本業を通した目標達成

高度産業社会における価値の筆頭は「業績性」(achievement)にあり、「社会にとってもっとも重要な資源は、成員の業績達成能力とコミットメント」(パーソンズ、1964=1985:320)になる。

会社が自社の従業員の「業績達成能力とコミットメント」を後回しにして、「副業・兼業」を推奨するのならば、会社における本業での「業績達成」はあきらめるしかない。なぜなら、「副業・兼業」に関心が高い従業員に、本業を行っている自社への「コミットメント」などまったく期待できないからである。

この部分の執筆者、「案」全体を認めた有識者会議、『新しい資本主義』として発表した政府は、日本の現状認識に大きな誤解があるのではないか。

GXへの投資

さて、GXはグリーン・トランスフォーメーションの略語として使われていて、歴代の政権が高唱してきた「気候変動問題」への対処全般を指している。この動向に私は、懐疑派(skeptic)として一貫した態度を堅持してきた。

『新しい資本主義案』でいわれる「気候変動問題は、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題である。2030年度46%削減、2050年カーボンニュートラルに向け、経済社会全体の大変革に取り組む」(同上:20)についても疑問を持っている。

なぜなら、図1で明らかなように、世界の二酸化炭素排出量の1位中国29.5%、3位インド6.9%、4位ロシア4.9%の国々並びに「その他」28.0%、インドネシア1.7%、メキシコ1.2%、ブラジル1.2%などを合計すると、70%以上の国が依然として二酸化炭素排出量削減にほとんど取り組んでいないからである。

政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑪:資本主義のバージョンアップ
(画像=図1 世界の二酸化炭素排出量(2019年)
(注)JCCCAのホームページより(閲覧日2022年6月30日)、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)