遺産相続の手続きにはどのような種類があるのでしょうか? 相続税の申告や準確定申告には期限があり、期限を過ぎるとペナルティーが科せられます。年金や健康保険の手続きも早めに済ませる必要があるでしょう。手続きの種類と注意点を解説します。

目次
遺産相続手続きで重要な3つのポイント
 ・手続きの期限を確認
 ・遺産の分け方
 ・必要な書類を収集
年金や健康保険に関する手続き
 ・未支給年金の請求
 ・高額療養費制度の還付手続きなど

遺産相続手続きで重要な3つのポイント

遺産相続の手続きの種類と期限。注意点、忘れがちな請求などを確認
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

身内が亡くなった場合、遺産相続に関わる手続きを行う必要があります。複数の手続きが同時期に発生するため、残された者同士で協力しながら、迅速に対処しましょう。

手続きの期限を確認

遺産相続の手続きといってもさまざまなものがあり、それぞれに異なる期限が設けられています。遅延なく手続きを完了できるように、無理のないスケジュールを組みましょう。以下は代表的な手続きの一例です。

  • 相続放棄の申述
  • 相続税の申告
  • 準確定申告

民法で定められている法定相続人は、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出することで、「相続放棄」が選択できます。申述期間は「自分が相続人になったことを知った日から3カ月以内」です。

他方、故人の財産を引き継いだ相続人には、相続税の納税義務があります(基礎控除額あり)。相続税を計算したうえで「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」に、申告・納税を行うのが原則です。

故人が生前に収入を得て納税者だった場合、相続人は「生前の所得税の確定申告」をしなければなりません(準確定申告)。年の中途で亡くなった場合、申告・納税の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内」です。

遺産の分け方

故人が遺言書を残しているケースでは、遺言書の内容に従って遺産を分割するのが基本です。遺言書がない場合は、法定相続人全員で協議をし、誰が何をどのように引き継ぐかを決定します。

協議を始めるに当たり、代表的な遺産の分け方を確認しておきましょう。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割

「現物分割」は、現物のまま分割する方法です。法定相続分(民法で定められた相続割合)に従って分割するのが基本ですが、相続人全員の同意があればその限りではありません。

「換価分割」は現物の売却によって得た「売却金」を分ける方法です。土地や不動産といった物理的に分割が難しい財産に用いられます。

「代償分割」は、代表者が財産を取得する代わりに、他の相続人に代償財産を与える方法です。被相続人の家に住んでいた相続人がそのまま住み続ける場合などに利用されるケースが多いでしょう。

必要な書類を収集

手続きには、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票の除票といったさまざまな添付書類が必要となり、書類集めだけでも相当の時間がかかります。人によっては1~2カ月を要する場合もあるようです。

役場の受付時間は平日の日中が基本なので、働いている人は仕事の合間を縫って出向かなければなりません。特に「法定相続人の印鑑証明書」は、以下のようなさまざまな場面で必要になります。慌ただしくなる前に取得しておくのが望ましいでしょう。

  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続税の申告
  • 不動産の登記名義の変更(相続登記)
  • 金融機関における預貯金の相続手続き
  • 死亡保険金の受け取り

年金や健康保険に関する手続き

遺産相続の手続きの種類と期限。注意点、忘れがちな請求などを確認
(画像=『RENOSYマガジン』より引用)

残された家族は、被相続人の未支給年金や高額療養費制度の還付金の手続きを忘れずに行いましょう。未支給年金は相続財産に該当しませんが、高額療養費制度の還付金は相続財産に含まれます。

未支給年金の請求

公的年金は2カ月に1回、偶数月の15日に対象者の金融機関口座に振り込まれるのが一般的です。

年金受給者が偶数月の15日より前に亡くなると3カ月分、15日以降に亡くなると1カ月分、奇数月に亡くなると2カ月分の未支給年金が発生します。

未支給年金は「故人と生計を同じくしていた配偶者や親族」が受け取れます。年金事務所または年金相談センターで、以下の届け出を行いましょう。

  • 受給権者死亡届の届け出(日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は不要)
  • 未支給年金請求の届け出

受給権者死亡届の届け出期日は「死亡日から10日以内(国民年金は14日以内)」です。届け出が遅れ、亡くなった日以降分の年金を受け取った場合は、返金の義務が生じます。年金の受給権には時効があるため、早めに請求手続きを行いましょう。

参考:年金を受けている方が亡くなったとき|日本年金機構

高額療養費制度の還付手続きなど

日本には、1カ月の医療費や薬代が一定の自己負担限度額を超えた場合、超えた金額を払い戻す「高額療養費制度」があります。

還付が発生する場合は、加入している保険者に対して忘れずに還付請求を行いましょう。還付金は、故人が生前に受け取るはずのものであるため、相続財産に該当します。

故人が国民健康保険の加入者であった場合、「死亡日から14日以内」に故人が住んでいた市区町村の役場に「国民健康保険資格喪失届」を提出し、加入者本人の保険証を返却します。

国民健康保険や健康保険の被保険者が亡くなると、保険者から埋葬をする人に対して「葬祭費」や「埋葬料」が支給されます。保険資格喪失届の提出時に、支給手続きも済ませておくと二度手間になりません。