目次
エゾシカが与える4つの社会問題
・①【自然植生への影響】エゾシカが生態系を破壊する?
・②【交通事故への影響】エゾシカが電車を止める?シカストライクで遅延も・・・
・もしも車の走行中にエゾシカが飛び出してきたら!?
・③【農林への被害】エゾシカがもたらす農作物への被害とは
・④【感染症の有無】エゾシカは人畜共通感染症をもっているのか
私たちはエゾシカと、どう向き合うか?
・①狩猟
・②オオカミの再導入を検討?
・③エゾシカ侵入防止柵の設置
エゾシカが与える4つの社会問題
急増したエゾシカは放置できない事態を招いています。深刻な問題とされているのが以下の4点です。
①【自然植生への影響】エゾシカが生態系を破壊する?
北海道全域の森林等で問題視されているのが、エゾシカによる踏みつけや採食です。エゾシカは広葉樹の皮をむしるように食べてしまいます。
※写真をお願いいたします。(樹の皮がない写真があれば幸いです)
草地の衰退や土砂崩れ、落石等が発生する深刻な問題も起こっています。果実類が大好物のエゾシカは、ヤマグワやヤマブドウなども食します。昆虫などのへの影響も懸念されています。
②【交通事故への影響】エゾシカが電車を止める?シカストライクで遅延も・・・
もしも東京都内で遅延が起こるとしたら、それは人身事故か自然災害のどちらかでしょう。しかし北海道全域の電車の遅延理由のひとつに「シカストライク」と呼ばれる、エゾシカと電車の衝突があります。北海道ではエゾシカが線路内に侵入してくることが多々あります。そのためエゾシカが原因で遅延する電車が発生するのだとか。
さらに、エゾシカとの衝突事故は電車に限ったことではありません。道路を走行中の自動車の前にもエゾシカは悠然と飛び出してきます。
エゾシカの体重は雄ジカで最大150キロ程度です。車のフロントガラスにエゾシカをまともに受ければ、私たち人間にも被害が及ぶ可能性が高くなります。
ではエゾシカが道路に飛び出してきたら、私たちはどういった行動を取れば良いのでしょうか?
もしも車の走行中にエゾシカが飛び出してきたら!?
北海道ではエゾシカと車の衝突事故の発生が多いです。そのため、北海道では、お馴染みの黄色い看板で『動物注意』または『鹿飛び出し注意』の道路標識が多く設置されています。
看板を見つけたら、車の速度に気を付けましょう。エゾシカはとくに朝・夕に多く姿を現します。この時間帯は特に気を付けて運転するように心掛けてください。また、エゾシカは夜行性ではないですが、薄暗くなってから行動する個体もいます。夜間だからといって安心してはいけません。
万が一走行中にエゾシカが飛び出してきた時は、運転ドライバーは以下のことに注意してください。
- 無理にエゾシカを避けようとしない
- ハンドルを切るのではなく、ブレーキを踏み込み車を停止させる
エゾシカは群れで行動する動物です。道路に出てきたのが1頭だけとは限りません。
エゾシカと自動車の衝突事故による人間の死亡事故が発生しています。エゾシカの行動が活発になる秋頃や、視界の悪い夜間は、細心の注意をして運転をしましょう。
対策として、動物よけ警笛でシカの飛び出しを未然に防ごうと試みる自動車もあるみたいです。
③【農林への被害】エゾシカがもたらす農作物への被害とは
エゾシカによる農作物の被害は、エゾシカの大量発生に大きく関与しています。農作物のうち約半数が牧草の被害です。エゾシカによる被害が確認されている農作物は主にトウモロコシ、馬鈴薯(じゃがいも)、小麦、豆類などです。
近年エゾシカは市街地でも姿を現しています。民家への被害も報告されています。家庭で菜園している食物や、庭木などに被害が出ています。
④【感染症の有無】エゾシカは人畜共通感染症をもっているのか
エゾシカには6種類のマダニの寄生が確認されています。マダニとは、吸血をおこなうダニのことです。人畜共通感染症(ズーノーシス)を媒介することでも有名です。またエゾシカは、ダニ媒介脳炎やQ熱の媒介者でもあります。
私たちはエゾシカと、どう向き合うか?
ここまでエゾシカによる被害を見てきました。ここからは、エゾシカ問題と今後どのように向き合っていくべきかを考えていきます。
北海道ではエゾシカ管理計画として、様々な工夫が検討されています。北海道エゾシカ管理サイトHPをご参照ください。

①狩猟
昨今では、個人のハンターによるエゾシカの個体数コントロールが難しいとされています。エゾシカを狩るハンターの数が減少傾向にあることが問題のひとつとなっています。
北海道エゾシカ管理サイトによると、北海道の取り組みとして「年間毎にエゾシカの捕獲目標を定める」「雌ジカの捕獲を優先させる」「高度で専門的な技術を用いたエゾシカの捕獲や、夜間での銃猟を検討」「遠隔システムを活用したエゾシカ捕獲の確率を高める」などの対策を行っています。
②オオカミの再導入を検討?
生態系の頂点に君臨するオオカミが絶滅してしまったことで、エゾシカの捕食者は2022年現在ではヒグマのみとなっています。
そこで、オオカミの再導入によりエゾシカの個体数を減少させるとの提案がなされています。海外ではオオカミの再導入を実施しているところもありますが、日本ではまだ提案段階です。オオカミを導入することにより、他の動物に悪い影響を及ぼさないかなど、社会的な問題からオオカミの再導入は難しいとも言われています。

③エゾシカ侵入防止柵の設置
エゾシカの侵入防止用に、高さ2〜3メートルの柵を設置しています。柵の他にも樹木の保護を目的としたネットも活用中です。