役割は地位に伴う

ここにいう「地位とは、特定の諸個人が占める社会体系内の地位を意味し、役割とは、かかる地位に属する型式化された期待を行動的に演ずることを意味する」(同上:334)ものである。

権力構造の地位(たとえば首相)と集団関係における地位(たとえば会社社長)はもちろん異なる。階層的地位(たとえば大学総長)と地域の中での地位(たとえば市長)にも相違がある。そのために個人はいくつかの地位に伴う役割葛藤を経験することになる。

役割葛藤

たとえば会社の営業課長と父親としての役割葛藤の象徴は、職業を優先して日曜日の接待ゴルフを選ぶか、父親として子どもの運動会参観を優先するかの二者択一になる。

会社の課長は小学校での運動会ではたんなる生徒の保護者という地位であり、所得や資産の高低は必ずしもPTAの序列には連動しないのはいうまでもない。

役割縮小過程としての高齢期

このような役割論での高齢者は、それまで担ってきた役割が次第に失われる存在と見なせる。そのきっかけとして定年退職があり、職業に関連したすべての肩書が消えてしまう。

この「役割消失」を含み、全体として高齢者を「役割縮小過程にある」(金子、1995:108)と規定したことがある。前期高齢者や後期高齢者さらに要介護高齢者などのラべリングとは別に、「役割縮小」もまた「生きがい」論に応用可能なラべリングとなる注4)。