知識伝達には複数のコミュニケーションルートが肝要

したがって、いちがいに緊急事態といっても、その国の社会システムの統合度によって対応策が変わってくることを、先行研究からの知識として把握しておきたい。

たとえ新型コロナウイルス感染予防のための知識を厚生労働省経由の官報で国民に知らせたり、マスコミのキャンペーンで周知しようとしても、粉末化した個人には届かない。なぜなら、粉末化した国民大衆間では一元的なコミュニケーションチャンネルがなく、そのルートもできないからである。

テレビや新聞とは無縁でも、インターネット環境には親しむ若者が増えた反面、時折訪ねてくる子どもや訪問看護やホームヘルパーだけとの会話しかない一人暮らし高齢者も多くなってきた。

マスコミ機能と対人伝達機能のいいとこ取り

そのような事情によりマスコミの力が肥大化した大衆社会では、新たな補助線として、個人が持つマスコミ接触量の多寡とソーシャルキャピタルとして保有する社会関係による情報伝達成果に目配りしておきたい。

繰り返すが、ここでは先行研究成果のうち、情報認知にはマスコミの機能、情報による態度変容力は対人伝達(パーソナル・コミュニケーション)に長所があるとまとめておく。

目標設定、達成行動、自己評価の総体としての行動変容

さらに細かな行動変容について、目標設定、達成行動、自己評価の3点から整理しておこう。

これには図1の「関心期」以降を具体化することになる。なぜなら、行動変容は明確な目標設定から始まるからである。しかもこの期間設定には、数カ月単位の短期目標と数年単位の長期目標の組み合わせが望ましい。

いきなり5年後の行動変容を目指すよりも、1か月後や3か月後、そして半年先に達成できる行動変容目標を積み上げていく方式が長続きして、成果も得やすい。