JT、キユーピー、ホンダ、京セラ……。2021年、有名企業の工場閉鎖の発表が相次いでいる。新型コロナウイルスの影響だろうか。各社の工場閉鎖の理由に迫る。
有名企業の工場閉鎖の発表が相次ぐ
冒頭に挙げた4社だけではなく、半導体大手のルネサスエレクトロニクスや化学大手の旭化成、自動車部品製造の田中精密工業も2021年に入って自社工場の閉鎖を発表している。これら7社が閉鎖する予定の工場と閉鎖予定時期は以下のとおりだ。
<7社が発表した工場の閉鎖予定>
企業名 | 工場名 | 閉鎖予定 | 概要 |
---|---|---|---|
キユーピー | 挙母工場 (愛知県豊田市) |
2023年目途 | マヨネーズなどを製造 |
ホンダ | パワートレインユニット製造部 (栃木県真岡市) |
2025年中 | 四輪車のエンジン 部品などを製造 |
JT | 九州工場 (福岡県筑紫野市) |
2022年3月末 | セブンスターなどの 紙巻きタバコを生産 |
ルネサス エレクトロニクス |
山口工場 (山口県宇部市) |
2022年6月末 | 半導体マイコンなどを製造 |
旭化成 | 和歌山工場 (和歌山県御坊市) |
2022年4月末 | アクリルラテックスなどを製造 |
京セラ | 新潟新発田工場 (新潟県新発田市) |
2022年3月目途 | 通信機器に使う 基板などを製造 |
田中精密工業 | 滑川工場 (富山県滑川市) |
2021年内 | 変速機の部品を製造 |
7社の業種はさまざまで、もちろん製造・生産しているものも異なるが、それぞれの工場を閉鎖する理由は何だろうか。
キユーピー
キユーピーが愛知県豊田市の挙母工場の閉鎖を決めたのは、工場の老朽化が進んでいたからだ。挙母工場は現在稼働しているキユーピーの工場としては最も古く、2021年7月26日の報道発表では維持コストの面で課題があったことにも触れている。
挙母工場では、マヨネーズやドレッシング、ゆで卵などのタマゴ素材品のほか、多品種少量生産の商品などを生産していたが、いずれも別の工場に移管して生産効率を高めていくという。ちなみに、近年のキユーピーの売上高と営業利益は右肩下がりだ。
ホンダ
ホンダが2025年に閉鎖するのは、同社が「パワートレインユニット製造部」と呼ぶ栃木県真岡市の工場だ。四輪車向けのエンジン部品を生産していたが、自動車の電動化の流れの中で、エンジン部品の需要の縮小が見込まれることが理由だ。
かつてホンダは生産能力の拡大を進めていたが、現在は海外拠点も含めて生産能力を縮小している。近年、ホンダは売上高と営業利益が減少している。
JT
日本たばこ産業(JT)は、2022年3月末に九州工場を閉鎖する。たばこの需要が減っていることを受けて、全国にある4つの工場の中で生産能力が最も小さい九州工場を閉鎖することにしたという。
JTは、2022年3月末にたばこのフィルターを生産している福岡県田川市の田川工場も閉鎖するという。同工場は、子会社の日本フィルター工業が操業している。近年のJTの売上収益は横ばいだが、営業利益は右肩下がりだ。
工場閉鎖の主な理由は?
いずれも新型コロナウイルスは無関係で、理由は別にある。理由を大別すると2つ。工場の老朽化、そして市場の変化だ。
理由1:工場の老朽化
日本では1950〜1970年代の高度経済成長期に製造業が大きく発展し、この時期に設立され現在も稼働している工場は少なくない。しかし操業開始から時間が経つと、工場の経年劣化は避けられない。
キユーピーが閉鎖する挙母工場は1958年に設立され、操業開始からすでに60年以上が経過している。日本では、今後も老朽化を理由とする工場閉鎖が相次ぐだろう。
理由2:市場の変化
自動車業界には、電動化の波が押し寄せている。現在主流のガソリン車は減り、環境に配慮したEV(電気自動車)が普及するだろう。このような市場の変化によって、ホンダの栃木県真岡市の工場も閉鎖に至ったのだ。
JTの田川工場閉鎖の背景も、たばこ市場の縮小だ。市場の変化や消費者のニーズの移り変わりによる工場の閉鎖は、企業によっては避けられないだろう。
日本の製造は今後どうなっていくのか?
工場閉鎖のニュースはネガティブに捉えられがちだが、民間企業にとって「選択と集中」は必要不可欠であり、工場閉鎖の発表が相次いでいることを日本の製造業の暗い未来に結び付けるのは早計だ。
しかし、近年は中国の台頭や世界的なデジタル化の波によって、日本の製造業が厳しい状況に置かれていることも事実だ。その中で、業績不振もしくは経営破綻による工場閉鎖が増える可能性もある。
大切なのは、工場が閉鎖されることではなく「なぜ閉鎖されるか」だ。その理由に着目すれば、日本の製造業の現状が見えてくるはずだ。
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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