コミュニティの三角形モデル
「関係」には社会関係と社会集団を含み、今日的にはソーシャルキャピタルと呼ばれる領域をカバーする。物財は社会システムの機能要件として位置づけられており、当時は生活要件ないしは社会的共通資本、あるいはかつて松下圭一が提唱したシビルミニマム(1971)を使った。また、コミュニティミニマムとして具体的な現状把握の過程で、当時流行していた社会指標作成やQOL研究の枠組みに吸収されて、そのまま学界共通の資産になった注5)。
意識は社会心理の延長上にあり、コミュニティ意識やコミュニティ精神と言われていた。鈴木はコミュニティ意識をディレクション(D)とレベル(L)に分け、コミュニティの方向性を表現するよう概念として「コミュニティノルム」、住民の意欲水準を表わす概念として「コミュニティモラール」を造語した(鈴木編、1978)。
この三角形モデルもまた意識面ではコミュニティノルムとコミュニティモラールを踏襲している。コミュニティの定義を通説とは変えて「社会的資源の加工によって生み出されるサービスの供給システム」(金子、1982:60)としたのは、コミュニティが単なる関係システムを超えて、福祉、介護支援、子育て支援、生活協力、共同防衛などニーズ充足の全体を引き受けているからである。
ここにいう社会関係では、鈴木が開発したインフォーマル関係とフォーマル関係の二極で具体的な分析を進め、物財面では社会指標論やQOLに接合する形でコミュニティの生活要件論をまとめた(金子、1993)。
コミュニティの四角形モデル
その後、地域活性化や内発的発展論そして一村一品運動をコミュニティ論に取り込んだために、コミュニティの四角形モデル(図2)に修正した。三角形にもう一つの極として行事(イベント)開催や祭りそれに一村一品運動などを付加したのである。ただし四角形モデルでも、コミュニティを「社会的資源の加工によって生み出されるサービスの供給システム」と定義したのは変わらない。
親しい人間関係を主軸として、そして共同学習、共同体験、共同防衛、生活協力などを通して、地方都市におけるコミュニティ性(community-ness)が実際に社会的機能として芽生えることを期待したのである。