日本人口の実態と推計
図2によれば、2010年をはさんで1950年の8400万人と2065年の8800万人間に、人口総数が接近することが分かる。しかし、その内訳は真逆に近い。
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出典:内閣府『少子化社会対策白書2021』2021年、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
なぜなら年少人口率が1950年の35.4%に対して2065年は10.2%になるからである。もちろん高齢化率もまた1950年の4.9%に対して2065年のそれは38.4%となるからでもある。そうすると、生産年齢人口は1950年で59.6%、2065年では51.4%となるが、既述したように、生産年齢の幅が1950年では「15歳~64歳」であっても、2065年では「20歳~69歳」になっているから、同じレベルでの比較は難しくなる。
いずれにしても年少人口の割合が35%から10%まで激減し、高齢化率が5%から38%まで激増する時代の設計を政治家は今からきちんと行い、かつ実行するためのプログラム作成時期を迎えているということになる。
乳児死亡率の激減
このような人口構造の変化のうち、高齢化率を高め、平均寿命を押し上げた原動力に「乳児死亡率」の劇的低下があることはあまり知られていない。
日本の調査結果で最古のデータは1899年の「乳幼児死亡率」153.8‰(千分率)であり、2020年のそれは1.8‰であった。すなわち今日では、赤ちゃんが1000人産まれて、1歳の誕生日を迎えられない子が2人弱ということになる。これは日本社会が世界に誇れる偉大な成果である(表5)。
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出典:厚生労働省「人口動態統計」各年版
(注)千分率(‰)、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
19世紀末ではなく太平洋戦争後の1955年の「乳児死亡率」と比較しても、まさしくその値は劇的な減少といえる。
医学の研究成果とともに、高額医療機器の普及、薬学の発展、国民皆保険制度の効果、国民の栄養の向上と知識の普及、公衆衛生学の成果に基づく生活衛生環境の向上、保健学などの研究成果と国民への知識の浸透、住宅事情の好転、インフラのうち上下水道の完備による公衆衛生水準向上などの総合的成果であり、これは産業化による経済成長がもたらす代表的なプラス効果といってよく、正しい評価をしておきたい。