目次
相続人や遺産の内容を確認
 ・相続人の調査
 ・財産の調査
遺産分割協議を行う
 ・法定相続人全員で遺産の分け方を話し合う
 ・もめてしまった場合

相続人や遺産の内容を確認

遺産相続の手続きの種類と期限。注意点、忘れがちな請求などを確認
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

遺産分割協議に際し、「遺産調査」と「相続人調査」をするのが最初のステップです。「故人の財産はどのくらいあるのか」「誰が相続するのか」を正確に把握しない限り、遺産分割は前に進みません。

相続人の調査

民法で定められた相続人は「法定相続人」とよばれます。遺言書がない場合、故人の財産は法定相続人が引き継ぐのが原則です。

法定相続人は「配偶者」と「血族」です。故人の出生から死亡までの全部の戸籍謄本を取得したうえで、誰が法定相続人に該当するのか確認しましょう。

以下は、民法で定められた法定相続人の範囲です。法定相続人には以下のように相続の優先順位があり、上位順位の相続人がいない場合に、下位順位の相続人に相続権が移ります。

  • 故人の配偶者:常に相続人になる
  • 故人の子ども:第1順位
  • 故人の直系尊属(父母・祖父母など):第2順位
  • 故人の兄弟姉妹:第3順位

すべての法定相続人が確認できたら、相続人の相関図を作成しましょう。

参考:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

戸籍収集の方法

法定相続人を証明するのは戸籍です。戸籍には、「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」があり、遺産相続の各種手続きで提出を求められます。

手続きによって必要な戸籍の種類は変わりますが、どの手続きでも必須といえるのが「戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)」です。

  • 法定相続人全員の戸籍謄本
  • 故人の出生から死亡までの戸籍謄本

戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求をします。本籍地が離れている場合は「郵送による請求」も可能です。また、市区町村によっては「コンビニのマルチコピー機での取得」もできます。

財産の調査

財産調査は、遺産がどれだけあるかを調査するプロセスです。遺産が確定しなければ、当然ながら分割もできません。

相続財産には、預貯金・不動産・車両・貴金属などの「プラスの財産」のほかに、借金・未払い金・保証債務などの「マイナスの財産」があります。財産調査を怠ると、相続人が多額の債務を引き継ぐ可能性があるでしょう。

財産の中に不動産や有価証券がある場合は、さまざまな方法を使って、その価値を査定する必要があります。調査や査定が難しい場合は、司法書士や行政書士、弁護士などの専門家にサポートを依頼しましょう。

預貯金や不動産の調べ方

故人の遺留品の中に、キャッシュカードや通帳、明細書があれば、当該の金融機関に連絡します。金融機関では、法定相続人であることが証明できれば、預金の有無や残高の照会が可能です。残高がある場合は「残高証明書」を発行してもらいましょう。

不動産に関しては、遺留品の中から「登記識別情報通知書(権利書)」を探します。毎年届く「固定資産税の納税通知書」からも、不動産の有無を確認できるでしょう。

不動産がある市区町村が絞り込めていれば、役場で「名寄帳」を取得する手もあります。名寄帳は市区町村が作成した固定資産課税台帳で、不動産の所有者が一覧表で確認できます。

不動産を所有している事実が判明した場合は、不動産ごとに「不動産登記簿謄本」と「固定資産評価証明書」を取得しておきましょう。

負債の調べ方

金融機関からの借入れは、当該の金融機関で確認できます。債権者からの催告通知によって借入先が判明するケースも珍しくありません。

見当がつかない場合は、「信用情報機関」に情報開示を求める手もあります。以下の機関では、クレジットカードやローン、割賦販売といった、個人の信用情報を管理しています。開示方法は、各機関のウェブサイトを確認しましょう。

  • シー・アイ・シー(CIC)
  • 日本信用情報機構(JICC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

個人間の借入れは、遺留品から「借用書」や「金銭消費貸借契約書」を探すしかありません。預金通帳に「個人名への振込履歴」がないかもチェックしましょう。

遺産分割協議を行う

遺産相続の手続きの種類と期限。注意点、忘れがちな請求などを確認
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

相続人調査と財産調査が完了したら、法定相続人の間で「遺産分割協議」を行うのが次のステップです。協議で意見がまとまらない場合、調停委員が当事者の間に入る場合もあります。協議の流れや注意点を確認しましょう。

法定相続人全員で遺産の分け方を話し合う

遺産分割協議は「法定相続人全員で行うこと」が絶対条件です。1人でも欠けると、協議内容は無効とされます。

具体的には、「遺産分割協議書」にすべての法定相続人が記名・押印(認印)することで、協議が成立します。遺産分割協議書がなければ、不動産や預貯金などの名義変更はできません。

遺言書がない場合、分割割合は以下の「法定相続分(民法が定めた相続割合)」を目安に決定するのが一般的です。子ども・直系尊属・兄弟姉妹が複数人いるときは、法定相続分を頭割りにします。

法定相続人法定相続分
配偶者と子ども配偶者が1/2・子どもが1/2
配偶者と直系尊属配偶者が2/3・直系尊属が1/3
配偶者と兄弟姉妹配偶者が3/4・兄弟姉妹が1/4

参考:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

もめてしまった場合

遺産分割協議が円滑に進まない場合、家庭裁判所での「遺産分割調停」や「遺産分割審判」へと進みます。

調停は話し合いによる解決方法です。調停委員がそれぞれの意見を聴取したうえで、全員が納得できる分割方法を検討します。調停が成立しない場合は、遺産分割審判によって裁判所が分割方法を決定します。

相続税の申告期限は、「相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内」です。分割方法が期限までに決まらない場合は、法定相続分で相続したものと仮定して相続税を納めます。

「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などの制度は、遺産分割が確定しない限り適用されません。従って、遺産分割の確定後は、税額計算のやり直しや払い戻しで手間がかかることが予想されます。