国民皆年金
その拠出制の国民皆年金制度は1961年から開始された。昭和開催の東京オリンピックの3年前である。
現代日本の国民年金制度は、国民が保険料を納めて将来年金を受け取る仕組である「拠出制年金制度」を採用している。日本国内に住む満20歳以上60歳未満の者は全て国民年金に加入し、保険料を納めなければならない。保険料を一定期間以上納めないと、年金を受給することができない。
図3で分かるように、社会保障費全体ではしばらく医療費の比率が高かったが、高齢化率の上昇により年金、医療費、福祉その他という序列が固定した。そして、2000年4月からの介護保険制度導入以降は、介護が第4の柱として定着した。
この連載では社会保障の領域を高齢化と少子化関連の2点に絞り、日本における年金、医療費、福祉その他の実態、現状、課題などを軸としてまとめる。
この三本柱の中で少子化を念頭にした「次世代育成」を考えて、最終的な福祉社会の問題、背景、現状分析、処方箋を描いてみたい。いずれからも、「世代内共生」と「世代間共生」の必然性が読み取れるであろう。
機能別社会保障給付費
年金、医療費、介護保険、子育て家族支援、生活保護など日常的に私たちの生活を支えている各種の制度の費用総額の推移が図3で示した社会保障給付費の推移である。そして社会保障の内訳が表2であり、社会保障費の46%余りの年金総額全てと介護その他が「高齢」に割り当てられ、合計で55兆円に達している。
2019年度の主だった項目では、「高齢」が57兆8347億円、「保健医療」が39兆815億円、「家族」が9兆1908億円、「生活保護その他」が3兆4703億円になる。
医療費は総人口の29%に近い高齢者が常に半分程度を使うが、医療費の対象はゼロ歳から100歳までなのであり、年間合計で39兆円になっている。年金と医療費で約8割を占めており、残りは少子化に係る子ども手当などの家族に8.5兆円前後、生活保護費に3.5兆円程度が使われてきた。