権の抹消、設定に伴う登記手続きなどが必要だ。そのために必要な書類を準備したり、手続きのため関係機関に出向いたりする手間がかかる。

また、住宅ローンの借り換えには審査も必要だ。申込から審査、借り換え(融資実行)までに通常は1カ月程度、場合によってはそれ以上かかることもある。

3.住宅ローンを借り換えるべきかの2つの判断基準

住宅ローンの借り換えでは多少金利が下がったとしても、諸費用も含めた全体でメリットがあるとは限らない。住宅ローンの借り換えをすべきかの判断基準としては2つだ。

住宅ローンの返済負担が減るかどうか

借り換えで返済負担が減るかどうかは最も重視すべきポイントだ。次のいずれかの条件を満たしていれば借り換えによる金銭的メリットが期待できる。

⑴金利が1%以上下がる
⑵借入残高が1,000万円以上ある
⑶返済期間が10年以上残っている

⑴~⑶までを、住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて試算し、比較してみよう。条件は以下だ。

  • 元利均等返済・ボーナス返済なし
  • 返済期間中の金利変動なし
  • 借り換えに伴う諸費用は抵当権設定・抹消費用、事務取扱手数料、その他登記関連費用、印紙税を合わせた一般的な金額。金融機関によって現在の住宅ローンを完済(一括繰上返済)するための手数料が別途必要。

⑴金利差による借り換え効果比較

借り換え前 ▲年0.5% ▲年0.7% ▲年1.0%
借入残高 1,000万円
借入残期間 10年
借入金利 年2.0% 年1.5% 年1.3% 年1.0%
毎月返済額 9万2,013円 8万9,791 8万8,912円 8万7,604円
総返済額 1,104万1,557円 1,077万9,853円 1,067万3,693円 1,051万5,719円
借り換え諸費用 37万2,000円
諸費用を含めた増減額 +11万296円 +4,136円 ▲15万3,838円
※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

住宅ローンの借入残高1,000万円、残りの返済期間10年だと、金利が0.5%しか下がらない場合は諸費用を含めた返済額が約11万円増えてしまうが、1%下がると返済額が約15万円減ることになる。

⑵借入残高による借り換え効果比較

借り換え前 借り換え後 借り換え前 借り換え後
借入残高 1,000万円 1,500万円
借入残期間 10年
借入金利 年2.0% 年1.3% 年2.0% 年1.3%
毎月返済額 9万2,013円 8万8,912円 13万8,020円 13万3,368円
総返済額 1,104万1,557円 1,067万3,693円 1,656万2,358円 1,601万580円
借り換え諸費用 - 37万2,000円 - 51万2,000円
諸費用を含めた
増減額
+4,136円 ▲3万9,778円
※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

住宅ローンの残りの返済期間が10年の場合、借入残高が1,000万円だと金利が0.7%低くなっても諸費用を含めた返済額は微増してしまい、借り換えの効果が期待できない。一方、借入残高が1,500万円なら金利が0.7%低くなれば、諸費用を含めた返済額は約4万円安くなる。

⑶借入期間による借り換え効果比較

借り換え前 借り換え後 借り換え前 借り換え後
借入残高 1,000万円
借入残期間 10年 20年
借入金利 年2.0% 年1.3% 年2.0% 年1.3%
毎月返済額 9万2,013円 8万8,912円 5万588円 4万7,340円
総返済額 1,104万1,557円 1,067万3,693円 1,214万1,072円 1,136万5,784円
借り換え諸費用 - 37万2,000円 - 37万2,000円
諸費用を含めた
増減額
+4,136円 ▲40万3,288円
※住信SBIネット銀行の住宅ローンシミュレーションを用いて筆者が試算

住宅ローンの借入残高1,000万円の場合、残りの返済期間が10年しかないと金利が0.7%低くなっても諸費用を含めた返済額が微増してしまい、借り換えの効果が期待できない。残りの返済期間が20年あれば、金利が0.7%安くなれば諸費用を含めた返済額は40万円も安くなる。

これらはあくまで簡易的な目安であり絶対的な基準ではない。諸費用も含めた返済総額をシミュレーションして実際に自分で確認することが大切だ。

金銭面以外のメリットもあるか

以下のような希望がある場合、住宅ローンの借り換えと同時に行えばメリットは増す。

  • 長期固定金利へ切り替えたい
  • 団信の保障内容を充実させたい
  • リフォーム資金を低金利で借りたい

    これらの目的のためだけに負担を増やしてまで借り換えを行うのは賢明とはいえない。あくまで借り換えによる金銭的なメリットがあることが前提だ。

    現在の金利タイプが変動金利であれば、いつでも固定金利へ変更できるし、保障を充実させるには民間保険に加入する方法もあることは知っておこう。

4.住宅ローンは現在利用している銀行と交渉して金利が下がるケースも

住宅ローンの金利を下げるには、現在利用している銀行と直接交渉する方法もある。金利条件の変更であればローンの完済や新規契約が必要なく、コストはほとんどかからない。

金利を下げてもらえるかどうかは銀行の判断によるが、これまでの返済実績などが評価されれば可能性はゼロではない。他行へ借り換えた場合の見積もりや仮審査の結果などを持参すると交渉がスムーズだ。現在の銀行で金利の引下げが難しいようなら、改めて借り換えを検討すればよい。

住宅ローンは金額が大きいだけにわずかな条件の違いが大きな差になる。住宅ローンの借り換えや交渉によって必ずしもメリットが得られるとは限らないが、定期的に見直すことでその可能性は高まる。住宅ローンの借り換えのシミュレーションをするだけならお金はかからない。住宅ローンを返済中の人は、今一度住宅ローンを見直してみてはどうだろうか。

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文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
 

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