(本記事は、植西 聰氏の著書『怒らないコツ 「ゆるせない」が消える95のことば』=自由国民社、2018年10月17日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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相手を主語にして話すのではなく、「私」を主語にして話す
「私」の事情を説明しながら、相手に要請する
人に何かを要請する時には、話し方に工夫が必要になります。下手な話し方をすれば、相手を怒らせることになるからです。その際の、上手な話し方のコツとしては、「相手を主語にするのではなく、『私』を主語にして話す」というものがあります。
たとえば、「サッサと仕事を片づけてください」ではなく、「早く仕事を片づけてもらうと、私はすごく助かるんです」という言い方です。
「そこを、どいてくれ。ジャマだ」ではなくて、「私は向こう側へ行きたいのですが、すみませんが、道を開けてもらえませんか」という言い方です。
「大声を出さないでくれ。うるさいじゃないか」ではなく、「大きな声でなくても、私には十分に聞き取れます」という言い方です。
このように「私は~」という言い方で、自分の都合を説明しながら、相手に何かを要請するという言い方をするほうが、相手にとっては抵抗感が少ないのです。その結果、すんなりと、こちらの要請を受け入れてくれるのです。もちろん相手を怒らせずに済みますし、こちらも感情を荒立てるようなことにはならないでしょう。
相手を尊重する気持ちがあれば、人間関係で怒らずに済む
相手を尊重する気持ちを、言葉遣いに表す
人とのコミュニケーションで大切なのは、「相手を尊重する気持ちを持つ」ということです。この尊重心があれば、それが自然に言葉遣いに現れます。そして、こちらの考えが相手に伝わっていきます。自分が尊重されていることがわかれば、相手もこちらに対してていねいに対応するようになります。
そのようにして、お互いに相手を尊重する気持ちを持って接すれば、人間関係でトラブルが起こることもありません。したがって、「相手を尊重する気持ちを持つ」ということも大切な「怒らないコツ」の一つになるのです。
慶応義塾大学の創設者である福沢諭吉(19~20世紀)は、誰に対しても「さん」をつけて名前を呼んでいたと言います。相手が、たとえ年下の者であったり、あるいは教え子であっても「さん」をつけて呼んでいました。
相手がどのような立場の人間であっても、決して呼び捨てにはしなかったのです。これは福沢の「相手を尊重する気持ちを持つ」の一つの現れだったと思います。
そういう気持ちがあったからこそ、福沢は、周りの人たちと円満な人間関係を結んでいました。そして、信望も得ました。その結果、誰かと大きなトラブルを起こして、お互いに怒りながら激しく言い合うということもなかったのです。
言葉づかいがうまい人は、人づき合いもうまい
良い言葉づかいは「怒らないコツ」の一つ
国文学者だった吉田精一(20世紀)が興味深いことを述べています。
「『言葉づかい』という言葉があります。『近所づき合い』という言葉もあります。しかし、どんな辞書にも『言葉づき合い』という言葉はありません。私は人生はこの『言葉づき合い』の積み重ねと思っているんです」というのです。
この吉田精一の言葉は、要約すれば、「人間関係においては、言葉づかいがとても重要な意味を持っている」ということだと思います。
言葉づかいが上手い人が、人間関係が上手い人なのです。言葉づかいが上手い人は、周りの人たちと円満な関係を結んでいくことができます。誰かと言い争いをして、怒ったり、怒られたりするということを避けられます。円満な人間関係の中で、平穏に生きていくことができるのです。
一方で、言葉づかいが下手な人は、不用意に相手を不愉快な気持ちにさせることを言ってしまいます。そのために相手を怒らせてしまうことも多いのです。そして、相手が怒って文句を言ってくれば、こちらも感情を荒立てることになってしまうのです。
言葉づかい=人づき合いなのです。
それが吉田精一の「言葉づき合い」という言葉に表れています。
では、どうすれば言葉づかいが上手になるのかと言えば、その基本は「相手を尊重する気持ちを持つ」ということなのです。その気持ちがあれば、自然に、良い言葉づかいができるようになります。
聞き上手になることで、人間関係で怒ることがなくなる
自己主張する前に相手の話を聞く
穏やかな人間関係を結んでいく上で大切なことに、「聞き上手になる」ということがあります。たとえば、自分が一方的な主張を長々と誰かに話したら、その相手は自分に不愉快な印象を感じてしまうと思います。
相手は、だんだんと、うんざりした表情になっていくでしょう。そんな相手のうんざりとした表情を見れば、「この人は、私の言うことをちゃんと聞いているのか」と腹立たしい気持ちになります。
場合によっては、怒って、「私の話をちゃんと聞け」と文句を言ってしまうことにもなりかねません。そうなれば、お互いに感情を荒立てて口ゲンカをしてしまうことになります。そういう意味では、自分の主張をベラベラとしゃべるよりも、まずは相手の話をよく聞くことを心がけるほうが良いのです。
真剣に相手の話を聞く態度を取れば、相手も誠実にこちらの話に耳を傾けてくれます。その結果、コミュニケーションが深まって、お互いに相手の考えていることをわかり合えるのです。
そのようにして意思疎通できた相手とは、誤解や、気持ちのすれ違いということも、あまり起こらないのです。ですから、お互いに怒って言い争うということをしなくて済みます。言い争いは、往々にして、相手への無理解から生じます。理解し合う関係であれば、言い争いは起こりません。そして、理解し合うために大切なのは、まずは自分が相手の話をよく聞くことなのです。
植西 聰(うえにし・あきら)
東京都出身。著述家。学習院大学卒業後、資生堂に勤務。独立後、人生論の研究に従事。独自の『成心学』理論を確立し、人々を明るく元気づける著述を開始。
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