マイナンバーカードの「普及」モデル
オグバーンのこの理論を、『新しい資本主義案』で推進される筆頭に掲げられたDXに応用してみよう。
たとえば「デジタルヘルスの普及」「マイナンバーカードの普及」「中小企業等のDX」「医療のDX」「建築・都市のDX」をすべてイノベーションとすると、この普及には世代間、世代内、都市と農村の地域差、ジェンダー差などが確実に生じることが予見できる。
このうち政府が熱心なのは「マイナンバーカードの普及」のように思われるから、これを素材にした「イノベーション普及モデル」を活用してみよう。
総務省の「マイナンバーカード交付状況について」(2022年6月)によれば、全国的には44.7%の「交付率」=「普及率」であった。これは「人口総数に対する交付枚数率」であり、居住地を3種類に分けると、「政令指定都市」のそれは47.1%、「特別区と市」では44.5%、町村では40.4%の交付率になっていた。居住地の人口数が大きいほど{交付率}=「普及率」が高いという傾向がうかがえる。自治体の人口数に応じて、普及速度に差異が認められる。
60歳を境に男女の「普及率」が逆転する
表1では、年齢と男女別に組み合わせた。やや細かい分類であるが、全体を概観しておくと、男女別では男への「普及率」が若干高い。しかし、20-59歳までは男より女の方が一貫して「普及率」が高く、逆に60歳を過ぎると、男の「普及率」が女を上回ることがよく分かる。さらに40歳代では男女ともに「普及率」が低くなっている。
この説明にロジャースのイノベーションモデルを使ってみよう。その理由は、DXがデジタル化を意味していて、イノベーションの「普及」の典型例として活用できるからである。
ただし行政からすればDXの一環としての「マイナンバーカード交付」が課題となり、社会システムの成員から見るとDXは「マイナンバーカード普及」になる。そのため「マイナンバーカード」の「交付」と「普及」は互換的に使用する。