在宅死
では、日本人はどこで死ぬのか。図3から1952年以降一貫して病院死亡者は増え続けていたのに、2005年に初めてブレーキがかかり、減少に転じたことが分かる。統計をとりはじめた1951年から一貫して伸びてきた病院死が頭打ちになり、2011年ではわずかではあるが、その比率が低下して今日に至っている。

(画像=図3 在宅死と病院死
出典:嶋田 一郎「日本では8割が病院死」2019.8.15(幻冬舎GOLD ONLINE)
(注)厚生労働省「人口動態統計」(2016年)を基に作成、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
出典:嶋田 一郎「日本では8割が病院死」2019.8.15(幻冬舎GOLD ONLINE)
(注)厚生労働省「人口動態統計」(2016年)を基に作成、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
これには2000年4月の介護保険制度の発足で特別養護老人ホームやグループホーム、老健施設、有料老人ホームの整備が進み、そこに入所する高齢者が多くなったことも要因として挙げられる。
換言すれば、病院死の減少の代わりにそれらの施設での死が増えてきたからであり、実際に2005年から診療所2.5%、老人ホームが1.5%、老健施設が1%程度占めてきており、その合計の死亡率は9%まで上昇した。それが病院死の減少分にほぼ相当する。
反面で、在宅死は依然として横ばいの状態にある。在宅死は厚生労働省が狙う後期高齢者医療費削減の手段にもなっている。
なぜなら、病院死や施設での死亡は、その直前の終末医療のために社会的医療費の増加になりやすいが、在宅死であれば外来か往診か訪問看護になり、患者および家族の負担が増えるからである。
単身者の在宅死には家族以外の支援も必要
仮に末期の患者を日常的に支えるのが家族ではないとすると、週に数回の訪問で1回が2時間程度のヘルパーだけでは不十分になるから、家政婦などの家族以外の支援者を雇用するしかない。
ちなみに24時間泊りの家政婦への支払いは1日で15000円程度にはなるので、月額では45万円の実費負担が求められる。
この費用は国民健康保険などの医療保険からも介護保険からも支払われないので、社会的費用としては発生しなくて、患者個人かもしくはその家族の負担として計上される。