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3代目 Z31型は円高で高級スポーツ路線に
4代目 Z32型は280馬力規制を作った重厚なラグジュアリースポーツ
3代目 Z31型は円高で高級スポーツ路線に
3代目のZ31型(1983年~1989年)はヘッドライトが丸目からリトラクタブル変形の「パラレルライズアップヘッドランプ」に代わり、見た目が大きく変わりました。これにより空力性能を向上させました。ボディサイズは全体的に少しだけ大きくなり、全長4,535mm×全幅1,725mm×全高1,310mmとなっています。
一方メカニズム的には大きな変化があり、搭載エンジンが直6のL系からV6エンジンのVGに切り替わり、2リッターターボ、または3リッターターボの高級かつ高性能路線に転じました。最高出力は195PSと先代のS130から大きくパワーアップしています。
またZ31型が登場した頃は経済が大きく動いた時代でした。折りしも、デビュー2年後の1985年にはプラザ合意によって1年で1ドル=235円から150円へと急激な円高が始まります。
それまでの「安くて実用性の高いスポーツカー」という、北米でのフェアレディZの評価は一変する事になりますが、Z31型は円高で日本車の高価格化が進む前に高性能化を進めていたため、以後は付加価値の高いラグジュアリースポーツとして、ポルシェ924などがライバルになっていきます。
国内では後に直列6気筒エンジンのDOHC 2リッターターボのRB20DET搭載モデルが追加されました。そのおかげで、RB26DETTに換装したチューニングカーなども現れはしましたが、歴代モデルの中では今ひとつ人気の出なかったモデルでもあります。
Z31型は時代の影響を大きく受け、大排気量高出力化の方向へと進んだフェアレディZの一つの転機となったモデルだと言えるでしょう。
4代目 Z32型は280馬力規制を作った重厚なラグジュアリースポーツ
1989年、R32GT-Rに先駆けて280馬力を発生した3リッターV6DOHCツインターボ「VG30DETT」を搭載した4代目Z32(1989年~2000年)が登場します。
重量は1,430kg~1,570kgとさらに重たくなっており、先代のZ31から舵を切ったコンセプトとなり、どんどんとハイパワーなモデルらしく進化しています。全長4,525mm×全幅1,800mm×全高1,255mmと先代のZ32からは車幅が大きく増え、全高は低くなっています。
当時の日産は「1990年代までに技術の世界一を目指す」とした、「901運動」の下に自動車開発を行っていました。Z32は280馬力規制のきっかけとなったハイパワーと、独自の4WSであるスーパーHICASも駆使した優れたハンドリングを実現し、「901運動」が色濃く反映されたモデルでした。
そんなZ32ですが、レースで活躍する事を目的としたスカイラインGT-Rとは違い、重厚なラグジュアリースポーツとしてモータースポーツのイメージから一歩遠い位置にありました。
米国ではIMSAやデイトナ24時間レースに出場して好成績を残し、日本のGT選手権にもほぼそのままのワイド&ローの姿で登場した事もありましたが、スカイラインGT-Rがレース活動をしていた日本では、スポーティな印象が薄いままとなりました。
またZ32は32、33、34と進化していったスカイラインGT-Rとは対照的に、バブル崩壊の影響もあり極度の販売不振に陥った日産の中で半ば放置されたようになります。Z32の販売期間は約11年とロングセラーなモデルとはなりましたが、日産がルノー傘下に入った翌2000年に後継モデルが無いまま生産終了し、フェアレディZは一度その歴史を閉じます。