多彩なR(資源)

この段階から少し前に進むと、一般に成功した地方創生のR(資源)は多彩であり、農業・農村だけから得られているわけではないことが分かる。たとえば柳田國男がかつてのべた「生産町」は、もちろん米や麦や野菜や果樹などの農業生産物も含むが、それら農産物だけに限定されるわけでもない注5)。

今日的には第一次産業の農林水産商品を超えて、第二次産業に属すような数多くの製品の生産がある。さらに教育、金融、情報、医療、介護、福祉などのサービス分野を軸とする第三次産業もまた、各種サービスの生産に貢献するすべてが「しごと」を創り出す産業である。このような分類を用いると、サービス産業では生産と同時に消費がなされるので、大都市の都心に象徴的な「消費人」の姿が浮かんでくる。

2017年に長時間労働が全国的に顕在化した宅配業界では、流通業特有の再配達による労働強化を緩和する動きが普遍化した。全体としての貨物量の増加は避けがたいために、郵便局や宅配業界では、受付や仕分けの際の効率化が行われ、昼間の2時間は戸別配達をしないなどもすでに実行されている。

このような視点も、コミュニティ研究の一環として「まち、ひと、しごと」を包括する地方創生の理論化によっては有益である。

内発的発展には鉱業も寄与した

たとえば日本の産業化の歴史からも、金、銀、銅、石炭などの天然資源の鉱脈を掘り当てれば、そこに鉱業が始まり、採掘の労働者が集住し、かなりの人口集積が発生したことを知る。福岡県の筑豊地域や夕張市をはじまとする北海道の旧産炭地はその典型的な事例であり、佐渡金山や石見銀山や生野銀山など金山銀山の周辺でも類似の人口集散の歴史がある。

もちろん鉱脈が無くなったり、国内にかりに石炭鉱脈が残っていても、地下深度1㎞を超える立坑での採掘費用が割高になれば、外国産の天然資源(露天掘りの石炭、潤沢な石油、天然ガス)などによってそれはすべて駆逐される。

そうすれば、労働者が四散するので、その地域社会では急速な人口減少が発生する。日本の筑豊炭田や三池炭田さらには石狩炭田などの歴史はそれを雄弁に物語っている。それらの歴史からは、個別的な事例の解明とともに普遍的な総括を心がけたい。