さらに、記事にはこんなコメントもあった。ジョンソン首相の発言を受けての解説で、欧米が緊張をあおっている実態を記者も、そして多分ジョンソン首相も認識していたための記述であろう。

ウクライナ情勢を巡り「米国とNATOが緊張をあおっている」と主張するロシアをけん制する発言とみられる。

以上の流れからも、また歴史的な経緯や地政学的状況から見ても、ロシアの意図はあきらか。NATOを安全保障上の脅威と捉える中、東欧は仕方がないが、ウクライナとベラルーシの二か国だけは軍事的に中立にしておきたい、というものだ。NATOがアメリカのコントロール下にある現状において、プーチン大統領の発言で一貫しているのは、ロシアの安全保障の担保である。

3月3日の朝刊文化面に7段抜きで、近現代ロシア史専門の池田嘉郎・東京大准教授への聞き書きが掲載されていた。

ウクライナはロシアにとって特別の存在でもある。プーチン氏と支持者にとって、ウクライナは決して独立した存在ではない。ロシアを人間の身体に例えれば、切り離すと生命にかかわる大切な一部だという肌感覚を持っている。それがソ連崩壊の過程で1991年に分離してしまったのだ。ソ連は最終的にウクライナが連邦からの離脱を決めることで息の根を止められた。「まさに身を切られるような思いを30年もガマンしてきたのに、だれも我々の言うことを聞いてくれない」。ウクライナを巡るプーチン氏らの思いは一方的な被害者意識と言っていいが、本人たちは本気だ。