循環役割としての職場役割

さらに、親の世代は仕事での職場役割を優先して数十年間働く。職場役割は昇進とともに職業キャリアのなかでは拡大の一途をたどるが、退職とともに一気に消失する。そこからその人の「役割縮小」が始まるが、その人の職場役割は定年で消えても、その地位には他の誰かがついてその職責を担うから、職場内での地位=役割(営業課長や社会学教授)は切れることなく循環的に連続する。

定年後になると、子育てが終わり子どもや子ども夫婦と別居する高齢者も増える。すなわち、個人のライフコースでは、子どもの自立などで家族役割が最初に縮小を始め、次第に父や母ないしは祖父母としての家族役割が乏しくなる。

流動役割としての地域役割

残りは地域役割だが、これは家族制度や職業制度とは異なり、堅固な役割体系を持っていない。緩やかなので、個人がそれを強く求めるか、周囲がその特定の個人に無理にお願いするかによって獲得できる役割セットになる。

町内会長、自治会長、区長、班長などが居住地域のなかでの公的な地位とそこから導き出される役割であるが、もちろん地域に暮らす人々全員分には不足しているし、誰が担うかも流動的である。

ただし、地域社会で制度化された町内会長や班長などの役割を獲得して、その遂行を日常的に行うためには、輪番制の班長を除けば、個人による積極的な地域社会への関与を前提とする。性格的にこれになじめなければ、もう一つの個人的な「関心縁」づくりを行う。