団塊世代の人口動態

なぜなら、人口動態こそが国政ないしは国勢を左右する筆頭要因だと考えるからである。団塊世代が誕生した1947年から1949年までの3年間での出生数合計は805.7万人であり、その人口圧力が高度成長期には経済エンジンを回転させる促進要因になった。

それから60年経過した2009年10月の生存者総数は664.4万人、67年後の2016年では639.4万人に減少した。還暦までに140万人が亡くなったのであり、2020年の国勢調査ではもっと減少して、団塊世代として608万人が生存していた。すなわち、70歳の誕生日を200万人もの団塊世代は迎えられなかったことになる。

しかし歴史的には、団塊世代の人口圧力は社会発展の促進要因だけではなく、逆に年金財政や医療費増加や介護負担の問題の大きな原因にもなってきた。図3は3分類(後半は4分類)された社会保障費の過去60年間の推移(%)である。

政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑤:少子化と社会保障
(画像=図3 社会保障給付費の推移
出典:国立社会保障・人口問題研究所編『令和元年年度 社会保障費用統計』(2021年8月)より金子がグラフ化した。「介護」は本来「福祉その他」に含まれるが、別途に再掲した。、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

日本の医療保険

医療保険制度は、日本では4通りに分かれていて、大企業従業員とその家族が「健康保険組合」、中小・零細企業従業員とその家族が「協会けんぽ」、公務員・教職員とその家族が「共済組合」、自営業・無職その他の家族が「国民健康保険」に分かれている。そして退職後はすべてが「国民健康保険」に加入する。その後75歳を超えると、「後期高齢者医療制度」に移ることになる。

日本の医療保険は、周知の国民皆保険や現物給付とフリーアクセスの特徴をもつ。このうちフリーアクセスとは場所を問わず、保険証1枚で患者が全国の医療機関を自由に選べることをいう。北海道民が沖縄旅行をした時に、ケガしたり体調が悪くなっても那覇市の医院で診療してもらえる。これをフリーアクセスとよぶ。

制度開始後の20年ほどは年金への支払いが少なかったから、社会保障費に占める医療費の割合が高かったが、高齢化率が上昇して1985年以降になると、年金支給が占める比率が医療保険支出を完全に上回って、2020年に至っている。