低金利環境で住宅ローンの借り換えを検討する人は多いだろうが、住宅ローンの借り換えで失敗しないためには、どんなことに気をつければいいのだろうか。事前によくある失敗例を参考にして住宅ローンの借り換えを上手に行ってほしい。

住宅ローンの借り換えに失敗するパターンは2つ

住宅ローンの借り換えに失敗するのは、主に「審査基準に引っかかる」か「借り換え後に条件面やライフプラン面で失敗したと気付く」かの2つだ。

住宅ローンの審査基準は、新規の申し込みで問題がなかったからといって借り換えでも通過するとは限らない。重視される審査基準の項目は銀行によって異なるが、大きく分けると人物評価と担保評価の2つだ。

日本の不動産は購入してから価値が下がりやすく、住宅ローンの新規申込みのときよりも物件の担保評価が下がりやすい。そのバランスを取るために人物評価が厳しくなり、借り換えでは審査落ちすることがあるのだ。

仮に住宅ローンの借り換え審査に通ってもそれだけで安心してはいけない。事前の検討が甘く借り換え後に失敗したと気付くこともあるからだ。避けようのないこともあるが、借り換え後に失敗しないためにはあらかじめ十分検討する必要がある。

審査基準に引っかかり住宅ローンの借り換えに失敗する例

まずは審査基準による住宅ローンの借り換え失敗例を見てみよう。

住宅ローンの借り換え失敗例1……団体信用生命保険に加入できない

民間の金融機関で住宅ローンを借りる場合、団体信用生命保険(団信)の加入が必須条件だ。借り換えの住宅ローンでも団信に加入しなければならないが、生命保険であるため健康状態が悪いと加入できないことがある。

団信に加入できない場合は、ほとんどの金融機関で健康状態の引受基準を緩くした「ワイド団信」が用意されている。通常の団信より告知事項が少なく、加入しやすいのが特徴だ。その代わり金利が上乗せされるため、借り換えが本当にお得なのかは再度検討すべきだ。

民間金融機関の住宅ローン以外では、団信の加入が必須ではない「フラット35」に借り換えする選択肢もある。

住宅ローンの借り換え失敗例2……教育や自動車のローンを借りていて返済負担率に引っかかる

住宅ローンの審査基準のひとつに「返済負担率」がある。返済負担率とは年収に占める住宅ローンの返済額だ。住宅ローンの新規借入なら一般的に35%以内が目安だが、借り換えの場合は物件の担保評価が下がっているため返済負担率が厳しくなると言われている。

注意したいのは返済負担率に含まれるのは住宅ローンだけでなく、他の借入も合算されることだ。教育ローンやマイカーローンなど新規借入のときにはなかった返済額も計算対象になり、借り換え額によっては返済負担率に引っかかる可能性がある。

返済負担率を下げるには、他のローンを返済するか、住宅ローンの返済期間を長くして借りるなどの方法がある。返済期間を長くする場合は利息を多く支払うことになるため気をつけたい。

住宅ローンの借り換え失敗例3……転職や収入減で審査基準に引っかかる

借り換えのときも同様に勤続年数や年収がチェックされる。金融機関は住宅ローンを貸し出す相手がどれだけ安定した返済能力があるかを重視するため、あまりに勤続年数が短かったり年収が大きく下がったりすると審査が厳しくなりやすい。

勤続年数については基準をホームページなどで明示しているところもあるが、具体的には書いていないところもある。「安定した収入のある方」などと書かれていれば申込み自体は可能だ。勤続年数の基準は1年以上としている金融機関も多く、転職して間もなければ時期をずらして申し込むのもいいだろう。

年収で審査に引っかかってしまいそうなら、配偶者が働いていれば収入を合算して住宅ローンを申し込むなどの方法もある。

住宅ローンの借り換え後に「失敗した」と気付く例

次に住宅ローンを借り換えした後の失敗例を見てみよう。

住宅ローン借り換え後の失敗例1……金利や返済期間の選択ミス

固定金利から変動金利に借り換えると、返済期間が変わらなければ毎月の返済額は少なくなる。そのため変動金利では返済期間を短縮して借り換え、住宅ローンを当初の予定より早く返済しようとすることがある。

それ自体は問題ないのだが、返済期間を短縮すると毎月の返済額も多くなり、もともとの固定金利の返済額とさほど変わらないことがある。変動金利に借り換えて返済額が変わらないのであれば、例えば収入に対して支出割合が目一杯の家庭だと、少し金利が上昇しただけで家計が圧迫され返済に困るケースがあるのだ。

一般的に収入に対する住宅ローンの返済割合は25%以内までが安心とされており、変動金利の場合は金利が上昇することも見越して余裕を持った条件で借りるようにしたい。

住宅ローン借り換え後の失敗例2……十分な借り換え比較をしなかった

住宅ローンの借り換えをするのは、現在の借入金利より低い金利で借り換えできるからだ。借り換えの相談では金融機関が返済シミュレーションを提示してくれるが、そこである程度の効果が出ていれば他の金融機関と比較するのは手間もかかり面倒だとそのまま借り換えしてしまう人もいる。

実際に返済額が下がっていればいいかもしれないが、同じような金利条件でも諸費用は金融機関によってまちまちだ。他の金融機関も比較していれば諸費用を抑えられ、もっと効果のある借り換えになった可能性がある。

住宅ローンは金額が大きいために少しの違いでも数十万円や100万円単位の差になることがあり、手間を多少かけても十分に比較を行ったほうがいいだろう。

住宅ローン借り換え後の失敗例3……ライフプランの変化による失敗

たとえば、夫婦共働きの家庭において、夫婦の収入を合算して借り換えを行っていた場合、予定していなかった妻の妊娠による休職などどちらか片方の収入に大きな変化があると、返済が苦しくなることがある。夫婦2人の収入を元に借り換えをしていたため、前提が崩れると家計収支が一気に悪化する可能性があるのだ。

夫婦で住宅ローンを借りる場合は特にライフプランを考慮し、何かあったときのために繰り上げ返済用の貯蓄をしておくなどあらかじめ対策を練っておきたい。

住宅ローンの借り換えを失敗させないためには事前のプランニングが大切

住宅ローンの返済は家計に占める割合が大きく、少しでも良い条件で借り換えできるならそのほうがいいだろう。ただし借り換えをしたことで逆に失敗してしまうこともあるため、今回の失敗例を参考に事前のプランニングをしっかり考えてみてほしい。
 
執筆・國村功志(ファイナンシャルプランナー)

大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成ファイナンシャルプランナーとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。

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