7. 5Gのデメリットや懸念点も理解しよう!その対策にも注目!
5Gのサービス提供には、日本国内外でさまざまな意見が飛び交っています。ここでは、実際の運用で懸念されている点や5G通信のデメリットを紹介します。5Gは私たちの生活をいい方向へ変化させる華々しい面が頻繁に取り上げられますが、光あるところに影あり、といったところなので、影の部分についても理解しておきましょう。
5Gの提供エリアの地域格差や5G通信中にあるプライバシーリスクといった課題があると言われています。
まずは5G提供エリアの拡大スピードにおける「地域格差」についてみていきましょう。前章でお話した通り、国は5Gの提供範囲を「エリアカバー率」で管理しているものの、通信事業者側も5Gを利用しうる人口が多い都市部から導入を進めていく方が合理的であるため、どうしても地域によって導入スピードには差が出てきます。人口密度の高い地域に基準を揃えたサービス提供が進んでいくことで、地域格差が顕著に現れてしまうことは、日本の課題である地方の過疎化や、それに対する地方創生の取り組みに対してマイナスの影響をもたらす可能性があります。
ただし、この課題への対応策も合わせて検討されています。「ローカル5G」という企業や自治体で5Gを独自に導入できる制度と、地方創生と社会課題解決に繋がる場合には税制が優遇されるという施策です。
ローカル5Gとは、特定の建物やエリアにおいて誰でも通信事業者(5G通信の提供側)になれるシステムです。これによって地方にスマートシティを作ったり、伝統芸能の鑑賞やスポーツ観戦の場にローカル5Gを導入し、オンラインとオフラインを融合させたエンタメ作りも可能となります。既にこのローカル5G導入への申し込みは多数あることが報告されており、大手通信事業者の5G導入が追いつかないエリアでも、スポット的に5Gの利用が進むことが期待されています。ローカル5G導入にかかるコストについては、地方の課題解決や地方創生に繋がるため、優遇税制が取られることも決まっています。このような強力な施策によって地方でも5G通信が素早く展開されていく可能性が高まっているので、今後の動向に注目し、課題となっている地域格差の改善や地方創生に目を向けることも重要になりそうです。
次に指摘されているのが、通信にとって最も重要な「プライバシーリスク」です。5Gになると、通信やセンサによって個人を自動認証するサービスが加速します。それに伴うプライバシーリスクの高まりは認識しておきましょう。
個人の自動認証の代表例としては、既にアメリカで運用されているAmazonの無人店舗や、個人にマッチした街頭広告、タッチレス決済などです。個人情報や個人の特定できるもの、そこまでに至らないものの体や目の動きなどの「パーソナルデータのやりとり」が、ユーザと事業者の間で高頻度で行われることになります。
5Gになり通信の信頼性は上がっているものの、情報漏洩の可能性は0ではなく、高頻度で通信が行われれば確率論的にも、プライバシーが危険に晒される可能性が高まるので、個人情報の認証範囲やそれに対する法規制には注目しておく必要がありそうです。
このように、通信事業者も認知している5Gのデメリットは存在します。私たちの生活を支えるモバイル通信のデメリットは、ユーザである私たち自身もしっかりと理解していく必要があります。また、明確化されている課題に対して、通信事業者がどのように対策を講じていくかも、今後5Gが普及していく中では注目です。
8. 人工衛星は5G時代を支える最も重要な存在の一つに
5Gで変革していく時代は、人工衛星から提供されるインターネット通信や衛星データが大きな貢献をしていくことが想定されています。ここでは、宇宙ビジネスと5Gの相性の良さを、具体的なサービス例をあげて紹介します。
人工衛星が提供するインターネット通信と5Gは、「通信可能場所」と「環境」の2点で互いの弱点を支え合う関係性にあります。5G通信では、基地局などの通信設備が必要ですが、人工衛星による通信では、簡単なアンテナで通信が可能になります。この手軽さでエリアを選ばず通信ができることに加え、災害など地上での状況変化に関わらずインターネット通信が可能になることから、IoT/5G時代に人工衛星が果たす役割は大きいと考えられています。
具体的に見てみましょう。近年宇宙ビジネスでは、低軌道に配置した人工衛星を利用したインターネット接続サービスを展開する動きに注目が集まっています。最も有名なのが、再利用ロケットの打ち上げや、創設者のイーロン・マスクの存在などで有名なSpaceXが提供する、Starlink(スターリンク)プロジェクトです。

Starlinkに関する細かい解説は宙畑の別の記事に譲りますが、簡単に言えば宇宙空間に12,000機の人工衛星を打ち上げ、下り通信で10 Gbpsと5Gに匹敵する速度を実現するプロジェクトです。受信には専用のアンテナが必要ですが、それさえあれば地球全体を人工衛星で覆うため、陸海空と地球上のどこにでもインターネットに接続することができます。
このような通信が可能になった理由は、割り振られた通信帯域が24 GHzと5Gのミリ波帯の26 GHzと同等の高周波数であること、そして遮蔽物がない空からの通信のため電波が減衰しにくいことが要因として挙げられます。
同様に宇宙からインターネット通信を届けようとする企業が、世界中で台頭してきているので、今後のインターネット通信市場には注目が集まっています。
5Gは基地局に依存して超高速のモバイル通信を提供するため、基地局がないところではその性能を発揮することができません。日本国内でもエリアカバー率は50%以上が必須条件にはなっていますが、これでは山奥や海上では通信ができません。一方で人工衛星から提供されるインターネットは、専用アンテナを持っていれば場所を選びません。5Gで通信ができない山奥や海上などの場所は人工衛星による通信でカバーする、このような相性のいい組み合わせが、5G時代に宇宙ビジネスに注目を集める要因になっています。
災害等で基地局も使えなくなり通信が不可能になることも想定されます。このようなタイミングであっても、人工衛星からのインターネット通信がアンテナ一つで可能になります。相互に状況確認できるようになるため、被災側も救助側も同時にメリットを受けられます。
しかし「5Gが繋がらなくなったから衛星通信に切り替えよう!」という動作も手間がかかります。さらに、アンテナを利用するなど複数のデバイスを必要とします。この課題を解決するサービスも既に提案されており、アメリカのLockheed MartinとOmnispace(オムニスペース)が共同で進めている事業で、複数のデバイスを必要とせず、ユーザが衛星通信と地上のネットワークをシームレスに移行できるようするものです。最終的には、どこでも使える低遅延のネットワークをエンドユーザに提供することを目標に掲げています。
このようなインターネット接続の面だけでなく、人工衛星の開発が進むことで衛星データのバリエーションやボリュームが増えていき、これらの利用が加速する面にも注目が集まっています。
5G時代は多種多様なセンサによって集積されたデータが集約・可視化されてくるため、これまで見えてこなかった社会のさまざまな課題への対処が可能になることが期待されます。地上で取れるデータの種類と量が増えるだけでなく、宇宙からの俯瞰のデータが増加していくことも期待されています。宇宙開発を中心とした宇宙ビジネスの分野は、急成長しています。特に人工衛星の数は急増の傾向にあり、そこから提供される地球を見下ろすデータが増加していくことは明らかです。人工衛星が観測できる地上の画像データ、GPSなどの宇宙からの測位データなど、その種類も多岐に渡ります。
人工衛星データの活用例として予想されるのは、農業分野における植生状況の分析や収穫量の予測であったり、小売・流通業では商圏の分析や流通経路の把握などが挙げられます。これらに、5Gの普及によって得られる多種多様なデータを組み合わせることで、さまざまな課題の解決が見込まれます。この面から見ても、宇宙ビジネスからは目が話せません!