商店街でも間違って使われた

したがって、新型コロナウイルス感染予防でこの2年半強調されてきた「人と人の間隔」を2m空けることを、この言葉は意味するのではない。すでに掲示物として使っているスーパーや商店街も無数にあった(写真)。

政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑦:新型コロナ対策
(画像=写真 福岡市中央区新天町のソーシャル・ディスタンス掲示
撮影は金子(2020年5月)、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

その趣旨で使うのであれば、先行的な意味合いが「親しさの程度」を表すことを正しく明記したうえで、それとは違う空間的意味(フィジカル・ディスタンス)を込めていると注記しておくべきであろう注6)。

健康と医療の方向性

日本の社会学界では「社会と健康」を具体的に論じる研究者は非常に少ない。私もその一人であり、ギデンスの第8版テキスト(Giddens & Sutton,2017:442)でネットルトン(2013)の研究を利用してまとめられた表5を手掛かりにして、健康と医療の現代的方向性を垣間見ておこう。

表5では病院内外の専門家、患者の積極性、健康が持つ宗教性や精神力、医療的対応の多様な選択肢、伝統的治療と現代的セラピーなどが総合化されている。これは、左側の状態が、特定の医療行為によって右側の状態に変換されることを意味する。

政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑦:新型コロナ対策
(画像=表5 健康と医療の現代的変換の方向性
出典:Giddens,A.,and Sutton,P.W.,2017:442、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

たとえば、ある病気の患者として現在は病院にいるが、治療により健康状態に戻れば、自宅のある地域社会に帰れる。急性疾患には病院で集中治療が施され、その結果として状態が改善されれば、慢性疾患をもつものとして通院を前提とした在宅で暮らす。

患者の病気に対して医師による専門的な治療が済めば、その後は住民としての日常生活での予防に重点が置かれる。医師による患者への医療行為には、治療以外にも慢性疾患対応や予防なども存在する。