数値的目標が達成感を満たす
さらに目標内容は、可能なかぎり数値化したい。たとえば健康増進という目標でも、「心地よい」「頭がすっきりする」「元気になった」「目覚めが良い」「寝つきがよい」などの主観的指標でもいいが、「カラオケで2時間ずっと歌い続けられる」「連続して1日8000歩毎日歩ける」「200段の階段を休まずに登れる」「プールで30分泳げる」「1時間テニスができる」など、数字で表された客観的指標を使いたい。
そうすることで「行動変容」後の自己評価も客観性を帯びるからである。また、セルフモニタリングとしての行動記録もつけやすい。
目標が数値化されているから、短期的健康増進なら1日5000歩目標から開始できるし、1時間連続のカラオケ時間を目標として活動が始められる。すなわち、達成したい目標の修正が簡単なので、その活動が続けやすい。それがまた自己満足の評価につながる。行動変容により自らの努力への評価が高まれば、いわゆるエンパワーメント感が強まり、結果としては「維持期間」を長期化できる注6)。
自分へのご褒美も
そして、節目では心理学でいう「オペラント強化」を心がけておきたい。これには自分をほめるために、自分にご褒美を与えることであり、自発的に美味しいものを食べたり、気に入った洋服を買ったり、短期旅行をしたりすることが例示できる。
これはいわゆるオペラント・コンディショニングとして、賞罰によって自発的に行動を変える過程として周知され、自分に対しての信頼感や有能感であるセルフエフィカシーといわれることもある。
社会心理学の行動変容モデル
以上の議論を補完する成果もあげておこう。社会学に隣接する社会心理学ではかなり周知の「S→O→R」モデルがあり、様々な工夫が試みられている(ラービンジャー、1972=1975:48)。いうまでもなく、
S:stimulus(刺激)
O:organization(有機体)
R:response(反応)
であり、O(有機体)は人間を含む生物体と社会システム(組織・法人、集団、全体社会)の両者に適用できる。
いうなれば、人間という有機体に、周囲からの言葉や音や景観による情報、暴力などの物理的力、気象変化としての温度、気圧、風圧、湿度が作用することが「刺激」になる。
このメカニズムは社会システムとしての組織や集団や全体社会でも同じであり、外国の金融情勢の変化や政変、それに自然災害や開戦により株価が急変することも「刺激」の一例になる。人間も法人も全体社会も適切な「刺激」がなければ、基本的「対応」機能を日常的にも遂行できない。