年金は社会保障費の半分程度を占める

これは2021年8月に社会保障・人口問題研究所から発表された社会保障費のデータであり、日本の社会保障費の動態がよく分かる。概略的には毎年の年金費用が全体の半分を占める。2015年は46.3%、2019年は44.7%だから、年金の占める割合は約半分の45%と記憶しておきたい。

その次は国民医療費であり、2019年が32.9%であり、現状は33%ぐらいだが高齢化に伴いまだ増加傾向を示している。残りは福祉その他で22%である。いずれの動向も右上がりなのは、一貫した高齢化の動向と並行しているからである。

2019年の年金総額は55兆円を超えた。金額は各自で違っていても、全国にいる高齢者3600万人がともかくもらえるという年金額の合計である。

医療費は社会保障費のうち3割を超える

年金と違って医療費はどの年代にも関係する。誰もが病気やけがをするから、医療費や薬剤費の支出につながる。ただし、多くの場合若い人は元気であり、病気も少ないから医療機関に診てもらわない。風邪をひいたときに医師に診察を受けなければ、医療保険は使われないが、代わりにドラッグストアで薬を買うと、薬剤費として医療費の内訳に取り込まれるという内訳になっている。

2019年度での薬剤費は全体の医療費の中で約10兆円であった。もちろん薬剤費だけではなく、心電図やレントゲンやさまざまな機器による検査費用なども全部医療費に入るので、医療費もまた伸びてきて、社会保障費全体の33%を占めるまでになった。

第三の「福祉その他」は1990年代までは金額的にも少なく、比率も低かったが、2000年から急に総額が増えてきた。これは2000年4月から介護保険制度が立ち上がったからである。「福祉その他」は当初4兆円ぐらいだったが、今では28兆円にまで伸びてきた。その内の10兆円程度が介護保険費であり、残りの約18兆円のうち4兆円が生活保護費である。