3.前世紀的リアル・ポリティークを生きるロシアと中国

軍事侵攻というロシアのやり方は断固非難されるべきものだが、ロシアの主張自体に理がないわけではない。地図を見れば、ロシアが自国の国境にNATO加盟国がいてほしくないと思うのは不思議ではない。米国だってメキシコが中国の同盟国になるとなれば必死に阻止しようとするのではないだろうか。実際、2008年にジョージアとウクライナがNATO加盟を希望した際に、独仏はロシアを刺激しすぎることを正しく懸念して両国のNATO加盟に反対した。結局、ネオコン時代の米国が積極的で、「NATO加盟の希望に留意する」といったノートでお茶を濁し、その結果、ウクライナはNATOとの協力関係を深めることになった。

2014年のウクライナ侵攻の後に著名なリアリズムの国際政治学者ジョン・ミアシャイマーは、ロシアの安全保障上の懸念は正当なものであり、クリミア危機はクリミアにNATOの海軍基地がおかれることを恐れて侵攻したものであり、NATOの東方拡大を停止しなかった米国やNATO側に責任があると論じている。大国というのは、本質的に自国に近接する場所に潜在的脅威があるかどうかについて敏感なものである。これは、地政学のイロハであるとまで言っている。また、あのジョージ・ケナンも早くも1998年の段階で「NATO拡大はロシアとの紛争を招く。悲劇的な過ちだ」と述べている。国際政治の本質はリアリズムだ。

また、ロシアはセルビアによるコソボ人の虐殺を根拠に欧米は軍事介入してコソボを独立させたではないか。それと今回ロシアがやっていることはどう違うというのか、ダブル・スタンダードはやめてくれという主張を行うだろう。

日本だって朝鮮半島の南側に敵対勢力がいないことを歴史的に安全保障政策としてきたわけだし、だからこそ日清戦争も日露戦争も朝鮮「独立」のために戦い、最後はふらふらする朝鮮王朝が信用できなくて韓国併合を行うに至った。ロシアがやっているのも同様の発想だ。但し、それを軍事的に解決しようとするのは前世紀的やり方であり、到底許されるものではない。