工業を否定すれば、情報はあり得ない

たとえば明治期以来の「工業」を否定して「情報」を取り上げることは、「情報」が「工業」に支えられている側面を無視したと受け止められる危険性すらある。私はもっとこれらの連続性を重視しておきたい。

さらに「地上の星」は「捨身で研磨する人間」(同上:190)が必須であるといっても、作詞作曲の中島みゆきに聞いたところでその答えは出ないはずである。ここにはリーダーシップ論という科学的な一般化が可能な分野があるのだから、それを活用して、成功事例に登場したリーダーの分類整理を行いたい注6)。なぜなら、「捨身で研磨する人間」とは実行力に富むのか、統率力に優れているのか、このようなレベルにまで降りなければ、「地上」が見えにくいからである。

月尾が紹介した成功事例は、その土地的特性と文化、および集落独自の伝統的な社会関係に制約されていることが多く、必ずしも全国レベルでの汎用性に富むとは限らない。もちろんその地域の歴史と文化を基盤にした産業活動や地域創生でなければ、結局は長続きしないし、成功する見込みも乏しいが、「地域への愛着」や「世間の流行に追従しない」(同上:188)という総括だけでは理論的には不十分である。

地方創生の193の事例から

増田がいう「選択と集中」でも、どのような集合体(機関)を選択して集中させるかは明示的ではなく、いくつかの優良事例を示しただけであったが、何を起点とした地方創生を目指すかが明らかになれば、その成功例や失敗例の検討を通じて、面づくりの可能性が探究できる。

図2は竹本(2016)が集めた193事例を4通りの主体で整理したものである。内訳を見ると、自治体主導が32.1%、コミュニティが30.1%、公益法人が19.2%、ビジネス会社が18.7%になった。

政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑬:地方創生
(画像=図2 地方創生の主体
出典:竹本昌史『地方創生まちづくり大事典』国書刊行会、2016年
(注)四捨五入しているので、100%にはならない。、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

同じく竹本の193事例から図3が得られる。これは、地方創生の方向性問題に該当する。「農業・漁業」33事例(17.1%)、「産業・商業活動」54事例(28.0%)、「まちづくり・観光」55事例(28.5%)、「環境・エネルギー」19事例(9.8%)、「学校・教育・情報」32事例(16.6%)であると読み取れる。

細かく見れば「農業・漁業」と「産業・商業」間にも「まちづくり・観光」と「「学校・教育・情報」間などにも重複するところもあったが、内容を精査して私の判断で分類した。

政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑬:地方創生
(画像=図3 地方創生の主体と方向
出典:竹本昌史『地方創生まちづくり大事典』国書刊行会、2016年、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

ある地方創生プロジェクトで主体と方向が確定できれば、その先には、①誰が動くか、②どこと繋がるか、③どこまで拡げるかを判断しておきたい。すなわち、「活発な営み」を主体が「始める」、誰かが「動く」、どこかに「繋げる」、どこまで「拡げる」が地方創生を促す動きになる。