目次
死亡保険金の請求
・請求方法と期限
・税金に注意
遺言書の有無を確認
・遺言書の探し方
・公正証書遺言以外は遅滞なく検認を請求する
・遺言書の内容に納得できない場合
・遺留分侵害額請求権とは
死亡保険金の請求
故人が生命保険に加入している場合、保険の受取人になっている人は「死亡保険金」が受け取れます。保険会社に連絡して、死亡保険金の請求手続きを行いましょう。
請求方法と期限
死亡保険金受け取り事由が発生した場合、受取人が生命保険会社に連絡を入れます。請求のための資料が送付されるため、案内に従って請求手続きを進めましょう。
必要書類は保険会社によっても異なりますが、「保険証券」「被保険者の住民票」「受取人の戸籍抄本」「印鑑証明書」「医師の死亡診断書」「受取人の本人確認書類」などが必要です。
死亡保険金には請求期限があり、ほとんどは「被相続人が死亡した日から3年間」に設定されています(かんぽ生命は5年間)。
税金に注意
死亡保険金は契約者や受取人の違いにより、課される税金の種類が異なる点に注意しましょう。
- 契約者と被保険者が同一で、受取人が異なる(例:契約者と被保険者が夫、受取人が妻):相続税
- 契約者と受取人が同一(例:契約者が妻、被保険者が夫、受取人が妻):所得税
- 契約者・被保険者・受取人が異なる(例:契約者が妻・被保険者が夫・受取人が子):贈与税
契約者と被保険者が同一で、受取人が異なる場合は、相続税の課税対象です。ただし、死亡保険金は受取人の固有財産であるため、遺産分割の対象にはなりません。相続財産とみなして相続税を課税することから「みなし相続財産」とよばれています。
契約者と受取人が同一の場合は、所得税の課税対象です。一時金で受領した場合は「一時所得」として扱います。申告・納付期限は「死亡保険金を取得した年の翌年2月16日~3月15日」です。
被保険者・受取人が異なる場合は、贈与税が課税されます。贈与税の申告・納付期限は「死亡保険金の贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日」です。
遺言書の有無を確認
遺産分割について話し合う前に「遺言書の有無」を確認しましょう。遺言書がない場合は、法定相続人が財産を相続しますが、遺言書がある場合は「遺言者の意思」が優先されます。
遺言書の探し方
遺言書は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に大別されます。
自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で作成したもので、自宅や法務局に保管されるケースが大半です。法務局(遺言書保管所)にない場合は、思い当たる場所を探すしかありません。
公正証書遺言は、公証役場で作成された遺言書です。公証役場の「遺言検索システム」で一元管理されているため、公証役場の窓口で照会請求を行いましょう。
相続人が照会する際は、「遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本)」や「相続人であることが証明できる戸籍謄本」「本人確認書類」などが必要です。
公正証書遺言以外は遅滞なく検認を請求する
封印のある遺言書は、家庭裁判所にて開封しなければなりません。自宅で自筆証書遺言を見つけた場合は、その場で開封せずに「検認の申し立て」を行いましょう。
検認とは、家庭裁判所が相続人に対して遺言の存在や内容を知らせることです。相続人の立ち会いの下、裁判官が遺言書を開封し、その場で内容を確認します。検認のプロセスがない場合、遺言書の偽造や変造が行われる可能性があるでしょう。
なお、公正証書遺言と法務局で保管される自筆証書遺言については、検認が不要です。
遺言書の内容に納得できない場合
特定の相続人に特定の財産を相続させる旨が遺言書に記されているのであれば、遺言書に基づいて分割するのが原則です。ただし、以下のような条件がそろっている場合は、遺産分割協議により相続割合が決定できます。
- 遺言で遺産分割協議が禁じられていない
- すべての相続人・受遺者(遺言により財産を受け取る人)の同意が得られている
- 遺言執行者が同意している
ポイントは、受遺者が納得するかどうかです。受遺者が財産の多くを取得するようなケースにおいて、「話し合いで決めていい」と合意するケースは少ないでしょう。
遺留分侵害額請求権とは
「愛人にすべての財産を相続する」など、公平性に欠けた内容の遺言が残された場合、被相続人の配偶者・子ども・直系尊属(父母・祖父母など)は、受遺者・受贈者(贈与を受けた人)に対して「遺留分侵害額請求権」が行使できます。
遺留分とは、法律により各相続人に確保されている最低限度の財産です。配偶者や子どもは、被相続人と生計を一にしているケースが多く、不公平な遺言のために生活のすべを失ってしまう可能性もあります。
対象者が遺留分侵害額請求をした場合、一定割合の財産を取得できます。
- 相続人が直系尊属のみ:法定相続分の1/3
- 上記以外:法定相続分の1/2
- 兄弟姉妹:請求権なし
請求の期限は「相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったとき」から1年間です。請求された側は、遺留分を相手に返還しなければなりません。
口頭や電話で請求することもできますが、相手に時効を主張される恐れもあるため、「配達証明付き内容証明郵便」で通知するのが望ましいでしょう。