仕事でも私生活でも、生活になくてはならないものとなったスマートフォンの通信が「5G」という新たな局面を迎えます。しかし、「4Gと何が違うのか」「何がそんなにすごいのか」「メリット・デメリットって何?」など、正直わからない部分が多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、そもそも5Gとは何かを、これまでの通信の歴史、今後私たちの生活に起きる変化、騒がれている5Gのデメリット、ビジネスにもたらす変革とそこに隠れる技術、そして人工衛星と繋がる宇宙ビジネスとの関わりまでを総ざらいします。
1. 5Gとは?
5Gとは、高速大容量・低遅延・同時多数接続の特性を持った最新の通信規格です。すごく簡単に言えば、これまでと桁違いの速さで欲しい情報が手に入り(高速大容量)、送った命令は素早く届き(低遅延)、身の回りのものとインターネットを通じてつながることができるようになる(同時多数接続)、これが5G通信です。
5Gが社会に実装されることで、私たちの生活の利便性が劇的に向上することが期待されています。5G通信の特性を生かすことで、医療現場での遠隔手術や、現在より更にパーソナライズされた製品の製造や広告、タッチレス決済などユーザ自身がこれまでとの違いを実感できるレベルで変化がもたらされると考えられています。
そのような変革をもたらす5Gとは、一体どんなものなのでしょうか?
2. 4Gとはここが違う!5Gの3つのメリット
まずは5Gの特徴となる3つの指標「高速大容量」「低遅延」「同時多数接続」を数字で見てみましょう。こういったデジタル関連の性能は、数字で見るのが一番です。ざっくり言えば、4Gから5Gになることで、各性能は10倍良くなると言えます。実際に私たちが今使っている4Gの数値がどの程度で、5Gになるとどうなるのかを見ていきましょう。
【高速大容量】大容量通信の速度が10倍に!?

Source : publicdomainpictures.net/jp/view-image.php?image=106207&picture=、『宙畑』より引用)
まずは通信速度です。一般的に、通信速度にはbpsという単位が用いられます。これはビット毎秒(bit per second)の略称で、1秒で通信できるビット数を表しています(通信量でよく見る1バイト=8ビットです)。4G通信では基地局から端末方向への下り通信の速度は、最大で1 Gbps(ギガビーピーエス)、上り通信では数100 メガbpsでした(ギガ:0が9個、メガ:0が6個)。
一方で、5G通信では下りで最大20 Gbps、上りは10 Gbpsと言われており、4Gに比べて両方向でそれぞれ10倍以上の改善が見込まれています。ちなみに、4G以前の3G回線では、下り通信で21 Mbps(メガビーピーエス)、上り通信で6 Mbps程度だったと言われており、3Gから4Gへ移行した時にも10倍弱改善されました。例えば、40 ギガバイトのデータ(4Kの2時間程度の動画を想定)をダウンロードしようとした時、5Gでは最速で16秒程度なのに対して4Gでは6分程度、3Gでは1時間以上かかる計算になります。
3Gから4Gだけでかなりの改善を実感するので、4Gから5Gへの変化にも期待が持てます。
【低遅延】遠隔操作も可能に!?

Credit : KDDI、『宙畑』より引用)

続いて「低遅延」です。5Gの強みの一つに、通信の遅延が大幅に改善される点が挙げられます。そもそも通信における遅延とは、あるスマホから情報があるサーバーから情報得ようと取得の命令を送るときの命令の伝わるスピードがどの程度か、ということを意味します。
5G通信で見込まれている通信遅延は1 ミリ秒(0.001 秒)です。検索で要求した内容がサーバーに届くまで0.001 秒しかかからないわけです!現在私たちが利用している4G通信では平均で概ね50 ミリ秒なので、10倍以上の改善が見込まれています。具体的な応用技術は後述しますが、これによってVR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったコンテンツでの反応の悪さに対するストレスや、ロボットの遠隔操作、自動運転の制御などのリアルタイム性が上がることが見込まれています。宇宙分野での応用も期待されています。
【同時多数接続】IoT時代を支える

3つ目の指標は「同時多数接続」です。5Gで大きく変わるのは、1つの基地局がカバーできる端末の数です。最近よく耳にするIoT(Internet of Things : モノのインターネット)を支えるのに、同時多数接続は非常に重要です。今後の生活では、身の回りのあらゆるモノがインターネットに接続され、スマホとモノが繋がり、そこから汲み取られた接続先の機器の使用頻度やユーザの傾向などを元に、個人個人に最適化されたサービス提供が進んでいくと考えられています。こういった通信端末の急増を支えるのも5Gの重要な役割になります。
5G通信では、一つの基地局が処理できる通信端末数が4G通信の100倍になります。4G通信では、1つの基地局で100台程度が同時接続できたところ、5G通信では1万台程度が同時接続できます。この性能アップによって、スマートフォンなどの従来の通信端末だけでなく、IoT製品の普及にも対応していきます。
【おまけ】通信の信頼性が向上し安心した通信へ
上記3点は、5G通信に対して総務省や3GPP標準化団体(※1)から達成を要求されている性能です。注目度は低いものの、これに加えて通信の信頼性に対する要求条件もあります。簡単に言えば、送信したいデータがきちんと送信できるか、という当たり前の基準も5Gから新たに設けられました。
5Gでは、通信精度を99.999%以上にするという要求があります。詳しい定義は「32バイト以上のデータの送信成功率を99.999%以上にすること」です。(万が一通信が失敗しても、低遅延の高速通信によって再度実行されるため失敗に気づくことはない)。言い換えると、この通信の信頼性を保証できない通信は5Gとは言えない、ということです。この後紹介する5Gになることで改善されるポイントは、この通信の信頼性の上に成立していることを覚えておきましょう!
※1:3rd Generation Partnership Projectの略称で、通信の国際標準指標を制定する団体。日本をはじめ、アメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国、インドが加盟している。