郵便局とコミュニティ
冒頭で紹介した『郵政民営化検証委員会報告書』では、コミュニティ論の関連で言えば、「地域の『暮らし』と『安全』を最前線で支える『見守り役』」が強調された(武井、2021:56)。また、少子高齢化社会への対応として同じく「見守りサービス」の意義が語られた。
さらに「地域活性化」の取り組みとして、郵便局がもつ「物流」、「送金・決済」、「物販代行」機能の総合化も主張されたうえで、生産者組合、企業、NPOなどとの組み合わせが模索された(立原、2021:76)。NPOなどとともに「地域活性化ビジネス」の可能性をコミュニティレベルで展開することは、地方創生の文脈にも沿っている。もちろん「環境Environment、社会Social、ガバナンスGovernance等を踏まえたESGの投資の遅れ」(同上:81)もあった。
一方、『JP総研Research』(vol.14 2021年6月)の「地方創生リレー対談」では、コミュニティレベルに論点が絞られて、移住支援の問題への協力、自治体からの住民サービス業務の委託、空き家問題調査の取り組み、自治体の商品券販売などが、郵便局への期待として具体的に語られている注7)。
地方創生の基礎理論としてのコミュニティ
地方創生「まち・ひと・しごと」では、過疎地域から政令指定都市までの違いを前提とした「地域ビジョン」の作成が重視されたが、「目標としての有効性 ⇔ 手段としての資源」のなかに該当するために、コミュニティの将来展望に直結する重要な課題になる。
日本農業では担い手の高齢化が進んでいる注8)。そのため、移住や交流を若者だけに期待するのではなく、定年退職者とのつながりも想定され始めた。各世代のノウハウ、技術、知識を地域活性化に結びつける核として、郵便局ネットワークにも出番があるという整理もある。
これらは10年前に行われた佐渡市長の講演会において、「郵便局は既に地域維持の柱に組み入れられている」(高野、2011:28)として、ア)行政による支えのシステム(出張行政サービス、情報伝達システムなどによる支援)、イ)一次産業協同組合等による生産支援システム(生産資材供給、生産品販売システムなど)、ウ)農協漁協金融窓口撤退後の金融支援システム(窓口補完業務)、の3点が郵便局に期待されていた(同上:29)。
いずれも「実態としての存在性」と「戦略としての現実性」に分類できる「コミュニティ」の使い方であり、その要に郵便局が位置づけられているのは変わらない。