「生きがい」は身体状況の関数

高齢者といえども男女間での違いは存在するから、社会構成員を男女ではなく、老若男女として認知するという基本に加えて、高齢者の研究では、調査票で自己申告された「身体状況」、すなわち健康性と非健康性あるいは要介護かどうかという区別が非常に重要である。

そして高齢者がどこに住んでいるか、それは都市部なのか過疎地域なのかという区分も現実的には大きな意味がある。なぜなら、居住コミュニティの規模に応じて、夕食宅配などの行政サービスの種類や量が異なるからである。

年齢、健康、コミュニティ

大都市に住んでいれば、医療、看護、介護のサービス資源が潤沢であるが、過疎地域ではそうはいかない。したがって、高齢者研究の際には、年齢(エイジ)による三つの区分(前期高齢者、後期高齢者、超後期高齢者)、性別(ジェンダー)による二つの区分、健康(ヘルス)かどうかという二つの区分、そして居住地が都市部か過疎地域かという二つの区分が必要になる。

それら最低限四種類の集合でデータを分析しないと、高齢者の「生きがい」と「生活の質」についての専門的な議論は難しくなる(金子、2013:114)。

高齢者の「生きがい」促進要因

まとめると高齢者の「生きがい」促進要因は図2のように整理できる。

すなわちこれまでの研究では、高齢者の生きがい要因は、家族との良好な関係、社会参加としての働くこと、外出すること、得意を持つ、運動散歩、趣味活動を行うこと、飲食する仲間が存在することなどによって強化されることが判明している。これらをすべて持つ事例は少ないが、半数ならばかなりな高齢者は持ちうるはずである。

政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑨:生きがいと役割
(画像=図2 高齢者の生きがい促進要因、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

また、社会学の役割理論の応用によって、「生活の質」維持に有効なライフスタイルとして、親や祖父母としての固定役割、夫や妻としての固定役割、町内会、老人クラブ、NPOなどでの地域役割が多くなる方が、サクセスフル・エイジングに結びつくことが解明されている注7)。