「社会システム」か「ソーシャルキャピタル」か
「社会システム」か「ソーシャルキャピタル」かの使用も散見されるが、パーソンズの社会システム論の応用としてコミュニティ社会システムが流行った時期がある(Warren,1972)。
コミュニティを社会システムとして理解すると、生産・流通・消費、社会化、社会統制、社会参加、相互扶助の5機能が結びついた状態を想定することになる。ただしこの場合では、現在の「ソーシャルキャピタル」は社会参加と相互扶助に吸収されてしまう。
空間性
「空間性」では地理学に言う水平的な距離と境界線の問題になる注6)。どこまでの範囲をコミュニティとするかもまた長年議論されてきた。
一方で、「空間を超越している」とは、たとえば「精神の共同体」として教会や学界や企業などを媒介とした個人間の結びつきを表わすことが多い。あるいは企業や官庁などの組織における中央と地方の連携、すなわち「東京本社-地方中核都市支店-地方営業所-地区出張所」といったタテの系列を意味することもある。
コミュニティ概念の指標一覧
以上を踏まえて私は、実証的に使用する際の指標を組み合わせてきた(表3)。現代日本のコミュニティ論ではこれらの「二項対立」を点検して、自らのコミュニティ概念の位置づけをしておきたい。これだけの幅があれば、論者が異なると融通無碍の使用が可能になるからである。
たとえば既述したドラッカーは、「目標としての有効性」と「戦略としての現実性」の観点から、「社会統合」的な将来展望をコミュニティに込めて使用していることになる。また中谷ならば、「実態としての存在性」を強調したうえで、連帯性の「強」、「社会的凝集性」の「強」、「対面的接触性」の「濃」に思いを寄せて使っていることが分かる。斎藤ならば、実態としての存在性に加えて、「対面的接触性」の「濃」に依拠したコモン論の一部になる。