(本記事は、植西 聰氏の著書『怒らないコツ 「ゆるせない」が消える95のことば』=自由国民社、2018年10月17日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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自分の欠点を指摘されても、怒らずに済む考え方とは?

欠点を指摘されることを「ありがたい」と思える人間になる

日常生活の中では、「怒りを感じる」ということがたくさん起こるものです。「怒り」という感情は、確かに、良い影響をもたらしてくれるものではありません。精神的なストレスになりますし、仕事への意欲を失わせることにもなります。人間関係を悪化させる原因にもなります。

しかし、この「怒り」という感情をプラスの方向へ持っていく原動力にすることも可能なのです。その方法の一つが、「リフレーミング」です。

たとえば、友人の一人から、「あなたって、そそっかしい人なのね」と、自分の欠点をあからさまに指摘されたとします。もちろんカチンときます。怒りにかられて、「そう言うあなただって、たくさん欠点があるじゃないか」と言い返したくもなってくるでしょう。

しかし、そこで言い返せば、ますます激しい悪口の言い合いに発展していくだけではないでしょう。心の中のイライラした気持ちも大きくなっていくばかりです。それは決して賢いことではありません。そこで、リフレーミングを行うのです。

すなわち、「欠点を指摘されて頭にくる」という考えから、「自分でも気づいていなかった欠点を指摘してもらって、ありがたい。これで私は、さらに人間性を向上させていくことができる」というポジティブ思考に考え方を変えるのです。そのほうが、自分の人生にとってプラスになることが多いのです。

去っていく者に怒るのではなく、残っている人を評価する

怒りの言葉は、周りの人たちのやる気をなくさせる

ある中小企業の社長は、せっかく採用した新入社員が次々と辞めていくことに腹を立てています。

去年は7名採用したのに、一年経たないうちに4人が辞めてしまいました。今年は10人採用しましたが、半年も経たないうちに、もう3人が退職したと言います。そんな現状に、その社長は、「今の若者には、がまん強さがない。ちょっと辛いことがあると、すぐに逃げ出してしまう」と怒っているのです。もちろん、「今の若者には~」という言葉は、会社を辞めていった人たちを指すものなのでしょう。

しかし、そのような怒り方をしていると、会社を辞めずに残っている新入社員たちにも、「自分たちも社長から、そのように、『がまん強さが足りない若者』『辛いことがあると逃げ出してしまう若者』だと見られているのではないか」という誤解を与えることにつながってしまうのではないでしょうか。

その結果、やる気をなくして、結局は今の会社に残っている人も辞めていくことになるかもしれません。もしそうならば、辞めていった人間へ怒りを向けるのではなく、むしろ、会社に残っている社員に目を向けて、その人たちを、「君たちはすばらしい人材だ」とほめるようにするほうが得策だと思います。

これも、考え方の枠組みを変える「リフレーミング」の一つの方法です。そうすれば、残っている新入社員がやる気を増して、今後大いにがんばって会社に貢献してくれるでしょう。

「人のせい」ばかりにするのではなく、自分の責任も認める

自分の責任を認めてこそ、割り切って出直すことができる

 「あの人のせいで、私は失敗した。あの人にだまされて、私は今惨みじめな思いをしている」と、腹を立てている人がいます。

たとえば、知り合いから、ある株を買えば大儲けできるという話を聞いたとします。その知り合いの言葉を信じて、自分もその株を購入しました。しかし、そのとたん、その株の価格が下がってしまって、大儲けどころか大損をしてしまいました。そのために、「あの人のせいで~」と腹を立てることになるのです。

しかし、そのようにして「人のせい」にしてばかりいるのでは、いつまでも怒りの感情から解放されることはないと思います。事あるごとに、「あの人のせいで~」ということが思い出されて、イライラしたり、ムカムカしたり、ということを繰り返します。

家族と過ごしている時も、恋人と一緒にいる時も、仲のいい友人と遊んでいる時も、その「あの人のせいで~」という相手のことが思い出されて、不機嫌な顔をしてしまいます。それは自分の人生にとって決して良いことではないと思います。

では、どうすれば「あの人のせいで~」という怒りの感情から解放されるのかと言えば、その方法の一つは、考え方の枠組みを変えることにあります。それは、いつまでも「あの人のせいで~」と責任を相手に押しつけているのではなく、「人の言うことを簡単に信じ込んだ私が愚かだった」と、自分の非を認めることだと思います。

そして、「良い勉強をした」と考えて、上手に割り切ることです。そうすれば、怒りの感情からも解放されるでしょう。

ブログやツイッターを使って「メタ認知能力」を高めていく

怒りを感じた時は、その感情をブログやツイッターに書き込む

最近の若い人には「紙に書く」ということに苦手意識を持っている人が多いようです。そういう人は、ブログやツイッターを利用するのも一つの方法になります。というのも、紙に書くということには苦手意識がある人でも、ブログやツイッターであれば抵抗感がないという人も多いからです。

怒りを感じた時には、ブログやツイッターに、その時の自分の感情を書き込みます。長々と書き込むことはありません。短い文章で書き込むだけでも、今の自分を客観視することができます。

そして、できれば最後の文章を、何かポジティブな言葉で締めくくるのがいいでしょう。
 「イライラしてないで、前向きに生きて行こう」
 「楽天的なのが、私の取り柄だ。怒るのはやめよう」
 「怒るのは、もうやめた。明るく生きる」
 「ムカムカしていてもしょうがない。やることをやろう」
 といった具合です。

このような前向きな言葉でブログやツイッターを締めくくることで、気持ちを切り替える効果が強まるのです。「私は、つまらない怒りにいつまでも振り回されているような人間ではない」という信念も強まります。

このような方法によって「メタ認知」という能力を高めていくことで、実際に、「怒りに強い自分」が作り上げられていきます。
 

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植西 聰(うえにし・あきら)
東京都出身。著述家。学習院大学卒業後、資生堂に勤務。独立後、人生論の研究に従事。独自の『成心学』理論を確立し、人々を明るく元気づける著述を開始。

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