ネット銀行はネットで簡単に取引ができ便利だが、金融機関としての安全性は気になるところだろう。万が一、利用しているネット銀行が破綻してしまったらどうなるのだろうか?ネット銀行の格付けを中心に信頼できるネット銀行を紹介していこう。

目次
1.ネット銀行にもメガバンク同様の保証あり
2.ネット銀行の信用度は格付けを参考に
3.ネット銀行の格付け一覧
4.ネット銀行の格付けをみるときの注意点
5. ネット銀行選びに格付けを活用しよう

1.ネット銀行にもメガバンク同様の保証がある

ネット銀行は従来の銀行に比べて歴史が浅いため、信用リスクが気になる人もいるかもしれない。万が一ネット銀行が破綻してしまった場合、顧客の預金などの資産はどの程度守られるのだろうか。

ネット銀行もメガバンク同様に一定の資産は守られる

ネット銀行の預金はメガバンクや地方銀行など一般的な銀行と同様、金融機関が破たんした場合でもペイオフ(預金保険制度)という制度により一定額の資産は守られる。

具体的にはネット銀行1社につき、預けてある預金の元本1,000万円までと破綻日までの利息などが保護の対象だ。

ネット銀行が破綻すると守られない資産もある

一方でネット銀行が破綻した場合、守られない資産もある。それはペイオフの対象となっていない資産だ。つまり預金の元本1,000万円を超える部分だ。

もし預金2,000万円をネット銀行に預けており、そのネット銀行が破綻してしまった場合は、元本の1,000万円以外は戻ってこない可能性があるのだ。これはネット銀行に限らず、一般的な銀行も同様だ。

ネット銀行を利用するなら自己防衛や金融機関の選択が必要

自分の資産を守るためには、自己防衛することや、信用度の高いネット銀行を選ぶことが大切だ。

自己防衛としては多額の預金を預ける場合、複数の金融機関にペイオフの保護対象となる1,000万円ずつ分散して預けるといった対策が考えられる。

では、より信用度の高いネット銀行を選ぶにはどのように調べるのがいいのだろうか。

2,ネット銀行の信用度は格付けを参考にする

大切な資産を守るため、より信用度が高いネット銀行を見つけるには格付け機関が実施する企業の格付けを参考にするとよい。

格付けは企業や債券の信用リスクを判断するために行なわれており、ネット銀行に関しても複数の機関が独自の格付けを実施している。

これらの格付けを比較することでより安全なネット銀行を見つけられるはずだ。

ネット銀行の格付けを行う格付け機関

以下の3社は、比較的多くのネット銀行の格付けを実施している。

  • 日本格付研究所(CR)
  • スタンダード&プアーズ(S&P)
  • 格付投資情報センター(R&I)

    格付けの対象となるものはそれぞれCRが長期発行体格付け、S&Pが自国通貨建て長期格付け、R&Iが発行体格付けだ。

ネット銀行を格付けする3社の格付け方法

格付けを実施している3社の格付けの見方は以下の表の通りだ。表の格付け符号の意味は日本格付研究所の基準を掲載した。格付け機関によっては格付け符号の意味が異なるので注意してほしい。

3社の格付けの見方

各付符号 格付け符号の意味(格付け会社によって異なる)
AAA+ 債務履行の確実性が最も高い
AAA
AAA-
AA+ 債務履行の確実性は非常に高い
AA
AA-
A+ 債務履行の確実性は高い
A
A-
BBB+ 債務履行の確実性は認められるが、
上位等級に比べて、将来債務履行の
確実性が低下する可能性がある
BBB
BBB-
BB+ 債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとはいえない
BB
BB-
B+ 債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある
B
B-
CCC+ 現在においても不安な要素があり、債務不履行に陥る危険性がある
CCC
CCC-
※筆者作成

最上位の格付けがAAA+になり、以下AAA、AAA-と続く。上記の表はCCC-までの掲載だが、それ以下の格付けは今回は割愛する。

3.ネット銀行8社の格付け一覧

日本格付研究所(CR)とスタンダード&プアーズ(S&P)、格付投資情報センター(R&I)の3つの格付けを以下の通りまとめた。(2020年6月現在)

ネット銀行格付け一覧表

銀行名 CR S&P R&I
楽天銀行 A
イオン銀行 A-
ジャパンネット銀行 A+
住信SBIネット銀行 A
セブン銀行 A+ AA
ソニー銀行 AA- A
ローソン銀行 A
オリックス銀行 AA-
※筆者作成

ネット銀行の格付けで高い信用度を獲得しているのはセブン銀行

セブン銀行はR&Iの格付けでAA、S&Pの格付けでもA+と今回紹介したネット銀行のなかでも高い格付けを得ている。

セブン銀行といえばセブンイレブンの店舗内にあるATMのイメージが強いかもしれない。全国に約2万5,000台のATMを設置することでATM利用者を獲得してきた。

同社の収益の柱はこのATMから得られる手数料だ。セブン銀行のATMを他行の利用者が利用することで、提携金融機関からのATM手数料が支払われる。

セブン銀行ではこのような核となる収益があり、2019年3月期の決算も預金残高約4,346億円、純利益約132億円と安定した経営を行なっている。これもネット銀行のなかで高い格付けの要因になっている。

ソニー銀行やオリックス銀行もネット銀行の格付けで高評価

ソニー銀行はCRの格付けでAA-、オリックス銀行はR&Iの格付けでAA-をそれぞれ獲得している。

ソニー銀行はソニーが2001年に設立したネット銀行で、現在はソニー生命やソニー損保などのソニーフィナンシャルグループの企業だ。2002年にはネット銀行で初となる住宅ローンの取り扱いも開始するなど、先進的な取り組みをしてきた銀行でもある。

2019年3月期決算によると、預金残高は約2兆3,581億円あり、多くの預かり資産を有している。同年の純利益も約63億円と安定した経営を行なっていることが高評価の要因のようだ。

オリックス銀行はリースや不動産、金融事業などを手掛けるオリックスが保有するネット銀行だ。親会社のオリックスは球団を保有するなど知名度が高い。

オリックス銀行も安定した経営をしており、2019年3月期決算によると預金残高は1兆5,438億円と多くの預かり資産を保有している。純利益も約171億円と安定しており、これらが格付けの高評価の理由として考えられる。

ネット銀行はメガバンクと比べても遜色なし

このように一部のネット銀行はメガバンクと比べても格付けに遜色はない。以下は格付投資情報センター(R&I)の各メガバンクの格付けだ。(2020年6月現在)

  • 三菱UFJ銀行:AA-
  • みずほ銀行:AA-
  • 三井住友銀行:AA-

    メガバンク各社の格付けはAA-になっており、オリックス銀行やソニー銀行と同様の格付けがなされている。セブン銀行に関してはメガバンクの格付けに比べて一段上のAAを獲得している。

    つまり現在はメガバンクに比べてセブン銀行のほうが信用度は高いということだ。

ネット銀行は地銀よりも格付けが高い場合もある

全国には多くの地方銀行が存在する。今回紹介したネット銀行と地方銀行を比較しても大きな差はなく、むしろネット銀行のほうが地方銀行に比べて格付けが上回っているケースもある。

もちろん地方銀行のなかにはメガバンク同様の高い格付けを得ている銀行もある。一方でBBB+といった「債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて、将来債務履行の確実性が低下する可能性がある」とされる地方銀行もある。

4.ネット銀行の格付けを確認するときの3つの注意点

ネット銀行の格付けを確認するときには以下の3点に注意する必要がある。

注意点1……最新の格付けをチェックする

ネット銀行の格付けを調べるときはインターネットや雑誌など、人によってさまざまな方法を利用するだろう。そのときに必ず最新の格付けを調べることが大切だ。

インターネットの古い記事や雑誌には、その当時の格付けしか掲載されておらず、最新のネット銀行の信用度を知ることができない。

格付け機関は常にネット銀行の経営状況に合わせて格付けを更新しているので、最新の格付けで判断をすることを心掛けよう。

注意点2……格付けだけが全てではない

格付けはネット銀行の信用度を知るためには重要な指標になる。しかし各ネット銀行の良し悪しは格付けだけでは決められない。

格付けは企業や債券の信用リスクを判断するために行なわれており、ネット銀行の金利や手数料、そのほかのサービス全体の良し悪しを表すものではない。

ネット銀行の格付けはもちろん大切だが、総合的にチェックし評価することが大切だ。

注意点3……格付けにこだわり過ぎない

ネット銀行の破綻で自分の資産が失われるのを防ぐためにも格付けをしっかりと確認することは大事だが、格付けをそれほど重視しなくてもいい人もいる。

前述したが、ネット銀行での預金もペイオフの対象になっている。ネット銀行へ預ける預金が1,000万円未満であれば、万が一利用しているネット銀行が破綻しても元本と利息は確実に補償されるのだ。該当するなら、格付けだけにこだわり過ぎる必要はない。

5.ネット銀行選びに格付けを活用しよう

格付けはネット銀行の信用度を分かりやすく表している指標だ。自分の大切な資産を失わないためにも格付けの高いネット銀行を利用することが大事だ。ただし格付けはあくまでネット銀行の信用リスクを判断するためのものである。

ネット銀行を選ぶときは金利や手数料、サービスの質などに加えて格付けを確認することで総合的にネット銀行の良し悪しを判断することをおすすめする。

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文・右田創一朗(元証券マンのフリーライター)

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