孫正義氏率いるソフトバンクグループ(SBG)の株価下落が止まらない。2021年2〜4月 は1万円を超えたこともあったが、今や5,000円前後と半値まで落ちた。なぜSBGの株価はここまで下落したのだろうか。

そもそも「ソフトバンクグループ」はどんな会社?

ソフトバンクグループは、通信会社であるソフトバンクを傘下に持つ持株会社だ。会長兼社長を務めるのはソフトバンクの創業者である孫正義氏で、孫氏はソフトバンクグループを「投資会社」と位置付け、世界の有望ベンチャー企業に投資を行っている。

ソフトバンクグループが投資会社を謳っていることもあり、株式投資家からの評価は同社の投資の成果に連動する。

ソフトバンクグループが投資に成功すれば、多くの株式投資家が同社の株式を買うため株価が上がりやすく、投資に失敗すると多くの株式投資家が同社の株式を売るため、株価は下がりやすい。

ここまで読んで気付いたと思うが、現在ソフトバンクグループの株価が下落しているのは、同社が保有する株式の価値が下落しているからだ。同社の保有株式の価値がどれくらい下がったのか、詳しく見てみよう。

SBGの時価純資産の下落が株価下落を招いた

前述のとおり、ソフトバンクグループの株価のピークは2021年2〜4月だ。2021年3月末時点の時価純資産(NAV)は約26兆1,000億円で、中国のアリババグループの株式の評価益が全体の43%を占めていた。

結論からいえば、アリババグループの株価が大きく下がったことが、ソフトバンクグループの株価下落を招いた。アリババグループの株価は、2021年3月に200香港ドル台前半で推移していたが、現在は100香港ドル前後まで下落している。

株式投資家が時価純資産の半分近くを占めるアリババグループの株価が大幅に下落したことを嫌気したため、ソフトバンクグループの株価も下落した。

以下のグラフは、アリババグループの株価(青線)とソフトバンクグループの株価(黄線)の推移だ。相関性が極めて高いことがわかるだろう。

ソフトバンクグループの株価下落が止まらない...一体なぜ?
(出典:Trading View)

保有している上場株式の価値が軒並み減少

ソフトバンクグループが保有するアリババ以外の上場株の下落も向かい風となっている。

ソフトバンクグループは「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)という投資ファンドなどを通じ、さまざまな上場企業の株式を保有している。2021年3月末時点では、特に以下の企業の時価総額が大きかった。

<2021年3月末時点の時価総額>
上場企業名 時価総額
Coupang 3兆1,041億円
Uber 1兆3,367億円
DoorDash 9,142億円
Beike 6,594億円
Guardant Health 3,188億円
Auto1 2,547億円
Opendoor 1,727億円
出典:ソフトバンクグループIR資料

この1年で、これらがどのくらい下落したのか見てみよう。時価総額が大きかった上場株式が、軒並み大幅に下落していることがわかる。

<この1年の騰落率>
上場企業名 1年前の株価 現在の株価 騰落率
Coupang 44.86ドル 18.85ドル ▲57.98%
Uber 55.69ドル 31.98ドル ▲42.57%
DoorDash 135.91ドル 107.10ドル ▲21.20%
Beike 64.44ドル 12.15ドル ▲81.15%
Guardant Health 146.87ドル 57.69ドル ▲60.72%
Auto1 48.50ユーロ 10.89ユーロ ▲77.55%
Opendoor 27.9ドル 8.16ドル ▲70.75%
※2021年3月20日時点の株価と2022年3月20日時点の株価を比較して騰落率を算出

投資の世界は「結果がすべて」

ただし、ソフトバンクグループが株式を保有している企業は、業績不振によって株価が下落したわけではない。

例えばアリババグループは、中国政府が同社に対する締め付けを強化したことなどによって株価が下落した。アメリカ市場に上場している企業に関しては、2021年末から現在にかけてアメリカ市場全体が下落基調だったことが影響している。

しかし、投資の世界は「結果がすべて」だ。孫氏の投資判断に問題がなかったとしても、株式投資家は結果だけを見て評価を下す。そのため、ソフトバンクグループの株価はここまで下落したのだ。

ソフトバンクグループの株価が1万円台まで回復するのはいつになるのか、引き続き同社の株価に注目したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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